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新型コロナウイルスの影響で不動産バーチャルツアーが主流に? 

新型コロナウイルス感染拡大によって現地訪問が制限されるなか、物件のバーチャルツアーは投資家やテナントに一つの解決策を提示している。

2020年 06月 01日
投資・賃貸借の意思決定を支援

バーチャルツアーは新型コロナウイルス感染拡大以前に登場したテクノロジーであるが、ロックダウン時において急速に勢いを増し、商業用不動産取引プロセスにおける柱となる可能性がある。

現在リモートワークを余儀なくされている多くの不動産専門家にとって、ドローンやGoogleストリートビューの映像、幅広く採用されているMatterport 3Dといったバーチャル内覧ツールは、投資および賃貸借契約におけるプロセスの初期段階に利用されている。

JLL英国 セントラルロンドンオフィス・マーケットチーム データ・ディレクター エドワード・パリ・ジョーンズは「新型コロナウイルスの影響でますます移動が制限されるなか、物件のバーチャルツアーへの関心は飛躍的に高まっている。非常に早い時期にアジア主要都市におけるロックダウンが追い風となったようで、短期間のうちにバーチャルソリューションに注目が集まっている」と説明する。

新型コロナウイルス流行以前の生活

新型コロナウイルスが蔓延する前、バーチャルツアーは商業用のテナントや投資家の間で限定的に利用されてはいたものの、賃貸住宅セクターが主な領域だった。JLLイノベーション部門 ディレクター アレックス・エッズは「バーチャルツアーは、賃借スペースを選定する目的で海外の投資家や企業に利用されていた。ただし、ほとんどの顧客は物件を直接現地で視察したいと考えていた」と振り返るが、わずか数カ月のうちにその動向は大きく変化した。

「売主のなかには過剰なほど慎重になり、仲介担当者を信頼しバーチャルツアーを避けようとする者もいた。おそらく、直接内覧する意思のない買主は真剣味がないと疑ったのだろう。業界が必要に迫られて順応しているなか、もはやそうしたケースはごく少数だ」(パリ・ジョーンズ)

次のレベルのバーチャルツアーへ

バーチャルツアーもゲーム業界を起源としており、ますます高度化するテレビゲームと同じように進化を遂げている。例えば、住宅セクターでは3DやVRヘッドセットの利用が普及し、臨場感あふれる内部空間を見せたり、周辺エリアを可視化したりしている。

エッズによると「次のステップでは、既存のツールが事実やデータをバーチャル・ウォークスルー内でいかに取り入れるかを調査する。新しいツールが次々と誕生し、さらに技術が進めば、不動産の意思決定に要する時間の短縮にもその技術が生かされていくだろう。3カ月-6カ月の標準的なプロセスも短縮される可能性がある」と指摘する。

例えば、JLLのNXTスイートでは、機械学習ツールとデータ可視化技術、実際の映像を利用して、投資家やテナントが特定の基準を満たす物件をリアルタイムで特定し、その情報をさらに詳しく得られるシステムが存在する。これにより取引プロセスを早めることができ、また、現地訪問よりも負担が少ない。パリでJLL NXTサポートパートナー・リードを務めるサンドリーヌ・ガロファロは「市場を活性化し、戦略的な意思決定において顧客を支援し、透明性を改善するのに役立つ革新的な技術だ」と述べている。

他の技術を利用したツールが、投資家やテナントにさらに詳しく物件を紹介する。顔認証ソフトウェアと同じように機能するLIDARなどのツールは、物件の調査や査定時にますます広く利用されるだろう。

不動産事業の新たな必須アイテムに?

ただし、高度な技術には同時に、基盤となる確実なコネクティビティが必要となる。間もなく開始される5Gネットワークが役に立つであろう。

ガロファロは「バーチャルツアーはデータ集約型であり、複数の参加者が必要だ。すなわち、一般にはデジタルにおける高度な技術サポートが求められる。この数週間のうちに多くの人が体験したように、同時多発的にオンライン状態になる場合は特に重要だ」と説明する。

依然として移動が制限される限りバーチャルツアーは不可欠だ。その一方で、わずか数カ月のうちにその価値を十分証明し、意思決定プロセスのなかで安定的な立場を築き上げたともいえるだろう。

パリ・ジョーンズは「現在のバーチャルツアー需要拡大の成果は、最終決定のためには常に内覧が必要であるにせよ、多くの候補物件の中から意思決定の際の候補を絞ることが可能になった点だ」と語る。投資家は完全に手続きを停止したわけではなく、迅速に適応しようとしているともいえるだろう。

とはいえ、現地訪問の必要性は依然として継続するだろう。エッズは「投資家もテナントも、直接物件を見ることなく大きな取引を締結することは決してないためだ。しかし、不動産事業のデジタル化が進み、新たなテクノロジーにもっと親しみを感じるようになるにつれ、人々はテクノロジーをもっと信用するようになる。従来どおりの物事の進め方は、この先数年で変化していく可能性は決して低くはない」と結論づけた。

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