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大阪投資市場で存在感が高まるホテルセクター

コロナ禍における不動産市場において、ホテルセクターは最もネガティブな影響を受けたセクターといえる。しかし、投資市場においてホテルセクターは堅調に推移している。

2022年 01月 11日

投資額の増加、投資市場における存在感が高まる状況が継続

2021年第1-3四半期の大阪におけるホテルセクターの投資額は830億円。コロナ禍の2020年も2012年以降最多の1,120億円に迫るペースで投資が行われている。2021年(第1-3四半期)の大阪全体の投資額に占めるホテルセクターの割合は17%と2012年以降で最も高くなっている。2016年以降、インバウンドの増加が本格化しホテルセクターへの投資額の増加とともに存在感が高まってきたが、コロナ禍において勢いが増しているのは意外ともいえる。

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コロナ禍でもホテル投資の勢いが増す2つの要因

主たる要因は2点が考えられる。1点目は売買市場においてホテルの売り物件が増加したこと、2点目は大阪の商業地としてのポテンシャルの高さが評価されていることが挙げられる。

1 点目について、売り物件が増加した背景は、コロナ禍以前の段階で大阪は国内では京都に次いでホテルの供給が多かった(既存客室数に対する新規客室数の割合が高い)ため、コロナ禍によって需給が著しく悪化する懸念が高まったことで、ホテルの早期売却を検討する事業者が相次いだことによるものである。しかし、ホテルの売り物件は増加したものの、必ずしも価格調整(大幅な下落)が働いたわけではない。コロナ禍の初期段階では多くの投資家は価格調整が進展することで、投資の好機を迎えると期待していたが、実際には時間が経過しても価格が大きく下落しないことを認識した。こうした中で、ホテル以外のセクターでは限られた物件に多くの投資家が殺到、熾烈な取得競争が行われており、投資を実現するためには価格の上昇を受け入れざるを得ない状況となっていた。その結果、時間の経過とともにコロナ禍の収束やアフターコロナへの期待が高まっていくこととホテルセクターの相対的に利回りが高いことが相まって、投資の増加につながったと考えられる。

2 点目については、大阪の商業地としてのポテンシャルの高さを改めて見直す投資家が増えていることが挙げられる。2021年以降、公示地価、路線価、地価公示などの地価調査においては大阪を代表する商業集積地であるミナミは、軒並み全国一の下落率となった。この要因はインバウンド効果の恩恵の大きさの反動、言い方を変えれば国内で最も多くの海外旅行者に支持された街といっても過言ではなかろう。すなわち、インバウンド需要が回帰すれば、その反動も大きな期待ができるということである。さらに大阪ではアフターコロナとともに本格的にインバンドの戻りが期待される2020年代半ばには2025年の「大阪・関西万博」、2020年代後半には「夢洲 統合型リゾート(IR)」(計画)などが控えている。こうしたこともホテルセクターへの投資の増加を後押ししている。

2022年以降、投資家の間にもアフターコロナを見据えた動きが広がることが予想される中、ホテルセクターが大阪投資市場においてさらに存在感が高まるのは必至であろう。

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連絡先 山口 武

JLL日本 関西支社 リサーチディレクター

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