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不動産テックが「意思決定」を後押し

日本の不動産業界は「不動産テック」の話題で持ち切りだ。不動産事業を根底から変えてしまうような新サービスはいまだ登場していないが、今ある不動産サービスを飛躍的に強化することは十分に可能。VRはその典型だ。

7月 04, 2018

利便性の高いVR内覧

 

JLLが提供しているVRサービスは2つある。その1つが「360 Tour」。物件の写真イメージを集め、ソフトウェアを通じて仮想的な内覧用物件を作成し、閲覧を可能とするシステムだ。テナント向けにオーナー側の視点から開発したもので、ウェブ上で本物さながらの物件内覧を実現することを目指した。当初は遠距離のため物件を直接内覧するのが困難な顧客へ向けて、写真や図面だけでは伝えきれない物件の本来の魅力が伝えるための手段として有効だと考えていたが、ユーザーから「近距離にある物件にも導入したい」との要望をいただいている。理由は仲介担当者、内覧客双方にメリットがあるためだ。仲介担当者はVR内覧で質問されたことを実際の物件内覧までに事前に調べておくことができる。また、内覧客は後日報告書をまとめるため、内覧中にスマートフォン等で撮影するが、撮影に夢中になり、説明をあまり聞いていない。しかし、自ら撮影しなくても「360 Tour」を後で閲覧すればいいので、仲介営業担当者の説明を集中して聞いてもらえるようになる。また、意思決定者が内覧に来られないケースもあるため、内覧者は物件写真を大量に撮影しなくてはならなかった。しかしVR内覧により写真撮影のわずらわしさや、何度も物件に足を運んでもらう必要がない。報告書による社内の事後展開においても「360 Tour」を使うことで、内覧していない人に対して写真を使うより情報のシェアが容易にできる。結果として、社内に持ち帰った内覧情報の共有・判断が早くなり、決済までに至る時間を大幅に短縮することが可能になるのである。

2つのギャップを埋める3D画像

もう1つのVRサービスは「Virtual 3D/Smart Office」だ。図面に什器情報などを取り込み建物の3D映像を制作。顧客の要望を反映しながらオフィス内装などを簡単にシミュレーションできるシステムだ。例えば「室内の中心にラウンジをつくりたい」、「会議室が3室か、4室あればいいのか比較したい」、「壁紙の色を変えたい」といった要望もすべて3D画像でシミュレーションが可能だ。同システムは2つのギャップを埋める効果がある。1つは3D画像によって図面と実感値のギャップを比較検討することが可能になる。これまで図面上でオフィス内装を確認していたが、完成してみて初めて違和感に気づくことがあった。図面通りに設計されてはいるものの「感覚的に通路幅が広い」といった具合だ。こうしたギャップを解消することが可能になる。もう1つが、開発担当者とクライアントのギャップだ。開発担当者は理解しやすいように説明するが、専門用語もあり、図面のみでは建築知識に乏しいクライアントはついていけない。しかし、3D画像によってプロジェクトを視覚化することで、クライアントに納得してもらいやすくなる。

不動産テックが「意思決定」を促す

JLLの主なサービスラインは、プロパティ/ファシリティマネジメント、不動産取引支援、不動産アドバイザリー、プロジェクト・開発マネジメント等に分類される。これが相互連携し、商業用不動産における様々なニーズに応えるワンストップサービスを提供している。どこの部門がクライアントから依頼を受けても物件情報や市況、評価情報等を集め、実際にプランを策定し、最終的にクライアントに意思決定してもらうことになる。テクノロジーを駆使しても人による意思決定のプロセスは変わることがない。クライアントの「意思決定」を促すために不動産テックは非常に有用だと考えられる。

期待される3つの新技術

VR以外に今後導入されるであろうテクノロジーは「IoT、GIS、AR」が挙げられる。IoT(モノのインターネット)はオフィス内にセンサーを設置し、様々な情報を入手することができる。会議室やコミュニケーションスペースの使用状況等を「見える化」することが可能だ。GIS(地理情報システム)にクライアントの商圏や販売情報等を融合させること出店戦略を検討するためのデータとして利用できる。そしてAR(拡張現実)は実在の空間にオフィス什器などのVR画像を重ねることで、より「直観的」なシミュレーションが行えるようになる。今後これらのテクノロジーがクライアントの意思決定に多大な影響を与えていくことになるだろう。

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