大阪オフィスの本格的な新規供給が到来
2022年から大阪のオフィスの新規供給が本格化することは既に多くの市場関係者が認識していることであろう。2022年3月、その皮切りに「大阪梅田ツインタワーズ・サウス」がオフィスゾーンを含めて全面開業した。今後、相次ぐ新規供給が大阪のオフィスマーケットにとって過剰供給であるのかどうかについて考察する。
新規供給が増加するも大量供給なのか?
2022年の大阪Aグレードオフィスの新規供給は約4万坪である。1年間で3万坪を超える新規供給量は2013年に「グランフロント大阪」が竣工して以来、9年ぶりである。さらに2022-2025年までの新規供給量は15.8万坪におよび、確かに大量供給期といえる。前回の大量供給期となる2010-2013年の新規供給量の12.6万坪をも上回っている。
大阪Aグレードオフィス新規供給の推移と見通し 出所:JLL日本
大阪の新規供給は1990年代後半以降、大型の再開発にともなう供給が中心となっている。このため、2010-2013年、2022-2025年のように一定期間に供給が集中し、大型の再開発の前後の期間は新規供給が抑制される傾向となっている。確かに2022-2025年の新規供給は大阪にとって過去に類のない大量供給期といえるが、長期的にみればそれほど多いとはいえない。2006-2015年と2016-2025年を10年単位として1年当たりの新規供給量を均すと、2006-2015年は2.07万坪、2016-2025年は2.01万坪とほとんど変わらない。このようにみると、これからの新規供給は増加するものの、決して過剰感のある量でないことがいえよう。
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空室率と賃料の予測
2022-2025年の新規供給が決して過剰供給ではないといったものの、大阪のオフィスマーケットの空室率、賃料への影響は避けられない。
空室率は2019年を底に既に上昇トレンド入りしている。2020-2021年は新型コロナウイルスの感染拡大による需要の減退がそれほど大きなものではなかった。しかし、供給量としては少なかったものの、コロナ禍でテナントの動きが鈍っている中で、2年連続の6,000坪程度の新規供給に見合う需要を生みだすことは難しく空室率は上昇した。2022年以降は、需要の回復が見込まれるものの、供給量そのものが多いために空室率の上昇は避けられない。ただし、2010-2013年の大量供給期のピークにまで上昇することはないと予想する。
大阪Aグレードオフィスの空室率と賃料予測 出所:JLL日本
投資機会
賃料も2020年をピークに既に下落トレンド入りしている。新型コロナウイルス感染拡大による経済情勢の悪化や先行きへの不透明感がテナントの間に広がったことで、テナントのコスト意識の高まり、オーナーに対する賃料の下落圧力を強めた。需要サイドによる下落といえる。2022年以降は、供給が増加することで、ビル間でのテナント誘致競争が激しくなるため、供給(オーナー)サイドからの下落圧力が強まることで、賃料は下落していくと予想する。
ただし、これからの大量供給期、また、それ以後に大阪では需要の拡大が見込めるようなイベントや施策などが相次ぎ、多くの企業にとってビジネス機会の増加が期待できる。こうした状況に後押しされることで、前回の大量供給期のように賃料が大幅に下落することは考えにくく、緩やかな下落にとどまると予想する。
連絡先 山口 武
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