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オフィス再稼働に向けてデータを重視すべき理由

企業がオフィス環境の改善に向けて座席や会議室の数といったレイアウトを最適化するために、ここ数年の間に職場のデータを活用することが増えてきた。この流れは新型コロナウイルスが収束してからオフィスを再稼働させるにあたり、企業は従業員の安全を守るため、収集したデータを分析し、最適な対応策を検討している。

2020年 06月 03日
コロナ後のオフィス戦略再構築はデータが鍵

新型コロナウイルス感染防止策としてオフィスを閉鎖していた企業は徐々に解除し始めているが、企業や不動産オーナーはフロアプランやサービスを改良するためにデータを頼みにするケースが増えていくことが予想される。

JLL EMEA エクスペリエンス・リード リー・ダニエルズは「新型コロナウイルスによってオフィス環境の一般的な在り方からの脱却が求められるようになるだろう。従業員の安全と健康は、現在すべての企業にとって最優先するべき課題だ」と述べており、ソーシャルディスタンスを導入・強化し、共用エリアにおける通常の慣行を見直すということを示している。

ダニエルズは「誰が、どの場所に、どのくらいの時間、いつ滞在したのかを把握することは、人々の動きを管理し、オフィススペースを適正に利用するための戦略を立てる際の鍵となる」と断言する。

データはオフィス特有の課題も浮き彫りにする

JLL米国 シニアテクノロジーサービス・ディレクター ジェフ・ジョセフソンは「今はデータが活躍する場面だ。人の眼だけに頼るより、はるかに正確な実態を表す。効果的なオフィス管理を実現するためには、正確なデータ測定を実現する必要がある。データの活用により、存在さえしない問題の解決のために時間や資源を費やすといった『思い込み』を排除できるからだ」と説明する。

実際のところ、各スペースの在席率等を把握するデータは、個別のスワイプカード、ネットワーク使用ログ、会議室予約システム等を通して、すでに多くのオフィスで収集されている。 こうしたデータは、職場のソーシャルディスタンスを最適にサポートするための施策を導き出す可能性がある。また、エリア別の在席率もIoTセンサーによって追跡・収集が可能だ。企業はこれを、従業員の行動やその職場全体への影響を適切に把握するために利用することができる。

トイレやミーティングエリアなど常時利用するエリアがある一方、企業特有の課題もデータによって掘り起こすことができる。例えば、毎週火曜日と木曜日の午後にオフィスが混み合うのはなぜか。もしく、誰も使用しない会議室と常時稼働中の会議室が存在するのはなぜか。こうした潜在的な課題を掘り起こすことで、オフィスの全体的な改善につなげることが可能だ。

新型コロナウイルスによるロックダウンを解除し、日常を取り戻していく復旧段階において、こうした視点は、利用可能なすべてのフロアスペースを再区分するのに役立つだけでなく、従業員がリモートワークとオフィス出社とのバランスをいかに取るべきかを知る手掛かりにもなり得る。これと同様に、コーヒーマシンやコピー機の周辺等、従業員が特定のエリアに集中していることをデータが示した場合、企業は機器の間隔を調整したり、使用方針を変更するなど、対策を講じることができる。

従業員のプライバシー保護を遵守

このように、コロナ禍からのオフィス再稼働を管理する上でデータが主要な役割を果たすことは理解いただけたかと思うが、半面プライバシーに関する懸念が浮上している。

ジョセフソンは「企業が従業員の調査よりむしろ職場の安全性向上のためにデータを利用するのなら匿名化されるべきだ。IoTセンサーは人間の識別以外に様々なデータを収集できるが、個人のプライバシーを侵害しないことが重要だ」と指摘する。

一方、既存データを持たない企業はオフィス再稼働に向けて、ベンチマーク等を活用してウイルス防止に関する方針や目標を設定することになる。今後数カ月において、独自のデータを構築して対応策をカスタマイズしていくことが、将来の事業継続計画の強化につながるだろう。

ジョセフソンは「新型コロナウイルスは再発する可能性があるため、対策プログラムを整備して準備しておくべきだろう。データ収集は1回限りではない。継続的にデータを収集し分析することによって、企業はワークプレイス戦略を最適化させ、また、長期的な視点で各オフィスを見直すことができる」と述べている。

アフター・コロナにおけるワークプレイスのニューノーマル(新常態)では、企業はこれまで以上に従業員とオフィススペースについて深く理解することが必要となる。ジョセフソンは「ソーシャルディスタンスはオフィス内で短中期的には許容されるだろう。しかしこの件に関して、人は協力的な雰囲気がほとんど感じられず、半分空席のオフィスには出社したくないという、非常に感覚的な問題が付いて回るだろう」と結論づける。

従業員のエンゲージメントと健康にとっては、適切にオフィスへ復帰することが不可欠となる。複数のソースから収集するデータが重要な役割を果たすだろう。

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