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不動産投資家や企業を惹きつける福岡の都市競争力

「中小規模国の首都・第一都市」に匹敵する経済・人口規模を有するとともに秀逸な都市的資産により高い都市競争力を持つ福岡。全国屈指の人口増加数・率を誇り、企業誘致策も奏功。住宅やオフィス等の不動産需要も拡大している。国際的な都市間競争が激化する中、福岡が優位性を紐解いた。

2021年 06月 23日
国際的な都市間競争が激化

国の発展に欠かせなくなった都市の力。世界の都市が資本・企業・人材を誘致するべく、都市の魅力づくりにしのぎを削る。国際的な都市間競争が激化している。

都市の魅力を計る指標は経済規模や人口のみならず、将来に向けた成長戦略、社会的変化に伴った独自に培った都市的資産(特長)等、多岐にわたる。そして都市のプレゼンスは不動産市場の盛衰にも反映され、賃貸・売買問わず、すべての不動産取引活性化の鍵を握っている。

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世界に通じる都市としての実力を備える福岡

福岡は中小規模の国の首都もしくは第一都市レベルの規模を有しており、世界に通じる都市・不動産市場としての実力を十分に備えている

そうした中、日本の都市の中でも近年注目が集まっているのが福岡だ。JLLでは世界規模で都市分析調査を実施しており、2019年度(2020年度はコロナ禍の影響で未調査)における商業用不動産のモメンタム(勢い)において福岡は世界4位となった。JLL日本 リサーチ事業部長 赤城 威志は「都市の魅力が不動産市場をも活性化させている証だ」と指摘する。

JLLの都市分析調査によると、福岡は世界的に見ると中規模の都市に位置づけられる。下記の表の通り、福岡のGDPはスイスの首都であるチューリッヒ、人口はオランダの首都であるアムステルダム、ドイツの経済都市のフランクフルト等に匹敵する。イノベーションや技術革新の源泉となる特許出願件数はブラジル最大の都市のサンパウロ、ベルギーの首都であるブリュッセルと同水準だ。そしてグローバル企業が該当するForbus2000企業本社数ではポルトガルの首都であるリスボン、広島等と同レベルにある。これらの結果から、福岡は中小規模の国の首都もしくは第一都市レベルの規模を有しており、世界に通じる都市・不動産市場としての実力を十分に備えているといえるだろう。

 

主要経済指標から見える福岡の位置づけ
GDP 人口 特許出願件数 航空旅客数 Forbus2000企業本社数
福岡 161位 188位 85位 94位 104位
福岡の順位周辺にランキングされている都市 ・釜山(152位)
・ブリスベン(154位)
・ミルウォーキー(162位)
・チューリッヒ(165位)
・アムステルダム(178位)
・フランクフルト(190位)
・台北(191位)
・バンクーバー(192位)
・モントリオール(83位)
・サンパウロ(84位)
・ブリュッセル(88位)
・フランクフルト(93位)
・バンクーバー(86位)
・ブリュッセル(87位)
・札幌(96位)
・ブエノスアイレス(100位)
・西安(104位)
・広島(104位)
・高雄(104位)
・リスボン(104位)

出所:Oxford Economics, OECD, ACI, Forbes, JLL 2021 ※福岡:福岡市周辺部を含む都市圏を指す

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人口増加数・率1位を実現した住みやすい環境

ヒト・モノ・カネを惹きつける都市の魅力として「QOL(生活の質)」が重視されつつある。この点についても福岡を「住みやすい場所」と回答する国内の各種調査結果があり、さらに、英国のビジネス向け雑誌「MONOCLE」の「世界の住みよい都市ランキング」では、福岡は世界22位と上位に位置する等、優良な住環境は世界的にも評価されている。

福岡市によると、政令指定都市の中で福岡市の人口増加数・率ともに1位で、2035年まで増加傾向が続くという。10-20代の若者比率も1位だ。福岡の不動産市場に詳しいJLL日本 福岡支社 支社長 兼 キャピタルマーケット事業部 福岡代表 山﨑 健二は「人口増加は潜在的な住宅需要に繋がり、購買力も高まる。加えてオフィスビルや賃貸マンションが増えることで固定資産税収も増加し、自治体に活力がある」と強調する。

