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海外不動産投資を阻む「英語」の壁

価格高騰が続く日本の不動産。少子高齢化による需要の減少も危惧される中、国内投資家は海外に目を向け始めた。高利回りかつリスク分散が可能なアウトバウンド投資を志向する国内投資家は少なくないが、大きな課題の一つとなるのが「英語」だった。

2019年 08月 02日
Books lying on the table in the public library.

機運高まるアウトバウンド投資

JLL日本 リサーチ事業部の調査によると、2019年第1四半期における海外不動産への投資額は13.12億ドルとなり、前年同期比194%増を記録。アウトバウンド投資の機運が急速に高まっている。日本の不動産市場で投資適格物件が枯渇しており、より高い収益が見込める海外へ目を向け始めたためだ。また、少子高齢化による人口減も視野に入る中、日本のみに投資を集中させることに危機感を強めていることが背景にある。世界最大級の機関投資家と呼ばれるGPIF(年金積立金管理運用道立行政法人)をはじめ、ゆうちょ銀行や大手生保等の国内機関投資家がアウトバウンド投資を開始している。

低品質の翻訳では投資判断できない

一方、アウトバウンド投資を行う上で、入り口の話でありながら大きな課題となっているのが「英語」だ。海外の不動産・ファンドに投資する場合、不動産鑑定評価書や目論見書はほぼ英語表記となるが、専門用語が多く、翻訳会社に和訳を依頼しても満足いく内容とは程遠いといったケースが少なくないという。ある日本の投資顧問会社によると「例えば日本の機関投資家は海外不動産ファンドへの投資を検討する際に日本語訳を求めることが多いが、専門用語が多く内容が理解されぬままでなされた翻訳は意味不明であることが少なくない。200ページ以上に及ぶ目論見書等の翻訳はコストが高くつくにもかかわらず、自分たちで修正することもしばしば」とため息をつく。

また、ある日系の機関投資家は「不動産投資をする際、提示された不動産鑑定評価書が本当に正しいのか、別の不動産鑑定会社のセカンドオピニオンが必要不可欠」と述べ、海外不動産への投資についても同様の手続きが必要になる。しかし、日本の不動産鑑定会社の多くは英語や現地の鑑定基準に精通しておらず、海外で作成された鑑定評価書への対応に「不満がある」と嘆き節だ。

要約・翻訳・セカンドオピニオンまで対応

こうした状況を受けて、JLL森井鑑定は2019年1月から英文資料・評価書に対して要約等のサービスの提供を開始した。同社のもとには日系投資家からの依頼で、JLLの海外支部が作成した鑑定評価書の要約や翻訳を依頼されることも多く、潜在的な需要があると判断した。JLL森井鑑定 業務開発部長 湯浅 力は「日本の金融機関が海外不動産を担保に融資している事例も多い。機関投資家から個人富裕層、金融機関まで幅広いニーズに対応したい」と力を込める。

サービス内容は依頼者の要望に合わせて「要約」、「翻訳/抄訳」、「セカンドオピニオン」の3つを組み合わせて柔軟に提供する。目論見書のサマリーの翻訳のみを希望する投資家がいる半面、リスク要因の詳細な記述部分の要約を希望する場合もあり、それぞれ投資の判断に必要な材料が異なるためだ。「翻訳はできても、内容が完全に理解できない限り要約はできない」と湯浅は言う。無論、不動産鑑定会社として現地の売主が用意した英語の不動産鑑定評価書に対して、日本の不動産鑑定会社によるセカンドオピニオンを作成・提供といったニーズにも対応する。

湯浅は「不動産への直接投資やセパレートアカウント型の不動産ファンドへの投資に係る評価であれば不動産鑑定会社の業務範疇に入るが、複雑な構造の不動産ファンドやその運用会社を評価するには別のスキルを要する」と指摘。一方、JLL森井鑑定は不動産鑑定士のみならず、国内外の金融機関や投資顧問会社でファンド等の金融商品に投資・分析に携わった金融のプロが在籍しており、本サービスの責任者である湯浅もその1人。金商法上の投資助言業務としてファンドのデュ-ディリジェンスを提供する「ファンド分析レポート」サービスと連動し、一気通貫で投資活動を支援する。

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