記事

ワークプレイス設計と事業戦略の接点

従業員がどのように持続可能で省エネルギーな職場を求めているのか、技術によってどのように職場の選択肢が増えるのかを調べた。

28 9月, 2017
People in modern office

アジア太平洋地域

優れた企業は、ワークプレイスがあらゆる事業戦略に貢献することを認識している。オフィス環境は生産性やスタッフの誘致と定着に影響し、最終的に企業のボトムラインを左右する文化やブランドに関する意思決定を反映する。

また、従業員の期待も変化している。JLLアジア太平洋地域 コンサルティング ヘッド グラント・モリソンによれば「より多くの人々がフリーランスで柔軟に働くことを選択する中、多くの企業が人材誘致に苦労している。柔軟性が鍵だ。従業員はよりサステナブルでエネルギー効率の良いワークプレイスを求めており、テクノロジーが働く場所、スペースや機能の種類の選択肢を増加させていることは、いずれも従業員のエクスペリエンスに貢献する」と指摘する。

事業と従業員のニーズのバランスをとるには、どこから手を付けるべきか

誰がスペースを使用するのか。期待される新しい、または異なる行動について考えてほしい。スタッフは物理的にどこで働いているのか。オフィスで、自宅で、それとも移動中なのか。そして、オフィスの環境はエンゲージメント、エンパワーメントとフルフィルメントを率先しているか。当社の調査「ヒューマン・エクスペリエンスがもたらすワークプレイス」では、これらが世界各地の従業員に最も重視される属性であり、スタッフの生産性やワークプレイスの文化と密接に結び付いていることが示された。

物理的スペースの影響

調査結果は、従業員はエンゲージメントが高いほど生産性も高いことを示唆している。

モリソンは「自社のスタッフに最適な対策を検討するべきである。それは社内のカフェなのか、電話をするための屋外の庭園なのか、それともコラボレーションを促すコワーキング・スペースなのか」提案する。

ワークプレイスの文化を計測することは難しいが、スタッフが活力を感じワークプレイスからインスピレーションを得ていると報告し、顧客満足度が好調を維持しているならば、良いスタートを切ったと言える。欠勤や離職率も一定の展望をもたらす。適切な組み合わせを得られれば、エンゲージメントが高く欠勤率の低いスタッフが得られ、最終的に生産性やボトムラインに影響する。

JLLのグループ企業であるPDM ディレクター マーカス・フォリーは「ワークプレイスは何をしてどのように感じるのかという、プロセスとエクスペリエンスの組み合わせと捉えるべきである。ワークプレイスの設計は一方を重視して他方を軽視する傾向がある。最高のワークプレイスのエクスペリエンスのバランスをとるためには、我々はデザイナーとして照明、スペース、音響、色彩、及びスタイルがどのようにしてクライアントに独特でポジティブなエクスペリエンスをもたらすのかを考えなければならない」と強調する。

人や企業、ブランド相互の結び付きを作り出すため、オフィス設計の境界線は曖昧化して自宅や飲食店、ホテルや空港のラウンジの要素が取り入れられるようになっている。

新しい働き方

誘致とエンゲージメントのためのワークプレイスの活用。テクノロジーセクターは、クリエイティブなワークプレイスの先駆者となってきた。それぞれの市場で他社に抜きん出るために、クリエイティブな人材を誘致しなければならなかったからだ。

モリソンは「銀行や小売といったセクターも、商品やサービスのオンライン化が求められるためテクノロジーに強い人材の採用を競っており、テック・セクターのように行動するようになっている」と指摘する。

新製品がワークプレイスの設計と構成を牽引する。新製品採用の動きが、ワークプレイスの設計と構成に影響を与え続ける。ハロゲンのスクリーン、ワイヤレスストリーミング、ビルトイン・ディスプレー付きの共用テーブル、リモート充電等は、現在多くのワークプレイスで採用されている統合技術の例だ。

モリソンは「一部の企業は顔認識やモバイル端末を用いた入館管理、自動調節の冷暖房、概日リズムに合わせて変化する照明なども取り入れている」と付け加えた。

フレキシブルスペースとウェルネスが引き続き優先事項となる。ワークプレイスにおける様々な活動に応じた環境の選択を提供するワークプレイス戦略である活動ベースの働き方が採用される中、フレキシブルスペースは一貫したテーマであり続けている。人によって働き方は異なると認めることが生産性やエンパワーメントの実感には不可欠だ。

フォレーは「会議や公式な要件から、ヨガ、クロスフィット、集会、イベントまで全て社内で実施するため容易に調整が可能な多目的スペースの提供に注目している。ワークプレイスにおけるワーク・ライフ・バランスやウェルネスの提供はワークプレイスの成功の鍵を握る要素だ」と考えている。

あらゆる健康、フィットネス、及びウェルネス・プログラムの成功のためには、アプリとコミュニティ・ファシリテーターが非常に重要となる。スペースを活性化するだけではなく、利用を促すためだ。

ヒューマン・エクスペリエンスは設計に重要な影響を与える。ヒューマン・エクスペリエンスとテクノロジー推進をアピールするには抑制とバランスが必要となるため、設計の影響力は過去に例のないほど大きくなっている。

企業のスペース要件内で快適性と生産性のバランスをとる上で、自然光や家具の選び方と配置、色彩、質感、トーン等が重要な役割を果たし、オフィスはくつろげる雰囲気で満たされるだろう。

現在とるべき措置

あらゆる不動産ポートフォリオ・マネージャーが検討するべき事柄は多くある。以下は提案される措置の例である。

まず従業員から着手する。日常業務を支援するためにワークプレイスで何を必要としているのかを明らかにし、従業員のインプットをワークプレイスの意思決定に反映することでエンパワーメントを感じさせる。事業のニーズを満たしつつエンゲージメント、エンパワーメントとフルフィルメントをもたらす最善のワークプレイス対策を提供する。

当初からサステナブル・デザインを検討する。グリーンウォール、建材再利用、水を使った演出、植物等が考えられるだろう。エネルギーの消費や出力を計測するエネルギー消費量追跡ツールは環境に優しく、組織がエネルギーやサステナビリティの目標を達成することを助ける。

ワークプレイス専門家チームの雇用。目標を達成し、ワークプレイスの計画、予算、設計、チェンジマネジメント等、あらゆる側面のバランスをとるための助力を得る。

モビリティと柔軟性を最優先事項に据える。スペースは複数の目的に対応できなければならない。日中は会議、夜はスタッフのための形式ばらないパーティー等が考えられる。

融通を利かせる。どのようなソリューションを選んだとしても、2-5年ごとにアップデートされる可能性が高いことを認めなければならない。テクノロジーの進化や従業員のエクスペリエンス、最高の人材確保を巡る競争や市場の発展がこれを余儀なくする。

大胆であれ、勇気を持て。本当は誰しも変化を求めてはいない。初めは惰性を乗り越えることが難しいかもしれないが、進歩を目の当たりにすればその価値が認められるだろう。そして、成果は確かに重要だが、その過程を楽しむことも忘れてはならない。

*編集者注:写真はJLLグループ企業PDMがデザインと製作を担当したロレアル・ボックス。

お問い合わせ