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企業は「幸福」なワークプレイスを設計できるのか

幸福感を買うことはできないかもしれないが、世界中の組織が職場において無料でこれを提供しようと試みている。

2017年 07月 28日

真のエクスペリエンスをもたらす環境を創造すれば、従業員が仕事をすることでエンゲージメント(会社との結びつきや愛着)、エンパワーメント(働くスペースやツールの選択の自由)、フルフィルメント(満たされた幸せな気持ち)を得られるようにできるという考え方を雇用主は持っている。

しかし、職場環境は本当に就労時における幸福感の決定要素となるのだろうか。オフィスは美しくても、労働者はみじめということはあるのだろうか。その答えは、複雑だ。例えば、暴君的な上司がいればどんなに優れたスペースであっても従業員の心に影を落とすだろう。同様に、エンゲージメントの高いチームは地下室でも喜々として働いているかもしれない。

とはいえ、感情的な一体感が得られるワークプレイスは、実際にプロフェッショナルとしての幸福感に大きな影響を与えることを示す証拠が増えている。そして、その逆もまた然り。新しいJLLのグローバルな調査では「従業員のほぼ70%が職場での幸福感は業務における独自のエクスペリエンスの最も優れた構成要素である」と回答している。

JLLリサーチ グローバルヘッド マリー・プイバロードは「幸福感とは『快適、または満足感のあるエクスペリエンス』と定義される。働き方の未来においては仕事から高度な満足感を得るため、エクスペリエンスに大きく注目するべきである」と説く。人は生活とキャリアにおいて「信頼されること」を熱望しているのだ。

幸福感を得るための設計というと感傷的に聞こえるかもしれないが、正しく実行できれば雇用主に確固とした多大な利益がもたらされる。

高評価のエクスペリエンスは、バランスシートにも価値をもたらす

今のところ、ほとんどの組織ではチーフ・ハピネス・オフィサー(CHO)は珍しい存在だが、このアイディアは広がっており、それには理由がある。全世界で10人中9人近くが職場にCHOがいてほしいと考えているのである。

従業員に大胆さ、主体性、責任の共有を奨励し、やさしさと信頼をもって扱われていると感じさせる環境を創造する有意義なビジネスケースが存在する。

JLL コーポレートソリューションズ グローバル兼アメリカ大陸CEO ジョン・フォレストによると「エンゲージメント、エンパワーメントとフルフィルメントを特に重視したプロジェクトに非常に大きな関心が寄せられている」という。最適なヒューマン・エクスペリエンスを提供することで、そこで働く人や顧客、訪問者、その他のステークホルダーに価値がもたらされるという考えが広がっているのである。

例えば、ウォーウィック大学の研究では、「幸福」な従業員は生産性が12%高く、よりクリエイティブに、効率的かつ協働的に働く可能性が高いことが示されている。そうした従業員は同時に、健康に気を払い、知識を共有することに前向きであり、クリエイティブな発想をする可能視も高い。革新的なワークスペースは、従業員の幸福に適っている。JLLの調査では従業員の50%が「ワークプレイスにコラボレーション専用スペースがあることが重要である」と考え、32%がクリエイティブなスペースを求めている。

従業員が活発かつ幸福に企業文化に貢献するならば、社内外のブランドイメージが形成される。従業員のエンゲージメントは採用率や定着率の向上に貢献し、離職後にすら、ポジティブな記憶や話題でブランドイメージが強化される可能性がある。ポジティブなワークプレイス・エクスペリエンスはまた、経営陣と労働者、組織とその訪問者や顧客の間により強い結びつきをもたらすことができる。

企業は既に幸福を求めた設計を実施

今日のワークプレイスとは、単に建物を指しているわけではない。今や、未来に備えたワークプレイス戦略は人を巡る内容がその全てとなっている。

「ヒューマン・エクスペリエンス・モデル」の最も優れた例を、ワークプレイスの選択への注目が高まっていることに見ることができる。プイバロードは「近代的ワーカーは、熟考と内省のスペース、そして統制された対話と自然な会話の両方が存在する場合に成長する」と考える。

多くの企業は、既にカフェやラウンジ、プロジェクト用の「作戦指令室」、より集中した個人の業務用等、多様なスペースを提供している。一部の企業は社内のインフラと専門的人材を活用して個人的なプロジェクト開発に従事するインキュベーター・スペースも備えており、自宅や遠隔地で快適に業務を行うために必要な技術的サポートを提供する企業の数も急増している。また、中にはリラクゼーションルーム等の職場のプレッシャーを緩和するための場所や、家族に優しいスペース、ドライクリーニング等のサービスを提供するエリアを有する企業もある

プイバロードによれば「豊富な選択肢は雇用主に対する好意を生みだし、職場におけるより広範な個人的フルフィルメントをもたらす」という。

レイアウトと用途に関するスペース戦略も、より民主的な経営アプローチを促進させられる。従業員と上司の間の見通しをよくすることで、組織は従業員が上司に親近感を感じ、自分の仕事がチームの業績に直結していると感じられるようにできる。

幸福感は人によって異なる。しかし、企業は仕事における幸福感の実現にスペースを活用する方法にはある程度の類似点があることに気付き始めているのだ。

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