国内外へ至便なビジネス環境

優良なビジネス環境を有する福岡の特長として国内外への優れたアクセス性が挙げられる。アジア大陸に近い立地性から「アジアへのゲートウェイ都市」としての認識が広がり、福岡空港は国際線の直行便も豊富。九州新幹線が整備され、高速バスも充実している。全国7大都市圏において通勤・通学時間が最も短いとのデータもある。

これらを背景に、福岡市はITエンジニアの集積を目指す街づくりを推進。その成果として、大手監査法人のデロイトトーマツグループは福岡市に日本国内初のデジタル人材育成・ソフトウェア開発地域拠点を2021年6月1日に設立した他、ZOZOテクノロジーズやGMOペイメントゲートウェイなどのクリエイティブ産業、アクセンチュア等の外資系コンサルの誘致に成功している。IT人材・企業が集積することでイノベーション創発を促し、都市力向上に寄与する。加えて、山﨑によると「福岡市は国際金融都市を標榜しており、国内外の金融関連企業3社の誘致が決定している」といい、老朽化したオフィス街を蘇らせる「天神ビッグバン」にも注目が集まっている。

赤城は「都市インフラ等のハード面と、都市生活におけるソフト面の優良性を兼ね備え、高い人口増加率・若年人口割合、観光客数の増加、スタートアップ企業を支援する官民両面での手厚い支援体制等、将来にわたる都市競争力は非常に高い」との考えを示している。

需要が底堅い福岡の不動産市場

都市の魅力が不動産市場を牽引するとは前述した通りだが、では福岡の不動産市場はどのように推移しているのだろうか。オフィス賃料から紐解いてみた。

オフィス賃料は調査対象都市86都市中で26位、不動産投資額は350都市中で62位となる。前述した一般経済指標を基にした福岡の順位よりも上位に位置することがわかる。2020年第3四半期末時点では、福岡のトップレントは月額坪当たり26,000円程度。東京の5割、大阪や名古屋の7-8割程度の水準となり、賃料負担の値ごろ感はビジネス拠点としての魅力となっている。また、JLLが四半期毎に発表しているオフィス賃料動向を示す「プロパティクロック」では、コロナ禍で東京、大阪といった日本国内のオフィスエリアの賃料水準は軒並み下落に転じたものの、2021年第1四半期末時点の福岡の賃料水準はピーク時を維持しており、需要の底堅さを示している。

一方、福岡の投資額は過去3年間で2,600億円となり、同規模ではドバイ等が挙げられる。赤城は「都市の規模・魅力で考えると福岡の不動産投資市場はまだ流動性が低、もっと拡大していい」としており、そのポテンシャルを十分に発揮できているとは言い難い。ただし、日本国内のみで見ると、福岡の投資額は東京、大阪に次ぐ3番手だ。

「福岡の都市としての優位性のみならず、天神ビッグバン等の大型プロジェクトに支えられた福岡は不動産市場として将来有望であり、国内外の投資家は魅力的に捉えている」(赤城)

福岡の都市力をさらに向上させる8つの施策

一方、都市間競争には終わりはない。世界のあらゆる都市が継続して魅力向上に努める中、福岡のプレゼンスをさらに高めるため、山﨑は次のような政策が必要との認識を示している。

  1.  欧米への直行便

  2. ハイエンドなビジネスジェットの専用ターミナル

  3. 都市の品格を左右するラグジュアリーなインターナショナルホテル開発

  4. GAFA等のグローバル企業を誘致するための外国語対応の小学校・病院の整備

  5. 気軽に立ち寄れるマーケット・土曜市

  6.  福岡市立大学の創設と授業英語化

  7.  ベジタリアン・ハラール対応のレストラン

  8. 国際的なイベントの継続した誘致活動

これらの施策によって福岡の魅力はこれまで以上に向上するだろう。東京圏、関西圏とは異なる第三極の国際都市圏が誕生するか、注視したい。

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