大阪: コロナ禍からの回復と大阪の未来
大阪はこれまでに4度の「緊急事態宣言」が発出されており、2020年は不動産市場も大きく影響を受けた。約2年にわたり規制の実施・緩和・解除のサイクルを繰り返し行っているが、大阪の不動産市場を支える社会経済はどのように変化し、回復を遂げているのだろうか。
大阪の需要とモビリティの回復状況
2021年末、新型コロナウイルス感染拡大第5波を乗り越え、日本の社会経済にようやく明るい兆しが見えてきた。JLL日本リサーチでは、新型コロナウイルス感染症の影響により悪化した日本の社会経済状況がどの程度回復しているかを可視化する総合指標として「JLLリカバリーインデックス」を月次で発表しているが、今回は大阪に焦点を当てその回復状況を見てみる1。
全国を対象に初めての「緊急事態宣言」が発出された2020年4-5月は社会経済活動が全国的に一時停滞し、大阪においても需要はコロナ禍以前の4割、モビリティは2割まで落ち込んだ。一方、大阪府内の新型コロナウイルス死亡者数が最多を記録しヘルスが最低水準となった2021年5月は、需要がコロナ禍以前の5割、モビリティが4割弱にとどまった。「緊急事態宣言」の制限範囲や対象が限定的だったこともあるが、規制の実施・緩和・解除のサイクルのなかで社会全体がコロナ禍における活動のあり方をある程度体得したためと考えられる。
4度目の「緊急事態宣言」解除後の大阪
また、大阪府内の新型コロナウイルス新規感染者数が最多を記録した2021年8月は、ワクチン接種が進みつつあったことに加え、東京五輪のお祭りムードで国内の活気が出てきた時期の夏休みということもあり、需要はコロナ禍以前の8割弱の水準で持ちこたえた。その後、感染拡大が落ち着きを見せ、9月末に全国で「緊急事態宣言」が解除されると人々の活動が活発化し、10月には社会経済はコロナ禍で最高の87%まで回復した。
上昇傾向が続く大阪の景況感
回復への期待は景況感にも表れている。帝国データバンクの調査によると、大阪の景況感は2020年4-5月以降おおむね上昇傾向が続いている。東京と比べてもその伸びは好調で、2021年7月時点でほぼコロナ禍以前の水準まで回復している。不況時でも前向きなポジティブ思考は大阪の強みといえ、回復への牽引力にもなり得る。また、大阪の近年の活況はインバウンド需要によって支えられてきた部分も大きく、新型コロナウイルスが収束し外国人観光客が戻ってくれば、大阪の回復も一気に加速するものと期待される。
人々の活動が活発化し、街に活気が出始めた(画像はイメージ)
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「 JLL大阪リカバリーインデックス」 出所:JLL日本
2025年の大阪・関西万博に向けて
さらに、大阪では2025年4月13日-10月13日に開催予定の大阪・関西万博に向けたさまざまな施策も動き出した。万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」、コンセプトは「未来社会の実験場」である。コロナ禍で重要性や注目度が高まったライフサイエンスやバイオメディカルは大阪が誇る産業分野であるが、万博を機にライフサイエンスのみならず、スマートモビリティやカーボンニュートラルに関わる産業の進化が期待される。同時に、万博会場となる「夢洲」エリアの生活インフラおよび夢洲への交通インフラ整備も進展する。大阪府・大阪市はこの「夢洲」エリアとJR大阪駅前に広がる「うめきた2期」地区の開発をモデルケースに、都市インフラや生活サービス全般に最先端技術を活用することで住民の生活の質の向上と都市競争力の強化を図り、持続可能なより良い社会をつくっていくだろう2。
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