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拡大を続ける先進大型物流施設の賃貸需要

デベロッパーが開発した賃貸タイプの先進大型物流施設の需要が急拡大している。背景には人手不足による低スペック物流倉庫のコスト増と、物流用地の価格高騰による一般事業会社による自社開発の減少にある。この流れは今後も継続していきそうだ。

2019年 04月 02日

2000年ころから拡大し始めた先進大型物流マーケット

日本における先進大型賃貸物流施設に対する需要は、物流業務のアウトソース、企業による不動産のオフバランス、複数の築古倉庫からの集約移転によって2000年ごろから拡大し始め、2000年代半ばからのEコマースによる劇的な需要拡大を経て、現在は人手不足と自動化設備導入を背景とした大型施設への需要の拡大、土地価格上昇による賃貸需要の増加というステージに入っている。

日本の失業率は2017年から2%台を推移しており、トラックドライバー不足や物流施設における倉庫内作業員の不足は、今や物流業界における最重要課題となっている。トラックバースの少ない物流施設では、トラックの待ち時間や入出庫時間の増加からドライバーコスト上昇につながり、建物スペックが低い倉庫では作業の自動化が進まず、作業員のコスト増加につながる。そこで、複数拠点を大型物流施設へ集約したり、先進の倉庫への移転とともに作業の自動化を進めたりすることで、少ないトラックドライバーや倉庫内作業員で対応しようとする企業は増えている。その結果、近年大型化が更に進んでいる先進物流施設に対する需要はますます拡大している。東京圏では2012年時点のストックにおける床面積10,000㎡以上の大型倉庫の割合は50%にとどまっていたが、2018年の新規供給床の80%が大型倉庫であった。

デベロッパーの参入は10倍超

また、物流施設に対する需要拡大の中で、物流施設開発に参入するプレイヤーの数も増加を続けている。2000年代初頭は外資系デベロッパー数社程度だったが、日系商社や国内大手不動産デベロッパーの参入が相次ぎ、いまや物流施設の開発プレイヤーの数は2000年代初頭と比較すると10倍以上に増加している。

物流施設デベロッパーの増加による物流用地の仕入れ競争が激しくなる中で、土地価格は従来のような工場や平屋建て倉庫の利用を前提とした「値ごろ」な価格ではなく、多層階の大型物流施設を前提とした高価格の相場が形成されるようになり、工業用地の価格上昇につながった。また、物流不動産の開発に専念しているデベロッパーと比較すると、メーカーなどの一般事業会社は経営戦略上の意思決定に時間を要するため、従来は自社開発を行っていた企業も価格競争力および意思決定のスピードによる劣後から、倉庫開発のための土地を購入することが困難になっている。そのため新たな物流施設を求める場合、必然的に自社開発ではなく、デベロッパーが開発した物流施設を賃借することとなる。実際に、東京圏において供給された物流施設における賃貸倉庫の割合は、2012年時点のストックでは50%であったのが、2018年の新規供給では70%を超えており、自社開発の割合は減少している。

物流施設のストックのうち2000年以前に作られた物流施設がおよそ60%を締めており、ますます厳しくなると予想されているドライバー不足などの人手不足を踏まえると、築年が経過した物流施設からの移転需要が減少するとは考えにくい。物流デベロッパーがこれほど増えた状況では、土地価格の上昇もしばらく続くと考えられ、自社倉庫の開発は難しい状況が続くと考えられる。そうなると先進大型賃貸物流施設に対する需要拡大は、まだまだ勢いがとまりそうにない。

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