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万博招致が大阪不動産マーケットの追い風に

11月23日、2025年の万博開催地が大阪に決定した。大阪を世界にアピールする絶好の機会となる。不動産マーケットの活況はもとより、東京に比肩する経済圏確立へ期待が持てそうだ。

2018年11月29日

万博招致で都市機能の整備が進む

2025年に開催される国際博覧会(万博)の開催地が大阪に決定した。テーマは「命輝く未来社会のデザイン(Designing Future Society for Our Lives)」とし、IoTやAI、ビッグデータ等の革新技術によって社会全体が最適化された「未来社会の実験場(Peaple’s Living Lab)」を目指すという。会期は5月3日-11月3日の185日。来場者予測は2,800万人、そのうち海外は約1割の350万人を想定する。りそな総合研究所の試算では経済波及効果は2兆2,000億円にのぼるとの見立てだ。

今回の万博招致により、大阪の不動産マーケットにはどのような影響が考えられるだろうか。五輪や万博といった国際的な大イベントが実施される際、都市機能の整備・更新が必ず行われる。いわゆるインフラ整備であり、これには鉄道・道路・港湾等の都市施設の整備が含まれることはもとより、都市機能を発揮するための重要な都市インフラである不動産も例外ではない。実際、東京五輪の招致決定を受けて、大手デベロッパーはこぞって大規模再開発に乗り出した。国家戦略特区による規制緩和が追い風となったのは言うまでもないが、五輪によって東京の世界的な注目度が高まる中、国際都市・東京の魅力を発信し、世界の資本・ビジネス・人材(ヒト・モノ・カネ)を吸引するための絶好の「プレゼンの場」として位置づけている。

この構図はそのまま大阪万博にも当てはまるだろう。会場となる夢洲は大阪市西端に位置する。IR誘致を念頭にコスモスクエア駅から夢洲駅(仮称)まで地下鉄中央線の延伸が計画されているが、万博開催時の輸送力としては十分とは言い難い。JR桜島線の延伸に期待が寄せられているが、鉄道が難しければLRTやBRT、モノレールなどの導入も考えられる。こうした交通インフラ整備を呼び水に不動産開発が実施される可能性は高い。東京に目を移すと三井不動産が日本橋、三菱地所が丸の内、東急グループが渋谷、森ビルが虎ノ門といった具合に各デベロッパーが競い合うように再開発を通じて街の魅力向上に邁進している。これはデベロッパー同士の競争原理が働いた結果だ。一方、関西の主要デベロッパーとしてはJR西日本、阪急阪神ホールディングス、南海電鉄、近畿日本鉄道、京阪電鉄といった鉄道会社系、関西電力・大阪ガスといったエネルギー会社系、積水ハウスといったハウスメーカー系、ダイビルや京阪神ビルディングといった地元デベロッパーなど在阪企業のほか、関西発祥のスーパーゼネコン、総合商社など多数の開発プレイヤーが存在する。そして、東京に本社を構える大手デベロッパーも指をくわえて眺めているだけとは考えにくい。再開発には行政の折衝も踏まえると少なくとも5年超を要するが、万博まで7年の猶予がある。民間資本による都市再生が大阪の不動産マーケットの価値を一段と高めていくことが予想される。

再開発が増えても需要は十分見込める– 大阪万博が不動産マーケットに与える影響

五輪よりも会期が長いとはいえ、約半年のイベントのために再開発を行っても、果たして不動産需要がついてくるのかが問題となるが、現在の大阪不動産市況を鑑みるにその心配は杞憂に終わる公算が高い。今後の大阪における大規模再開発は2020年竣工予定の「オービック御堂筋ビル」、2022年竣工予定の「大阪梅田ツインタワーズ・サウス」と「(仮称)梅田3丁目計画」しか見当たらず、2018年-2025年の大阪Aグレードオフィス供給予定量はわずか257,000㎡。過去10年平均比で47%程度の限定的な水準だ。一方、2018年第3四半期の空室率は1.1%、賃料上昇率は前年同期比で11%と二桁増を記録し、明らかに「空室不足」が顕著だ。ちなみに東京Aグレードオフィスの空室率は1.8%、賃料上昇率は2.9%に留まっており、大阪の成長率は際立っている。この好況を受けて、投資家も大阪に注目している。2018年、大阪圏では100億円以上の大型取引が15件あり、2018年第3四半期の取引額は過去最高額を記録した。買い手には海外投資家の姿が目立つ。東京は2018年―2020年にかけてAグレードオフィスの大量供給がなされ、踊り場を迎えると予測されるが、新規供給が限定的な大阪は更なる成長が見込める有望マーケットだと国内外の投資家は見なしている。再開発によって新規供給が増えてもテナント需要は十分に見込める上、買い手も事欠かないはずだ。

