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物流施設で「働き方改革」進行中

物流施設の人手不足が顕著だという。開発地はいずれも都心部から離れた郊外。物流施設と郊外型ショッピングモールの間で人材獲得競争が勃発しているのだ。

2018年 02月 16日

物流施設VS商業施設 人材獲得競争

商業施設の場合、来客者の快適性に主眼をおいた施設運営が行われるので、そこで働く従業員もその快適性を享受できる。一方、物流施設の場合はどうか。多くの現場では空調設備も備わっておらず、快適でない環境で業務に従事することも少なくなかったという。少子高齢化による労働人口が減少傾向に向かう日本において、いかに労働力を確保するかが今後の生命線となる。それゆえ、物流施設においてもテナント企業がいかに地元労働力を確保できるかが施設選定の大きなポイントとなっているのだ。物流施設のリーシングに詳しいJLLマーケッツ事業部の田口元は「空調が設置できるのは最低条件。加えて、主力となるのは地元の主婦が中心。子育てや家事等の合間に働くことが多い。そのため、子供を一時的に預けられる託児施設を設置する物件も出始めている」という。館内従業員の利便性を高めるため、屋上にコンビニエンスストアや飲食施設を備えている施設も増加している。JLL日本マーケッツ事業部が支援したスケッチャーズジャパンの物流センター移転拡張プロジェクトでは、移転先施設にはお洒落なカフェラウンジ、商業施設を想起させるシースルーエレベーターまで完備されていた。

労働力確保が物流施設に求められる

首都圏においても従前の倉庫は、商品保管施設としての役割が主であったため、多くの労働力を必要としなかったのだが、昨今は倉庫機能だけでなく、流通加工センターとしての意味合いが強くなってきており、パートを含めた労働力を確保しなくてはならなくなった。また、テナント床面積需要が大型化しており、施設自体の大型化が顕著になった。例えば、大和ハウス工業が開発を進めるマルチテナント型物流施設「DPL流山」は総延床面積約387,000㎡(3棟合計)と、開発規模が「街レベル」に達しており、ワーカーに対して生活面でのサポートが求められるようになっているのだ。また、三井不動産が開発を進める「MFLP船橋Ⅱ」では初の多目的棟を導入予定で、カフェテリアや託児所を整備し、近隣にも開かれた施設づくりを提案するようになっている。

共用スペース充実、働きやすさ追求

物流施設を使用するテナントのためのサービスとして「快適な労働環境を提供する」ことは競合施設との差別化に繋がる。JLLマーケッツ事業部の友田健は「テナントリーシングを優位に進めるだけでなく、施設オーナーにとっては賃料収益への貢献度が高いのでは?」と指摘する。首都圏の物流施設マーケットの平均賃料相場は月額坪当たり4,000円前後とされ、景気動向にあまり左右されないが、賃貸面積が非常に広いため、月額坪当たり賃料を100円増額できれば年間の収益性は各段に向上する。友田が「現在、物流施設を開発しているのは投資家が中心」と指摘する通り、投資家の求める稼働率と収益性に対応しうる物流施設の開発は、物流物件を進化させてきた要因ともいえる。

物流施設の需要自体はEコマースの継続的な成長により底堅いと予想されるが、開発によっては稼働率が長期低迷する施設も見受けられるようになってきた。今後、物流施設の新規供給が拡大する中、より労働者の視点に立った「働きやすい施設づくり」こそ早期満床への近道になりそうだ。

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