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遊休地活用「定借分譲マンション」に会計上のメリット

企業の遊休地活用の新たな選択肢として注目されつつあるのが「定期借地権付き分譲マンション(以下、定借分譲マンション)」だ。自社保有地に賃貸物件を建設し賃料収益を得るのが企業の遊休地活用の一般的なスキームであり、賃貸マンション、オフィス、商業施設などが想定される。

5月 08, 2018

悪条件の土地でも有効活用が可能に

定借分譲マンションの場合、土地オーナーは建物へ投資せず、マンションデベロッパーに土地を賃貸することで地代を得る。地代の相場観は様々だが、一般的に固定資産税の2~3倍とされ、収益性だけで評価すると賃貸物件を自ら開発するケースに比べて事業規模的に魅力に乏しい。

収益性の面で見劣りする定借分譲マンションが、なぜ注目されるのか。理由はいくつか存在するが、最大の要因はこれまで有効活用が難しかった土地を収益化できる可能性があるためだろう。企業が保有する土地の有効活用策についてコンサルティングサービスを提供しているJLL日本 ストラテジックコンサルティング/バリュエーション事業部 事業部長 相川正敏によると「建物に投資しても十分なリターンが見込める好立地ならいざ知らず、駅から離れた郊外で、比較的広大な土地の場合、新たに賃貸物件を建設すると投資回収期間が長くなるか、低利回りとなり、企業側が期待するリターンが得られない。こうした有効活用が難しい土地でも定借分譲マンションなら事業性が見込めることがある」という。郊外にある広大な土地ならば物流施設や商業施設といった選択肢もあるが、都市計画上の用途地域に制限され、物流施設が開発できないケースは少なくない。また商業施設は集客が見込める幹線道路沿い等の好立地が求められ、これらの条件に見合った遊休地は更に少なくなる。

土地オーナーには会計上のメリットも

JLL日本 ストラテジックコンサルティング/バリュエーション事業部が手掛けた定借分譲マンションによる遊休地活用プロジェクトは次のようになる。クライアントは一般事業会社で土地オーナーだ。自ら建物に開発せず、マンションデベロッパーと70年間定期借地契約を結ぶ。マンションデベロッパーが分譲マンションを建設し、エンドユーザーに販売していく。定借期限が切れる70年後に一般事業会社(土地オーナー)に更地の状態で土地が返還される。

1992年に定期借地権が設定され、その当時から定借分譲マンションは存在していたが、定借期間は50年と比較的短い。JLLが手掛けた案件は定借期間を70年にしたことで居住者の退去リスクを解消した上で、所有権よりも割安な価格設定にすることで商品性を高めている。

一方、土地オーナーは会計上のメリットも享受できる。相川は「条件次第」と前置きしつつも次のように説明する。

「土地オーナーは交渉次第で、定借期間70年分の地代のうち何割かを『前払い地代』として受け取ることができる場合もある。マンションデベロッパーは前払い地代の負担分も織り込んだ分譲価格とすることで成立するスキームだ。土地オーナーは土地を売却したのとほぼ同等のキャッシュを一括で得ることができ、投資がないので不良債権化の危険もない。投資対象の将来的なキャッシュフローを現在の資産価値に置き換える投資判断の指標『NPV(Net Present Value:正味資産価値)」は売却時よりも高くなる。そして、前払い地代は『前受収益』扱いとなり、会計処理上は定借期間で案分した地代が年度毎計上されるため、売却するよりも税務的なメリットも大きい」

万人受けしないがハマれば起死回生の策に

絶対に土地を売りたくないと考える日本企業は意外に多く、純粋に有効活用を検討した結果、定借分譲マンションの存在感が増しているようだ。ただし、このスキームは定借期間が長期に及び、その間は流動性に乏しい。土地の売却は可能だが、底地扱いで売却価格も大幅に目減りしてしまう。また、定借期間の長さと地代の前払いに対応できる事業者はいわゆる資本的体力のある一部の大手デベロッパーに限られる。

相川は「定借分譲マンションが最有効活用となる遊休地は多くはなく、CRE戦略として定借分譲マンションを選択するケースが爆発的に増えるとは考えにくいが、今まで手が付けられなかった遊休地を生かすための起死回生の策ともなるのではないか」との見解を示す。「万人受け」はしないが、CRE戦略として一考に値するのではないだろうか。

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