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少子高齢化の日本でなぜ?「学生寮」

不動産投資マーケットで「学生寮」の存在感が高まっている。少子高齢化の日本全体でみると「学生不足」に帰結するリスクアセットのように思われがちだが、こと東京の学生人口は世界一。そして学生寮の需要を支えるのは急増する外国人留学生の存在だ。

3月 06, 2018

高機能の学生寮が不足

文部科学省の「学校基本調査」によると大学の学生数は2007年度に約282万人だったが、2017年度には289万人へ増加している。少子高齢化に悩まされる日本だが、大学への進学者は拡大傾向にあることを示している。特に東京は世界一の学生人口を誇り、その数は約150万人。当然、世界各国から留学生が集う。世界的なダイバーシティ都市である英国ロンドンでも大学数39に対して学生数は約37万人(2016年時点)しかおらず、いわば東京は世界屈指の「留学生」受け入れ都市といえるのだ。にも関わらず学生寮の数はまだまだ不足しているのが現状だ。ここに投資対象として学生寮の将来性が見え隠れする。

海外ではハイスペックな学生寮が定着しており、一説にはロンドンでは10,000施設超が存在すると言われている。いずれの施設も国内外の学生が交流するためのコミュニティスペースが充実し、高度なセキュリティ機能とWi-Fiが完備されている。一方、東京にはロンドンに比べて真の意味で「ハイスペック」な学生寮は存在しない。端的に言えば留学生の受け皿が枯渇しているのだ。近年、日本のデベロッパーや投資家が学生寮を投資対象と見るようになってきたが、ハイスペック学生寮のパイオニアは英国のGSA社である。2014年、GSAは日本の不動産会社であるスターアジアと共同出資し、GSAスターアジア株式会社を設立、翌年4月から日本で学生専用レジデンスの開発・運営管理を展開した。この成功が日本での学生寮の人気に火をつけたといえるだろう。

日本にも学生寮を運営する不動産会社は存在するが、彼らが提供するサービスはGSAのレベルには到底及ばない。2017年3月に竣工した武蔵小杉の学生寮「CREVIA WILL(クレヴィアウィル)武蔵小杉」は国内不動産会社が手掛けたハイスペック学生寮の開発事例だが、こうした施設はごく少数だ。同施設はカフェテリアやラウンジ、テラスを備えた広くコミュニティスペースがあり、各階にはキッチン付きリビングスペースを整備している。自習室やグループワークに使えるマルチルームやトレーニングマシンを設置したジムスペースまで備える。国際交流に関心が高い学生と留学生との交流を促す仕掛けづくりに加え、フロア別セキュリティや24時間有人管理、入退館管理システム、健康相談サービスまであり、朝夕の食事つきだ。ここまで手厚いサービスを提供する最先端の学生寮は既存施設では存在しなかった。

この学生寮はテンプル大学ジャパンキャンパスの学生寮と青山学院大学の国際学生寮として機能している。グローバルに通用する人材育成の観点から外国人留学生と寝食を共にする学生寮は日本人学生にとっても貴重な「学びの場」となる。加えて「大切な子供を安心・安全な目の届く場所で生活させる」ことができる学生寮は地方在住の親にもありがたい存在だ。地方から上京し、東京の大学へ通う。必然、一人暮らしとなり、親の目が届かない生活は次第に不規則になる。こうした状況を回避するため、しっかりした管理体制を持つ学生寮への入寮を求めるようになったのだ。

留学生にとって日本の商習慣が障害に

日本における従来型の学生寮は留学生にとって縁遠い存在だ。大学の近くにあるアパートがその役割を担っていたが、連帯保証人や敷金・礼金といった独自の商習慣は地方から上京してきた日本人学生なら苦もないが、留学生にとっては大きな障害となる。2017年4月に発表された法務省の調査によれば、過去5年間に住居を探していた外国人の約40%が居住を拒否された経験があるとの結果が出た。家主が国籍を理由に賃貸借契約を拒否することが違法ではないという、世界的に見て「異常」な状況も留学生を苦しめてきたのだ。しかし、新たに開発が進められようとしている最新鋭の学生寮は賃貸借契約に共通する多くの障害を回避している。

政府も留学生誘致に本腰

日本政府は2008年に「留学生30万人計画」を掲げ、2020年までに外国人留学生数を30万人まで拡大させる方針を打ち出している。2014年に決定した「スーパーグローバル大学創成支援事業」に採択された全国37大学(タイプA・B含む)は日本人・外国人混在型の学生寮を整備することが採択条件にあることも学生寮のニーズ拡大を後押ししている。日本政府は一定数の留学生を維持する大学に対してインセンティブを付与しており、「国際スタイル」の学生寮の整備を進めている。これを受けて、みずほフィナンシャルグループは2017年8月に100億円の資金を調達して学生寮市場への参入を表明した。聞くところによると、2018年3月末までに3件のプロジェクトに投資し、今後2年間で10件に増加することを目指しているという。新規開発だけでなく、既存施設を改修するケースも含まれ、各施設の収容人数は約300名を予定しているとのこと。家賃設定は月額3万円-8万円、外部のオペレーターに施設管理を委託する。建設が完了した後、ファンドは約5年間大学に物件を賃貸し、上場REITを出口戦略と考えている。

不動産投資の観点では、収益力は賃貸マンションと同程度であるが、居住者集めに一抹の不安を覚える賃貸マンションに比べて、大学や学生寮オペレーターの一括賃貸が期待できる学生寮のほうが空室リスクは低く、安定収益を得られる。日本を襲う少子高齢化時代を逆手にとって、底堅い需要が見込める学生寮を嗜好する投資家は今後も増加していくのではないだろうか。

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