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米国企業は賃貸借期間を短縮し柔軟なオフィス戦略を模索する

新型コロナウイルス感染拡大によって先が見通せない中、オフィス賃貸借期間の平均値が15%低下するなど、米国オフィス賃貸市場では柔軟なオフィス戦略を模索する企業が増えている。

2020年 08月 17日

高層ビルが林立する米国のオフィスエリア(画像はイメージ)

コロナ下で賃貸借期間が15%短縮

国によってオフィス賃貸借期間の平均値は大きく異なる。例えば香港のオフィス賃貸借契約の平均期間は約3年、英国では約6年となる。この平均期間はほぼ増減が見られなかったが、新型コロナをきっかけに異変が見られるようになったのが米国だ。米国では2020年初頭から5月末までの間、平均の賃貸借期間が約7年となり、15%も短縮した。

JLLグローバル・フレックス・スペース・リード ベン・ムンは「新型コロナによって先が見通せない世の中となったことで、オフィスを賃借するテナント企業の姿勢はより慎重になり、賃貸借期間を短縮し、柔軟に対応できる体制づくりに舵を切った。このトレンドはさらに拡大するだろう」との見解を示している。

新型コロナウイルス感染拡大によって経済への圧力が高まる中で、企業は様々な不確実要素への対応能力の強化に努め、近い将来より柔軟に対応できるように、オフィス賃貸借契約のオプションを幅広く求めていくようになっている。

これまでのところ、賃貸借期間を短縮しているのは契約満期を向かえた企業が契約更新を行うタイミングが多い。企業を取り巻く環境がコロナ禍によって不安定になっている中で新たなオフィススペースを探すよりも、既存の賃貸借契約を更新・延長することが企業側にとってリスクが低い選択肢となりつつあるようだ。JLLのデータによれば新型コロナウイルス感染拡大以前では、賃貸借契約に占める「更新」の割合が29%だったが、現在では51%にまで拡大しているという。

在宅勤務やサテライトオフィスを活用

新型コロナによる経済への影響がどこまで深刻化するかが見通せないことで、テナント企業はより柔軟かつ迅速なオフィス戦略を模索している。現状では、在宅勤務を拡大し、新規の長期賃貸契約を見送るなど、最も無難と思われる方法で対処している企業が多い。

新型コロナ拡大前は柔軟なオフィス戦略を取っていなかった企業の多くが、将来には柔軟な方針に転じることで、オフィススペースの在庫(ポートフォリオ)をより流動的に維持することを目指す可能性も高い。賃貸借期間の短期化に加えて、外部貸し共用オフィス(コワーキングスペースやサービスオフィス)の利用、郊外地でのサテライトオフィスの開設、あるいは一部従業員の在宅勤務を恒久化するなどのケースも増えるだろう。

JLL米国 オフィスリサーチ ディレクター スコット・ホーマは「米国オフィス賃貸市場にとっては、このようなトレンドが逆風となるのは確かだが、オフィスを借りる企業サイドが俊敏な対応を求めていることを理解し、それに適応できるオーナーこそがWithコロナ時代でもうまく生き抜いていけるだろう」は予想する。

オフィスの在り方が大きく変化

一方、企業側は財務的および戦略的な目的に加えて、生産性、イノベーション、コラボレーション、人員の採用や従業員の長期雇用促進などの要素も考慮しつつ、オフィスの在り方を検討していかなくてはならない。ベン・ムンは「賃貸オフィスを最大限に活用したいと考えている企業にとっては、従来のオフィススペースとフレキシブルなオフィスを組み合わせていくことがさらに重要になる」と締めくくった。

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