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Expo Realで注目された欧州不動産市場を賑わす4つの議論

働き方を変える新技術、投資環境を変える経済政策の決定であれ、古いビジネスモデルの新しい見方であれ、現在の欧州の不動産業界はイノベーションに満ち溢れている。

5月 13, 2019

政治的な不確実性が増す欧州

現在欧州の意思決定者の心を悩ませている政治的な不確実性が始まる以前から、この現象は起こっている。

不動産投資を促進する毎年恒例の欧州国際見本市Expo Realは2018年、ドイツ・ミュンヘンで開催された。不動産専門家たちが新たな投資機会を解説したり、経済・政治の見通しを論じたり、マーケットの変化を先取りする方法を検討したりする等、業界の変化の数々が議論された。

JLLEMEA キャピタルマーケット部長 マット・リチャーズは「通貨ヘッジのために、かつてないほど多くの資金が不動産に流れ込んでいる。欧州市場への関心もかつてないほど高まっている。問題は買い手ほど多くの売り手がいないことだ」と指摘する。一方、JLL 中央ロンドン 投資ディレクター ジョン・ウッドガーは「英国では、欧州の機関投資家とアジアの投資家が共に、ブレグジットの議論が進行中にもかかわらず、依然として不動産に惹きつけられている」と述べている。

話題になった4つの議論は次の通りだ。

1.現在の不動産サイクルはいつ終わるか?

現在の好調な不動産サイクルの長さは、10年前にリーマンブラザーズが破綻した日を思い出させるほど長いと業界関係者は頻繁に話題にしている。歴史は必ずしも繰り返すわけではないが、過去の教訓は有益であり、現在、そして将来について決定をするうえでの判断材料となる。JLLドイツ CEO ティモ・チャムラーは「ドイツでは不動産投資家が株式を市場で投げ売りするような明確な傾向はない。不動産市場は引き続き堅調に推移しており、2019年もそれが継続するだろう」と展望する。一方、JLLチェコ共和国 キャピタルマーケット部長兼CEE リード・ディレクター マイク・アトウェルは「欧州の労働市場の堅調さと高い投資需要がどれくらい続くのかが大きな問題だが、今のところ市場に対するポジティブな見方を変えるものはどこにも見あたらない」と指摘する。

2.世界的な金利上昇は、欧州にとって有利に働くのか?

ユーロ圏の金利上昇は、英国や米国とは性質が全く異なる。ゼロ金利の欧州と米国の格差は拡大しており、これはレバレッジを求める投資家に潜在的な機会を提供している。欧州中央銀行は最近、2019年中頃までの金利引き上げ見送ったが、ユーロ圏の金利は最終的には米国と英国で起こっているシナリオを辿ることになるだろう。

JLLドイツ オフィス投資部長 マーカス・ルトゲリングは「現在のサイクルで欧州金利がどこでピークを迎えるか予測するのは難しいが、前のサイクルで付けたピーク水準には到達しないだろう。経済が成長している時に金利は上昇するものだ」と述べている。しかし、最近数カ月で米国連邦準備制度理事会が講じた措置はドイツの不動産投資にプラスの影響を与えている。

3.フレキシブルスペースのビジネス機会は?

フレキシブルスペースがオフィス市場を変革している。一部の企業や家主は迅速に対応し、コミュニティ感覚を高め、コラボレーションを促進するような質の高いアメニティ豊かな職場環境を作り出している。その他の企業は、それが本当に画期的な傾向か、ただの短期現象に過ぎないのかを見極めるべく傍観している。

一方、労働力がより流動的になり、技術が進歩し、企業が空間の使い方を再考する中で、フレキシブルスペースは欧州で急速に成長しており、スペースをリースする企業、ビルを開発するデベロッパー、スペースを設計する家主、適切なスペースを選択する投資家に大きな影響を与えている。JLLEMEA コーポレートリサーチ部長 トム・キャロルは「新たなコワーキングのプレイヤーと既存のプレイヤーの多様な組み合わせにより、競争が激化している。我々は広範にわたるモデルを目にしており、立地や占有者の要件に応じてモデルが変化している」と述べている。そして企業のポートフォリオの中にはフレキシブルスペースには適していないものも含まれているが、同時に実験してみたいという耐え難い欲求も見え隠れしている。

4.ドイツの住宅セクターは優良な新興投資先といえるか?

不動産全体の変化が加速する中で、賃貸住宅からの安定した不動産所得は、ますます魅力的になっている。これまでとは違って、Expo Realでは住宅セクターに関する多くの議論が行われた。主催国ドイツが注目を集め、他国の代表者も熱心に意見を述べていた。JLLドイツ 住宅投資部長 コンスタンチン・コルトマンによると「このセクターは専門化が進んでいるが、投資家が参入する方法は様々あり、合弁事業は既に人気のルートとなっている」という。ドイツ不動産のすべてのセクターで投資機会への需要が高いことから、ドイツ住宅への機関投資家の意欲は高まっている。このセクターは成長しており、当面需要が高いことが見込まれている。

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