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不動産テック:未来がパーソナルでデジタルな理由

不動産とテクノロジーの結合である不動産テックはまだ黎明期かもしれないが、上昇中のセクターであることを示す兆候は既に明らかだ。

2017年5月1日

不動産テクノロジー、略して不動産テックは、分析学やアルゴリズムを不動産セクターに適用するデータ主体のスタートアップ企業やインテリジェンス・イノベーターの破壊的な新潮流をひとまとめにした造語だ。

不動産テックが参考にしているのは、金融業界の好調なテクノロジーセグメントである「フィンテック」だ。フィンテックは劇的に成長し、2015年単年の世界的な投資額は75%急増して223億米ドルに達し、ヨーロッパでは投資額が120%増加した。不動産テックの進歩は、今のところこれよりも遅く、利益もより小規模だ。

しかし、不動産テックを巡るざわめきは高まっており、革命の機運が感じられる。

JLLロンドン アンリミテッド ヘッド マイケル・デービスは「現在、不動産はエキサイティングな時代を迎えている。不動産テックは住宅と商業用の両方で存在感を増している。フィンテックの破壊力に至るまでにはまだ長い道のりがあるものの、今後数年間に大きな変化がもたらされるだろう」と推測する。

潜在的用途は幅広い。ヨーロッパでは、ベルリンを拠点とする機会学習と深層学習の専門企業であるレバートンが書類管理の煩雑さを解消させている。スウェーデンのダッチャは商業用不動産の検索スピードを向上させ所有者を特定し、パイ・ラブスはロンドンで地域初となる不動産テックのベンチャーキャピタル企業を立ち上げた。

世界市場においては、主に中国と米国が有力不動産テック企業の資金調達額に基づくランキング上位を独占している。2015年に同セクターは両地域で17億米ドルを調達した。

急速に発展するセクター

不動産業界における不動産テックの採用は、当初は消費者対象の「検索・購入」モデルの不動産ポータルが主体となっていた。

また、不動産テックは住宅業界のイノベーションも牽引した。ズープラは2010年に既に拡張現実(AR)を使用したiPhoneアプリを発売しており、ライトムーブは昨年仮想現実(VR)技術の試験を開始している。今や、フォクストンズ等の伝統的な高級不動産代理店ですらVRの早期採用者となっている。

とりわけ住宅保険や住宅ローンの分野でフィンテックと重なりあっていることから、住宅市場の不動産テック開発と統合はより進んだ段階にある。しかし、デービスは商業用不動産も変化を控えていると考えている。デービスは「より小規模な商業用不動産の市場では、オンラインのプラットフォームで取引の自動化を進めた不動産テックの住宅セクターにおける成功を真似る機会がある。しかし、数千平方フィートといった面積を扱う場合にはこれは実際的ではない」と説明する。

これらは市場とテクノロジーの経験を有する不動産業者の専門知識が必要な大きな取引であり、経験と知識が取引の有利・不利を決する。このため、今後5年間に伝統的な不動産業者の役割は仲介業者からアドバイザーへと劇的に変化するのではないだろうか。

ビッグデータの活用

デービスは「不動産テックは不動産取引の合理化に役立つが、業界により豊かなデータに基づく洞察も提供する」と確信している。不動産テックが建物のインテリジェンスと結びつけば、設計・建設段階や施設管理のために開発されたデジタル資産を活用して、不動産のライフサイクル全体を通じたビッグデータを構築できるだろう。

ARやVRを組み込んだ電算利用設計(CAD)からビルディング情報モデリング(BIM)ソフトウェアまで、建設への技術適用、「建設テック」が増加している。この知識共有リソースは、テクノロジー主導の新世代ビルの建設を支えている。

象徴的な事例として、非公式に「世界で最もインテリジェントなビル」と称されるアムステルダムのジ・エッジが挙げられる。アプリを用いたホットデスク活用やカスタマイズされた温度管理からコーヒーの好みまで、広範囲に渡るスマートな仕様や超効率的なシステムの全てが30,000のセンサーで管理されている。

「最もインテリジェント」なビルの地位奪取を狙っているとされるテルアビブのインテル本店は、2019年に竣工予定だ。同社のモノのインターネット技術が活用され、個人的な交流と監視を次なる水準へ引き上げる可能性がある。

テクノロジー主導がニューノーマル

人のテクノロジー依存度が高まる世界において、不動産テックはスマートフォンを使った住宅環境のカスタマイズからオフィスのワークスペースのパーソナライズまで、日常的な不動産との相互作用に重大な変化をもたらす可能性がある。

デービスは「我々は、不動産にとって興味深い分岐点に立っている。あるいは、転換点というべきかもしれない。今まで、業界全般のイノベーションが遅れていたため不動産テックの実現は遅かった。金融サービスと比較すると、変化のペースは非常に遅く、アプリやオンライン・プラットフォーム、アルゴリズム等、次なる目玉商品開発に対する注目も低かった。したがって、イノベーションの台頭には時間を要しているが、不動産テックは同じような破壊力を秘めており、早期採用者は有利となる」と結論付けた。

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