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国内市場における「コ・リビング」の可能性

コロナの影響でテレワークが定着。生活の中に働くことが組み込まれていく傾向が強まるなか、住まいとワークスペースを提供するコ・リビングの需要が静かに高まっている。大手デベロッパーも参入し、投資対象としても安定したインカムゲインが見込まれるなど、将来的にコ・リビング市場が拡大する可能性は高い。

2022年 10月 13日
住居版シェアリングエコノミー

昨今、多様な分野でシェアリングエコノミーが市民権を得てきている状況にあるが、不動産マーケットにおいてもそのコンセプトは受け入れられつつあるといえる。シェアオフィスなどはその代表格で、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあってテレワークが一般化することで専用のスペースが確保しやすいシェアオフィスは市場が急速に拡大したといえる。

一方で住居におけるシェアリングエコノミー、つまりコ・リビングの拡大はシェアオフィスと比べて比較的緩やかなものにとどまっているといえよう。ただし、昨今は大手デベロッパーが相次いで参入するなど、拡大の兆しが見えている。

住まいと働く場を一体化させた新しい居住スタイル

「シェアハウス」という名称が一般的なコ・リビングの日本における発展は、企業が持つ独身寮や社宅がその源といえる。各入居者のプライベートな空間を確保しつつも、浴室など水回りは共同で使い、食堂があるなどまさに「同じ釜の飯を食う」というコンセプトを体現することで社員同士のコミュニケーションを図ることが主な目的であったと考えられる。会社側が運営費を負担することで各入居者の賃料を低く抑えることが可能で、特に若手社員などは社内人脈を構築できることもメリットの一つとなってきた。

シェアリングエコノミー全盛の昨今、こうした独身寮や社宅のコンセプトを社内から社外へ、つまり広く一般に拡大したものが現在のコ・リビングといえる。各入居者のプライベート空間や食堂などは独身寮そのままに、付加価値としてラウンジやワークスペースなどの多様な使い方が可能な広い共用スペースが提供されることで、住まいと働く場所を一体化させた新しい居住スタイルといえよう。

大手デベロッパーが参入
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コロナの影響でテレワークが働き方のコンセプトとして定着したことで、居住することの中に働くことが組み込まれていく傾向にあるなか、こうした「働く場所」を住居内で提供できるコ・リビングへの需要が静かに高まっている

ここ最近、こうしたコ・リビングに大手デベロッパーが相次いで参入している。三井不動産は東京・墨田区で自らの賃貸住宅ブランド「パークアクシス」を冠したコ・リビングを展開している。

また、コスモスイニシアは神奈川・川崎市で総戸数69戸のコ・リビング物件を運営するなど、新規開設が相次いでいる。いずれもシェアオフィスのようなワークスペースを完備するなど、充実した共用部がアピールポイントである。コスモスイニシアの物件は、同社が単独でリーシング活動を行い、その結果現在は満室稼働を達成しているなど、一定の需要があることがうかがえる。

コロナの影響でテレワークが働き方のコンセプトとして定着したことで、生活の中に働くことが組み込まれていく傾向にあるなか、こうした「働く場所」を住居内で提供できるコ・リビングへの需要が静かに高まっている好例といえよう。

賃貸住宅に比べて2-3割高めの賃料設定も

こうした付加価値のついたコ・リビングは賃料においても付加価値を付けることが可能であり、実際に一般の賃貸住宅と比べても2-3割程度高めの坪単価を設定可能であるようだ。グロスの賃料は賃貸住宅としては高いものの、シェアオフィスを別途借りるとなると経済的負担も大きい。そもそも法人契約が主流のシェアオフィスが多く、いわゆる職住近接を実現したい入居者にとってコ・リビングは経済的なメリットも多くあると思われる。

これまではどちらかというと住居はオン・オフを分ける重要な要素としてプライベートな空間であることが意識されてきたが、昨今では住むことと働くことの境界があいまいになってきたことから、こうしたコ・リビングのコンセプトがより受け入れられやすい土壌が醸成されてきたものと考えられる。

投資対象として発展の可能性

賃貸住宅に投資する投資家はコア系が多く、安定したインカムゲインを希望するケースが多いことから、特にこれまでシニアリビングや学生寮などに投資してきた投資家にとっては親和性が高い

投資対象としての側面を考えると、こうしたコ・リビングは運営事業者によるマスターリースが主流で、長期の賃貸借契約を締結することがほとんどであるといえよう。一般住宅であれば入居者との個別契約を直接管理することで賃料のアップサイドも可能であるが、コ・リビングは長期にわたって賃料は一定であり、大幅な賃料アップサイドを見込むことは難しい。

一方でそもそも賃貸住宅に投資する投資家はコア系が多く、安定したインカムゲインを希望するケースが多いことから、特にこれまでシニアリビングや学生寮などに投資してきた投資家にとっては親和性が高いものと考えられ、このまま需要が広がっていけば新たな投資対象としての地位を確立できよう。

コロナの影響で働くことに対する価値観…特に働き方が大きく変化したことで、賃貸住宅における新たな可能性としてコ・リビングは今後大きく発展する可能性を秘めている。

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連絡先 内藤 康二

JLL日本 キャピタルマーケット事業部 リサーチディレクター

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