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グリーンビル以外は淘汰される?

ESG投資の機運が高まり、商業用不動産において環境認証が価値を左右する時代が目前に迫っている。

7月 03, 2018

オフィスのグリーン化が進まない

賃貸オフィスの省エネがなかなか進まない。大きな原因はオーナーにメリットが少ないためだ。省エネ改修の費用を負担するのはオーナーだが、光熱費削減の恩恵を受けるのはテナント。賃料収入が伸びるわけでもない。オーナーにとって省エネ改修は「労多くして功少なし」なのだ。これまで不動産の環境対策は光熱費削減を念頭においた費用対効果が最優先に考えられてきた。「コスト削減が見込めなければ省エネ改修など実施しない」。こう言い放つ不動産オーナーは実際に存在する。

しかし、省エネに対して後ろ向きの考え方はすでに前時代的な発想になりつつある。不動産に対する環境コンサルティング事業を手掛けるJLL日本 エナジー&サステナビリティサービス事業部長 奥田知康は「近い将来、環境対策を行っていない賃貸物件は不動産そのものの価値が下がる時代が訪れる」と断言している。

米国発の環境認証LEEDが世界を席巻

JLL日本では米国で開発された環境認証制度「LEED」の取得コンサルティングを積極的に行っている。LEEDはビルのエネルギー使用効率をはじめ、水、交通や敷地といった立地状況、廃棄物・材料、室内の空気環境など、ビルの環境性能を総合的に評価する世界的に広く知られた指標だ。評価項目の最終的な点数を積み上げて総合評価する。トータル40点以上で認証が得られ、得点に応じて4段階でランク付けされる仕組みだ。世界各国で58,000件に及ぶプロジェクトが存在し、日本国内でも100件超の取得実績がある。日本独自の環境認証ではCASBEEが知られているが、あくまで国内に限った指標に過ぎない。一方、LEEDは世界で最も認知され、海外投資家などへの訴求力が非常に高い環境認証といわれている。

奥田によると「米国ではLEED認証を取得した物件のほうが稼働率・賃料が高いという研究結果が出ている。不動産の価値を高める手段としてLEED認証をこぞって取得している」という。前述した通り、日本での取得事例は少なく、賃料や稼働率との相関関係は見出せないが、LEED認証が定着したグローバル不動産投資マーケットを俯瞰すると、LEED認証ないし環境認証は投資判断を左右する重要な要素となっている。LEED認証が当たり前に普及すれば、賃料・稼働率が上昇するというアドバンテージよりも、取得していないことでマーケットから淘汰される可能性は決して低くはないだろう。奥田は「以前はクライアントからLEED取得による稼働率・賃料への影響について質問されることが大半だったが、最近では不動産の環境対策を投資家にアピールするための手段としてLEED取得を検討するケースが非常に増えている」と指摘する。財務的な効果を重視した時代から、社会的意義を対外的にアピールするためのツールとして考えられ始めたのである。

ESG投資拡大が追い風に

日本の不動産マーケットにおいて現時点ではLEEDに関する認知度はまだまだ低いのが実情だ。特にテナントがオフィス選定時に「LEED取得物件をリクエストする」ケースは皆無に等しい。しいて挙げるなら、環境問題に積極的に取り組むグローバルな欧米企業が日本へ拠点を構える際にLEEDを取得した「グリーンビル」を選好するに留まっている程度だ。

しかし、潮目は大きく変わろうとしている。その理由は世界的に注目を集めている「ESG投資」の影響だ。ESG投資は2006年に国連が機関投資家に対して社会的責任のある投資を行うように呼び掛けたのを機に世界的な潮流となりつつある。2016年にはその運用資金は日本円で2,500兆円に及び、世界の投資マネーの4分の1を占めるまでになった。社会的に意義のある「環境・社会・ガバナンス」に注力する企業などへ投資マネーが集まり、半面、取り組みが不十分だと投資家に判断された企業からは資金が引き上げられている。この流れは不動産にも当てはまる。奥田は「不動産投資に関しても環境対策が必要不可欠となりつつある。環境対策の実績を示す上でLEED認証の重要性はますます高まっていくのではないか」と予測する。

環境対策が不動産の価値に多大な影響を及ぼす時代は目の前だ。

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