会場となる夢洲は高度経済成長の波に乗り整備された郊外エリアの象徴であり、離接する咲洲(南港)などとともにバブル崩壊によって遊休地化・不採算化した「負の遺産」でもある。東京も同様に湾岸エリアの再開発がバブル崩壊で停滞した過去があるが、湾岸エリアで棚上げされた遊休地を2020年東京五輪の中心会場として有効活用される。これと同様に夢洲を含めた大阪・南港エリアが本物の「レガシー(遺産)」となる絶好の機会が訪れた。過去の五輪開催地であるロンドンやシドニーでは、倉庫・工場跡地や廃棄物処理による土壌汚染地の再生を同時並行で実現した。大阪万博にも「リバイタライズ(再び命を吹き込む)」の期待が持てる。

世界に都市ブランドを発信する絶好の機会に– 大阪万博が不動産マーケットに与える影響

ここまでは不動産マーケットへの影響に焦点を当てたが、マクロ的に見れば、万博は大阪の魅力を世界に発信するためのブランディングの千載一遇のチャンスと捉えるべきだ。前述した通り、世界の都市間競争が激化する現在、都市の魅力が一国の経済情勢を左右するまでに重要なものになっている。しかし、JLLの調査レポート「2018年版 都市比較インデックス – 世界都市の10類型」を見ても、大阪は“国内成長エンジン”の都市類型に属し、人口・経済規模は大きいものの、グローバルレベルで都市(経済圏)としての魅力が十分に理解されているとは言い難い。経済規模は世界8位にあり、経済圏としては東京を含めた世界主要7都市“ビッグセブン”に遜色のない「大都市」といえる一方、世界的な認知度を表す「ソフトパワー」や海外との結びつきを評価する「ゲートウェイ機能」の項目では低迷している。つまり、都市としての大阪のウィークポイントは国際化とブランドをいかに確立するかという点に集約される。翻って、今回の万博招致はこの2つの弱点を克服するための絶好の機会となるはずだ。

周辺都市と連携し経済圏確立へ – 大阪万博が不動産マーケットに与える影響

また、万博を大阪だけで独占するのではなく、周辺中核都市との連携強化を視野に、経済圏を確立する絶好の機会にもなる。京都、神戸といった周辺都市と連携することで東京に伍する経済圏が日本に誕生することになる。複数の都市が連携する経済圏という考え方は、すでに都市づくりにおける主流になっている。具体的にはサンフランシスコ・シリコンバレー・オークランドの「サンフランシスコベイエリア」、アムステルダム・ロッテルダム・ハーグ・ユトレヒトの「オランダメトロポール」、香港・深圳・マカオ・仏山・広州の「グレイトベイエリア」が有名なところだが、商都・大阪、国際的なMICEも多数開催される観光都市・京都、先端医療をはじめとする学術研究開発拠点を擁する港湾都市・神戸といった具合にお互いを補完し合うことで、東京とは異なる国際都市圏に飛躍するポテンシャルを十分に秘めている。

2025年までに大阪は世界的な注目を集めるイベントが目白押しだ。IRの有力候補地に名を連ねる中、来年2019年にG20サミットが開催される。東京五輪後の2021年にはワールドマスターズゲームズを関西広域連合で開催、その間IR実施法の制定・事業区域認定を経て早ければ2024年にもIR開業となる予定である。

交通・通信等のインフラとともに、重要な都市機能を担う不動産も都市競争力において重要な役割を担う。それは単に都市を形成する物理的なものではなく、都市を成功に導く牽引力である。特別感を創出できる印象的・象徴的モニュメントビル、生活の質向上のための柔軟な働き方を可能にするオフィス、低炭素社会志向のサステナビリティを実現する建物、テクノロジーと不動産の融合を図る不動産テック等、これからの都市社会に不動産が果たす役割は大きい。したがって、「命輝く未来社会のデザイン」という今回の万博のテーマは都市づくりにも通じ、テクノロジーやサステナビリティに溢れた都市全体が世界へのショーケースとなることを期待してやまない。

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