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急拡大する福岡の物流不動産市場

2019年から空室率0%を維持する福岡の物流不動産市場。外資系デベロッパーが新規開発を進めているが、依然として供給不足が続き、今後も国内外の投資家やデベロッパーが福岡に対して注目し続けそうだ。

2022年 09月 02日

福岡は東京、大阪、名古屋に次ぐ都市で、都市インフラの急速な整備や高齢化が進む日本において若年層が多く、勢いのある都市として注目されている。日本の大都市の中で、最もアジアに近い立地にあり、観光客の増加や企業の進出などでアジア諸国の成長の恩恵を受けられる都市といえる。

不動産についても、福岡市CBDにおいて多数の大規模再開発が進んでおり、グレードの高いオフィスビルやハイブランドのホテルが増加することで都市としての魅力が高まると考えられる。物流施設も国内外の多数のデベロッパーが開発に取り組んでおり、低い空室率や高い賃料上昇と合わさって非常に注目が高まっている。

 

2012年から新規開発が再開

福岡の物流施設の開発は2000年台後半に始まったが、金融危機による景気低迷の影響を受け、多くのプロジェクトがストップしてしまった。

本格的に物流施設の開発が再開されるのは2012年から。プロロジスなどの外資系デベロッパーや大和ハウス工業などの国内デベロッパーが物流施設を開発した。東京圏や大阪圏と比較すると、デベロッパーの参入数は少なく、供給量も少なかった。賃貸市場は未成熟で、マルチテナントタイプの物件で満床になるまでリーシング期間が1年以上かかった。そのため、リーシングリスクを嫌い、多くのデベロッパーは特定のテナント向けに開発するBTS(Build to Suit)タイプを望んだ。

2019年から空室率0%が続く

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2022年第2四半期も空室率0%が続いており、需要超過および供給過少のマーケットが続いている

2018年ごろからEコマースの拡大による需要増加を受けて、東京圏や大阪圏では供給量が増加したが、福岡では物件供給は少ない状況が続いた。そのため 2019年からは福岡の物流施設の空室率は0%となり空室が全くない状況となった。

その後、マルチテナントタイプを含む複数の新規物件が供給されているが、いずれも竣工時点には満床で、2022年第2四半期も空室率0%が続いており、需要超過および供給過少のマーケット が続いている。

賃料水準についてもエリア全体の平均で2018年頃は2,800円/坪程度であった賃料が 2022年第2四半期には3,200円/坪と15%近くの賃料が上昇 しており、エリアによっては30%を超える賃料上昇がみられる。

このようなタイトな需給バランスと賃料上昇が続いている福岡の物流不動産市場にはGLPやESR、Mapletreeといった外資系デベロッパーも注目しており、次々と開発をスタートしている。ただし都市規模や物流施設のストック量を鑑みると、依然として供給は不足しており、投資家やデベロッパーの福岡に対する高い関心も続きそうである。

連絡先 谷口 学

JLL日本 リサーチ事業部 チーフアナリスト

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