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外国人投資家が日本の「リビング」セクターに注目

外国人投資家が日本の「リビング」セクターに注目している。いわゆる「レジ物件」ではない。高齢化やライフスタイルの変化に牽引され、新たなニーズが喚起されつつあるニッチな住宅市場である。

2019年 07月 30日

レジよりも高い利回りが見込めるニッチ住宅市場

2019年6月、アバディーン・スタンダード・インベストメンツ・アジアと三井住友信託銀行は東京と大阪を中心とした多世帯住宅(マルチファミリー)、シニアハウジング、学生寮、社員寮に投資する合弁事業を設立した。

多世帯住宅は日本で急速に不動産セクターとしての地位を固めており、ここ数カ月の間にUBSやNuveen等のグループが投資ビークルを立ち上げているが、シニアハウジングや学生寮、コ・リビング施設もこれに追随する。

JLL日本 キャピタルマーケット事業部 リサーチ ディレクター 内藤 康二は「利回り面でこれら3つのセクターは通常の賃貸住宅よりも50-100bps高い利回りを提供できるため、長期的に投資家の関心が高まるだろう」と予測する。

日本が世界屈指の少子高齢化社会であることは広く知られており、65歳以上の人口は3,500万人を超える。高齢者人口の増加がシニアハウジングの需要を牽引しており、独立した生活を営むリタイア世帯向けの住宅ではなく、医療・養護機能付きの施設が主体となっている。

アバディーンと三井住友信託銀行の合弁事業と同様、シンガポールのパークウェイ・グループも老人ホームに投資する不動産投資信託のスポンサーとなっており、今年2月にアバディーンに買収されたオライオン・パートナーズも同セクターで投資運用を行っている。

JLLアジア・パシフィック キャピタルマーケット ヘッド ニック・ウィルソンは「高齢者養護施設、とりわけ76歳以上を対象とした施設がブームとなっている。自治体の運営施設の供給量は減少しており、民間業者に施設開発を促すためインセンティブを与えている。公営施設の入居待機期間の長さから、これらへの需要が高まっている状況だ」と指摘する。

若者と高齢者がターゲット

一方、高齢化と人口減少が進む日本で学生寮に投資することに疑問を感じるかもしれないが、日本は国際競争力を高めるため、外国人留学生の誘致に力を入れている。毎年300,000人の留学生誘致を目指しており、2019年の実績は目標をわずかに下回る298,980人となった。

伊藤忠商事やみずほフィナンシャル・グループが学生寮の運営事業を開始し、同セクターに特化した国際的な運営事業者であるGSAもスターアジアグループとパートナーシップを組んで市場参入を果たした。内藤は「日本の既存の学生寮は築年・運営モデルが古く、外国人留学生には受け入れられない。しかし留学生の増加により高機能の学生寮に対する需要拡大しており、投資家にとって追い風となっている」と説明する。

近代的な学生寮専門施設は日本人学生にとっても魅力的に映るだろう。ウィルソンは「日本で民間の賃貸住宅を借りる場合、通常3-6カ月分の家賃相当額の費用を準備しなければならず、コスト負担が大きい。なおかつ連帯保証人が必要だ。一方、外国人留学生をターゲットにした最先端の学生寮は多額の敷金・礼金の負担もなく、かつ家具や光熱費もカバーするため、即入居可能だ。さらには外国人留学生との国際交流も魅力となる」と述べている。

また土地所有者が小規模な住宅の賃借人に共用サービスや施設を提供するコ・リビング施設は、日本ではまだ黎明期であり、内藤によれば「グローバルな市場に後れをとっている」という。しかし、外国人向け賃貸マンションから市場に参入、その後コ・リビング施設を展開するサクラハウスやバンブーハウス等、国内のコ・リビングブランドは複数存在している。

コ・リビングは日本では他の先進国よりも普及が遅れているが、シェアリングエコノミーの台頭により、若者世代を中心に新しいライフスタイルとして定着しつつある。コ・リビングは敷金・礼金も不要だ。

投資家にとっての魅力

3 つのリビング・セクターに共通した差別要因は、その運営要件だ。

高齢者養護施設は専門的なスタッフと管理が必要であり、学生寮も同様である。最も成功しているコ・リビングブランドは、複数の物件で同一のサービスを提供する。しかし、こうした事業の運営要素は不動産投資家にとってマイナス要因とは限らない。内藤は「これらのセクターの多くの物件は運営会社が所有しているため、運営会社との関係構築が投資物件のソーシングとしては最善の方法だろう」との見解を示す。またウィルソンは「学生寮や高齢者養護施設では、通常長期の賃貸契約が結ばれる。高齢者養護施設のリース期間は20年以上に及ぶこともあるため、長期的投資の視点からはより多くの利点が認められる」と強調する。    

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