記事

「5G時代」見据えデータセンター開発が加速

日本では2020年の実用化に向けて開発が進められている5G(第5世代モバイルネットワーク)。膨大なデータ量を高速通信することが可能になり、IoTやAI、VR等の最新テクノロジーの活用が一気に進むとされている。それに伴いデータセンターの需要拡大が見込まれ、世界規模で新規開発が加速している。

2019年 07月 24日

将来的に急成長が見込める不動産セクター「データセンター」

Tモバイル、スプリント、AT&T、ベライゾン、直近ではUSセルラーを含む大手移動通信事業者が「2019年度内に5Gの提供を開始する」と表明している。2019年4月に世界で初めて5G提供を開始した韓国・ソウルに続く動きだ。

JLL アメリカ大陸 リサーチマネージャー デービッド・バーネットは「2018年は近代的データセンターへの需要がいまだだかつてないほど旺盛だった。中でも不動産が5Gの支柱となることが認識され、デベロッパーはこの流れに乗り遅れまいと行動し始めた」と指摘する。

例えば、CIMグループと1547クリティカル・システムズ・リアルティがサンフランシスコ市に24万ft2(約6,745坪、22万300m2)のデータセンター建設を開始した。市内では10年以上ぶりのデータセンター建設である。

郊外から都市部へ    

現行の4Gよりも約4倍の高速通信が可能とされ、ユーザーはより高速ダウンロードが可能になり、ネットワーク事業者には事業の効率化を推進する革新的な技術となる。産業の新たな扉を開き、思考法やモバイル接続法を大きく変化させるだろう。

そして、5Gの台頭はデータセンターの開発に拍車をかける。従前のデータセンターは主要都市郊外に位置する大規模施設が大半だった。しかし、5G時代の到来はデータ転送前の待ち時間を短縮するため、データセンターを人口密度の高い都市部に建設しなければならないことを意味する。

バーネットによれば「これはeコマースや同日配送に対する顧客ニーズが、商品配送の最終段階に対応するために主要都市部における小規模倉庫開発を促した昨今の状況とよく似た現象である」と述べる。ただし、データセンター数の増加は予想されるが、バーネットは「その規模はより小さくなる見通しだ。1年ごとに冷却システム等の性能が向上しており、必要とされる物理的スペースが少なく済む」と、その理由について説明する。

グローバルで需要拡大

JLLによれば、現在世界には6,340万ft2(約178万坪、589万m2)のデータセンターが存在し、さらに430万ft2(約12万坪、40万m2)が建設中である。そしてパイプラインは一層拡大する見通しだ。

例えば、データセンターの開発と賃貸を手掛けるコロケーション企業のデジタル・リアルティは、2018年末に米ノーザン・バージニアで450エーカー(約55万坪、182万m2)の土地を取得し、800万ft2(約22万坪、74万m2)のデータセンターを供給する計画だ。バーネットによると「ノーザン・バージニアは、従来から毎年数十億ドルを負担し、データをクラウドにアップロードしている連邦政府の業務を行う企業にとって魅力的な立地」だという。

今や、データ保管に前例のない規模の需要が生れている。2019年、米国国防省は過去最高の20億米ドルをクラウド・コンピューティングに投じる計画を打ち出した。そして、JLLの調査によれば、2018年にデータセンターが記録的な大量供給となったにも関わらず、2019年現在、ロンドン、フェニックス、シンガポール、ノーザン・カリフォルニア、シドニー、香港で建設予定となっており、グローバルで需要が拡大している。

バーネットは「需要は非常に旺盛だ。そして、より多くの情報がクラウドに保管され、より多くのコンテンツが消費され続ける限りこの傾向は継続するだろう」と展望する。

オーナーやデベロッパーは不動産市場に大量のデータセンター・スペースが新規供給されることに注目するべきだろう。

お問い合わせ