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コロナ禍によって変化した大阪レジデンシャル市場

コロナ禍を通じて、企業、個人の社会活動は大きく変容した。多くの企業がメインオフィス、フレキシブルオフィス、在宅勤務など多様な働き方を採用した。こうした変化に対して、個人は生活環境をどのように変化させたのだろうか。

2022年 06月 20日
変わらない都心志向

企業の在り方が変化し、従業員(個人)は通勤による労力の軽減というメリットと、集中して在宅勤務するためのスペースが不十分というデメリットが顕在化したことで、個人の郊外志向が高まるかと思われたが、実際は都心志向で変わらなかった。

大阪市におけるコロナ禍の人口変動 出所:大阪市住民基本台帳をもとにJLL作成

コロナ禍以前の2019年12月、2022年3月の大阪市全体の人口は273万人で横ばいであった。この間、人口が増加したのは大阪市24区中9区で、うち大阪都心6区(北区、福島区、中央区、西区、天王寺区、浪速区)が上位6区で1.7-6.8%と高い増加率となり、次いで大阪都心6区に隣接する淀川区、東成区、阿倍野区が0.2-0.9%の増加率となった。
 

中央区からみた大阪レジデンシャル市場のトレンド
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大阪市中央区におけるコロナ禍の年齢別人口変動 出所:大阪市住民基本台帳をもとにJLL作成

中央区の傾向を年齢別にみると、生産年齢人口(15-64歳)の増加率が6.2%で最も高く、次いで年少人口(0-14歳)が5.7%、老年人口が2.7%となっている。区内で人気のある本町や堺筋本町、北浜、谷町四丁目エリアなどはオフィス街であり、また、市内最大のオフィス集積地である梅田や新大阪へのアクセスも優れているため、就業者層である生産年齢人口の増加につながっているのだろう。また、同エリアは靭公園、中之島公園、大阪城公園など、都心部でありながらも緑豊かな環境がある。このため子育て層が流入、年少人口の増加につながっている。

今後の大阪レジデンシャル市場

コロナ禍を経て、首都圏では郊外の人気が高まる一方、関西圏では大阪市の都心部の人気が鮮明となっている。大阪市の都心部に住宅の供給が増加し、その受け皿として需要の流入につながったことが直接的な要因であるが、大局的にみると、近年、高まっていた都心志向がコロナ禍で変容したライフスタイルに勝ったと受け止めるのが妥当であろう。

この背景は、第一にテレワーク率が東京に比べて低かったことが挙げられる。もともと大阪は東京と比べると街がコンパクトであり、通勤や通学にかかる時間が少ないことなど、郊外志向がそれほど高まらなかったことにあると考えられる。第二に大阪が向こう10年、梅田を中心に都心部で大規模再開発が進展し、都心部の魅力が高まることがみえていることなどが考えられる。加えて、東京に比べると生まれ育った街に住み続けたいといったことも一因と考えられる。

今後も大阪では都心志向が続くと考えられるが、こうした中でも、子育て層の増加や、次第に大阪においてもパワーカップルと呼ばれるような層の増加が期待されるなどの変化が想定される。これまで大阪のレジデンシャル市場において、投資家の投資対象が比較的画一的であったが、今後はニーズの変化に応じた、多様なタイプの住宅を投資対象としてみていくことが重要となろう。

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連絡先 山口 武

JLL日本 関西支社 リサーチディレクター

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