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ワークプレイスで仕事と遊びのバランスをとる方法

ここ数年、企業はワークプレイスにより多くの遊びの要素を取り入れようとしている。

2017年 06月 26日

クリエイティブなアイディアが生まれるよう、階段の代わりに滑り台やブランコを設置したり、ランチタイムに娯楽の選択肢を提供したり、新しいロンドンのオフィスではデスクにシャンペン・ボタン[SK1] すら備わっている。

実際、ブランドをより良く反映し、既成観念にとらわれない発想を従業員に促すというテック・セクター発のトレンドが今や主流となっている。こうした近代的なオフィスの特典は、オフィス内で独自の話題を提供し、採用の際にはユニークなセールスポイントとなるかもしれないが、一部の企業は仕事と遊びのバランスをとるのに苦労している。

JLLカナダ コンサルティング ヴァイスプレジデント兼ヘッド ラム・スリニヴァサンは「多くの企業はこうしたスペースの価値を疑問視しており、グーグルでは有効だったことが必ずしも自社には当てはまらないかもしれないことに気づいている」と指摘するが、理由は何か。それは企業文化に他ならない。あらゆるオフィスに従業員がくつろげる休憩スペースは必要だが、必ずしもビリヤード台を備えなければならないということではない。

遊び心のあるオフィスの背景には何があるのか。

オフィス設計は、ここ数十年で急速に進化した。伝統的なオフィススペースは工場のフロアと組立ラインのモデルを反映したものだった。1980年代に実施されたHBRの調査では、85%の従業員が集中するためのスペースを必要としていた。ワークプレイスはこれに対応し、当時のソリューションとしてセル方式のワークスペースとキュービクルが生まれたのである。

1990年代を通じて、ビジネスは敏捷性を増した。そして、機能横断的なコラボレーションやグローバルなコネクション、チームワークの必要性が高まった。その反面、個人的な成果を偏重するワークプレイスは機能しなくなってしまった。コラボレーションを優先するワークプレイスの方が優れた業績を達成し始めたのである。

世紀の変わり目に実施された次なる調査の波は、次のことを示唆した。エンゲージメントの高い従業員は生産性もより高く、異なる価値観を有するミレニアル世代が労働者の大きな割合を占めるようになるということである。企業は従業員のエンゲージメントを高め、生産性を向上させ、ミレニアル世代の人材を誘致するソリューションを求めて躍起となった。

スリニヴァサンは「ワークプレイスに遊び心を取り入れることがその答えとみられた。オフィススペース設計はグーグル等の成功とそのワークプレイスから留まるところを知らないインスピレーションを受けた。企業は他者より抜きん出ようと、更なるクリエイティビティを志向するが、あらゆる企業が成功しているわけではない」と述べる。オープンプランのオフィスの一部の従業員にとって、遊びの要素は実際には生産性を阻害する「邪魔者」となることもあるからだ。

適切なミックスを備える

グラスドアの最善の職場ランキングは、上位企業の成功はワークプレイスに仕事と遊びの要素が同居していることを示唆するが、より詳細に見れば話は非常に異なってくる。スリニヴァサンは「相関性は必ずしも因果関係を意味せず、ワークプレイスとそのインパクトの文脈にこれが最も当てはまる。職場環境は文化を反映するのであって、文化を創造するのではない。グラスドアのランキング上位企業の従業員は、最も繰り返し挙げられたテーマである企業文化について、キャリアの発展、学習とチームの風通しを重視している」と述べており、ワークプレイスとその遊びの要素にはほとんど言及していないのだ。

しかし、遊びの要素が無意味だというのではない。JLLカナダ プロジェクト・アンド・デベロップメントサービス クライアント・デベロップメント ミシェル・マクラフリンは優れた設計は、ユーザーを支え、目的があり、よく考えられている。優れたワークプレイス設計は企業の中核的価値を明瞭にし、その文化の反映と表現に役立つ。文化主導型のデザイン原則と哲学や価値を明確化するワークプレイスを統合する組織は成功する可能性が高い」と言及している。

例えばグーグルのワークプレイスは「世界で最も幸福で、生産性が高いワークプレイスを創造する」という野心を反映している。伝統にとらわれないワークプレイスは型破りな発想を反映するものだが、企業が単にグーグル風のワークプレイスを復元することでグーグル同様の結果を得られるとは期待できない。マクラフリンによれば、ワークプレイスは組織とその構成員が何を望んでいるのかを反映しなければならないのである。

先日の調査では、従業員はワークプレイスのプライバシー、気を散らさずに集中できること、快適なオフィス家具をより重視しており、生ビールや卓球台の有無はあまり気にしていない。

企業にとって、遊びを促す休憩エリアや環境にどの程度のスペースと予算を割くべきかという問題が生ずる。正しい解答を導き出すフリーサイズのモデルがないことは確かだ。

スリニヴァサンは「仕事を支える要素とリラクゼーションや楽しみを可能にする要素の適切なバランスを特定するには、各社による慎重な検討が必要」と結論付ける。スイートスポットはワークプレイスが企業文化を反映する部分である可能性が高いのだ。

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