進化する東京都心5区におけるフレキシブル・オフィス
東京都心5区におけるフレキシブル・オフィス市場は、大企業の堅調なニーズを背景に、2023年第1四半期においても拡大が続いている。
総貸床面積は42万㎡まで拡大
2022年12月に発表したJLL日本のレポート「拡大が続くフレキシブル・オフィス市場、ハイブリッド型の働き方が需要を後押し(以下、FOM)」で指摘した通り、東京都心5区におけるフレキシブル・オフィスの総貸床面積は、2022年9月時点で421,457㎡を記録した。
図1:東京都心5区におけるフレキシブル・オフィスの現況(2022年9月末時点) 出所:JLL日本 リサーチ事業部
初期費用を抑制し、契約開始後入居が即可能という柔軟な条件の契約が大企業の間で注目されており、本社移転やサテライトオフィスとして利用されている。
コワーキングオフィスは現在、フレキシブル・オフィス全体の60%を占めている。コミュニティ重視のワークスペースによってコラボレーションや社内外のコミュニケーションの活発化が期待でき、リモートワークの普及にともない一段と注目されている。
2023年に入って再び新規供給が目立ちはじめた
政府が後押ししている働き方改革によってワークライフバランスが注目され、企業のビジョンに人々の関心が集まっている。従業員のニーズにいかに対応するか次第で、企業の人材採用や雇用の維持を大きく左右する
奇しくもFOMを発表して以降、2023年に入ってから東京都心5区にフレキシブル・オフィスの新規供給が目立ち始めた。
例えば、最大手のグローバル・コワーキング運営事業者であるウィーワークは2023年1月に品川に拠点をオープンし、30以上の拠点を含む全国ネットワークを一段と拡大した。
2022年に日本に進出したシンガポールのコワーキング運営事業者のジャストコも2023年2月、グラントーキョーサウスタワーに3拠点目を開業。サービス・オフィス運営事業者のサーブコープも1月、ヤンマー東京ビルで新規拠点の運営を開始した。
国内デベロッパーもフレキシブル・オフィスにより積極的に関与しつつある。例えば、大手不動産デベロッパーの三菱地所は2023年2月にリージャスに加えて、オープン・オフィスやシグネチャーというサービス・オフィスのブランドを展開しているIWGの日本事業を取得した。
東急不動産もビジネスエアポートの新規開設を控えており、野村不動産もヒューマン・ファースト・オフィスというサービス・オフィスのブランドを今後数年かけて拡大予定である。
今後もフレキシブル・オフィス市場の拡大は続く
最後に、政府が後押ししている働き方改革によってワークライフバランスが注目され、企業のビジョンに人々の関心が集まっている。早晩、このような従業員のニーズにいかに対応するか次第で、企業の人材採用や雇用の維持を大きく左右することとなろう。
さらに、東京Aグレードオフィス市場の空室率上昇が見込まれるため、フレキシブル・オフィスのプライム・オフィスへの新規開設がこれまで以上に増える可能性がある。短期的にはAグレードオフィスへの開設は減少したものの、フレキシブル・オフィス事業者にとって将来的な拠点拡大が期待できる。
執筆者:JLL日本 リサーチ事業部 アナリスト 中丸 友世