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主要エリアで回復進む東京オフィス市場、優劣鮮明に

オフィス勤務とリモートワークを組み合わせた「ハイブリッドワーク」を採用する企業が増えるなか、東京都心5区全体の空室率が上昇傾向にある。しかし、主要オフィスエリアでは回復が鮮明になっており、物件・エリアごとで優劣が進んでいるようだ。

2022年 06月 21日
コロナ禍の影響で空室率が上昇

2012年から8年続いた東京都心5区のAグレードオフィスの賃料水準は2020年に新型コロナウイルスによるパンデミックの影響を受けて下落フェーズに突入した。

緊急事態宣言や在宅勤務要請といったこれまで経験したことのない措置を経て、東京でも働き方が大きく変化し、オフィス需要にも影響を及ぼしている。

世界的なパンデミックによって感染状況が深刻であった欧米に本社を置く外資系企業は、日本のオフィスでも従業員の安全確保を徹底し、いち早くフルリモートワークに移行すると共に、オフィス床の返却や縮小移転に踏み切った。

また、緊急事態宣言によって出社に一定の制限がかかるなか、在宅勤務への置き換えが比較的容易であったIT系企業を中心にオフィス床の返却も進んだ。

しかしワクチン接種の普及により海外を中心に経済活動が再開されるなか、日本でも2021年9月末に緊急事態宣言を解除したことで、2年近く停滞していたテナントの移転活動も一気に動き始めている。

オフィス需要が戻るにつれて供給が集中する2023年の新規開発計画にも徐々にテナントが付き始めている。コロナ禍を経て空室率が大きく上昇した物件は募集賃料を引き下げており、過去8年間続いた賃料上昇フェーズでは見られなかった大型の空き区画と割安な賃料によって二次空室を埋め戻している。

主要オフィスエリアは回復鮮明
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従来のオフィス、在宅勤務、その中間に位置するフレキシブルオフィスの3つの形態を取り入れた「ハイブリッドワーク」と呼ばれる働き方へとシフトしたことで従来のオフィススペースにも需要が戻ってきている

一方、東京都心5区の空室率は上昇傾向ではあるが、主要なオフィスエリアではそれぞれ傾向が異なっている。特に、大手町/丸の内、赤坂/六本木、そして新宿/渋谷では回復が顕著だ。

大手町/丸の内

都心5区で最も賃料の高い同エリアでは国内企業の本社が集中しており、需要は底堅く推移しており、2022年第1四半期末時点の空室率は1.9%の低水準となっている。

赤坂/六本木

外資系企業が集積する同エリアでは、コロナ禍の影響から空室率が一時4%近くまで上昇したものの、大きな空室を抱えたオフィスビルが賃料を値下げすることで再び埋め戻しており、2022年第1四半期末時点の空室率は2.6%まで回復している。

新宿/渋谷

IT系企業から根強い人気を誇る渋谷エリアでは2020年の1回目の緊急事態宣言の直後に空室率は3.6%まで上昇した。しかし、その後は急速に回復しており、コロナ禍初期は積極的に在宅勤務を取り入れていたIT系企業が従来のオフィス、在宅勤務、その中間に位置するフレキシブルオフィスの3つの形態を取り入れた「ハイブリッドワーク」と呼ばれる働き方へとシフトしたことで従来のオフィススペースにも需要が戻ってきており、2022年第1四半期末時点の空室率は2.5%まで回復している。

エリア、ビルごとの優劣がさらに鮮明に

東京都心5区全体では空室率は上昇傾向にも関わらず、都心5区内の主要なオフィスエリアでは改善を示している。この事からテナントのオフィス需要はよりアクセスや立地が良く、テクノロジーや衛生面でも質の高いビルへと向かっていることが伺える。一方で、こうした競争力を有していない物件の空室率は改善していない。今後は東京都心部で大型ビルの竣工が控えていることからテナントによる物件の選考はより厳しくなり、各エリアやビルごとの優劣は一層と鮮明になってくると予想される。

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連絡先 大東 雄人

JLL日本 リサーチ事業部 シニアディレクター

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