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IRが不動産マーケット活性化の起爆剤に

統合型リゾート(IR)は不動産マーケットに与える影響は多大だ。IRを呼び水に不動産需要が急拡大し、新たな投資機会が生まれる。投資家・デベロッパーにとってIRはまさに「宝の山」となりそうだ。30年以上、世界規模で機関投資家の投資戦略を支援してきたJLL グローバル キャピタルマーケット ボード チェアマン アーサー・ドゥ・ハーストは「IRが不動産市場の国際的なプレゼンスをさらに高めるきっかけになる」と断言する。

2020年 01月 08日

IRを呼び水に様々な不動産需要が生まれる

IRの新規開発は不動産マーケットを劇的に進化させる起爆剤となりえることは海外の事例を見れば一目瞭然だ。シンガポールがその好例となる。ラスベガス・サンズグループがシンガポール初のIR「マリーナ・ベイ・サンズ」を開発して以降、周辺地域にも大型ホテルやショッピングセンター、飲食店等が次々と開発され、IRを呼び水に新たな不動産需要が生み出された。ラスベガスの発展も同様だ。IRが誕生するまではネバダ州の片田舎に過ぎなかった同地が、現在は米国最大のホテル市場に発展した。IRを起点に地域全体が成長を遂げ、その集客効果は他のアセットと比較してもあまりにも強大だ。オーストラリアの中都市であるブリスベン、ゴールドコーストはIRの存在によって国際的な不動産投資マーケットとして認知されるようになった。IRは不動産市場の国際的なプレゼンスを高めるきっかけになるのだ。

国内外から多くのヒトを吸引する集客装置となるのがIRだ。ヒトが集積する場所には新たな不動産需要が生まれる。まずはIRの開発に伴い工事従事者が増加することで簡易型ホテルや賃貸住宅、小売店が必要とされる。そして、IRで働く従業員は数千人規模にのぼり、就業者向けの賃貸住宅や商業施設の他、学校やヘルスケア施設等の生活インフラ施設が必要とされ、IR以外にも多くの開発がなされ、さらに多くの雇用を生むことになる。ホテルセクターにとっても明るい材料だ。カジノのみならず、国際的なカンファレンス等を目的に多くのIR利用者を国内外から呼び寄せることで、新たな宿泊需要が生み出される。そしてIRのオペレーターは一定規模のオフィススペースを必要とする。このように不動産市場における需給の好循環が生まれ、都市をより魅力的なものにし、不動産市場も総体的に活性化される。

国内デベロッパーにも大きなビジネスチャンス

IRの開発・運営は外資系オペレーターが中心になるが、国内デベロッパーにとっても大きなビジネスチャンスとなるだろう。外資系オペレーターは施設開発・運営に関するノウハウを有している半面、日本国内での大規模開発の経験は皆無だ。IRはカジノ施設にとどまらず、多用途の施設群で構成され、ホテルや商業施設、カンファレンス、オフィスまで様々な建築物を開発することになる。これには日本国内における建築法規や専門知識や資金調達、都市開発について高度な専門知識を有している国内デベロッパーの協力が必要不可欠だ。日本のデベロッパーが国際的なIRオペレーターと協業する素晴らしい機会となるだろう。

IRの成否を握る2つの視点

一方、IRを成功させるためには2つの視点が必要だ。1つはステークホルダー、特に行政と地元企業・団体・住民が連携し、意見を取りまとめておくことで開発をスムーズに進めることだ。この点においてシンガポールの事例に学ぶべきだろう。シンガポール政府が主導し、迅速に開発を進めていったことで今日の繁栄を迎えた。そうした点を加味すると、日本版IRの候補地の中で、早期段階から官民が歩調を合わせてIR誘致を尽力する大阪府・市は成功の可能性が高い自治体の1つといえるだろう。もう1つは、施設への交通アクセス性だ。これは集客のみならず従業員を確保する上でも重要であり、加えてIRから近隣の観光名所へのアクセスが至便なら観光を中心とした経済波及効果が得られるためだ。そして、大阪府・市には1970年に開催した万博を皮切りに、2019年に開催したG20大阪サミット、そして2025年に開催予定の大阪万博まで、国際的なイベントを手掛けてきた実績があり、IRの主なターゲットとなるインバウンド観光客を惹き付ける点において豊富な経験があることもIRの成功要因として大きなアドバンテージとなる。こうした観点を総合的に見ると、大阪府・市はIRのホストタウンとしての要件をすべて備えている数少ない候補地といえるだろう。

意思決定のスピードに改善余地

とはいえ、日本版IRは10年以上前から議論が交わされてきたが、実現までにあまりにも長い時間を要した。こうした意思決定のスピードについては早期の改善が必要だ。特に外資のIRオペレーターはいかに早く開業できるかを重視する。開業時期が早ければ早いほど資金回収が早まるためだ。彼らの意思決定は非常にスピーディーであり、彼らに合わせてより迅速な意思決定を行うことが行政ならびに開発デベロッパーには求められ、改善の余地があるだろう。

(JLL グローバル キャピタルマーケット ボード チェアマン アーサー・ドゥ・ハースト)

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