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東京都心5区におけるフレキシブル・オフィスの現況-「コアとフレックス」というオフィス戦略

コロナ禍を受けて柔軟な働き方を実践できるフレキシブル・オフィスが注目を集めている。大手企業の需要拡大に伴い、新規供給の更なる増加も予想される。

2021年 08月 23日
コロナ禍を受けて大手企業がフレキシブル・オフィスに着目

東京都心5区におけるフレキシブル・オフィス市場は、新型コロナ感染拡大にもかかわらず、市場の拡大を続けている。

コロナ感染が拡大していた2020年上期においては、同市場における成約状況が一時停滞したものの、2021年6月時点の足元では同市場の賃貸借取引は再び活発化して来ている。

その主たる理由は、以前と比べて多くの企業が在宅勤務をはじめとするテレワークを実施するようになっていることに加え、従業員全体の10-30%の人員しか定期的にオフィスに通勤しなくなっていることから、企業において従来のオフィスに対する考え方の見直しや対策が必要になったためである。

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例えば、2020年4月の緊急事態宣言直後に、急成長しているQR・バーコード決済会社PayPayは、世界最大級のコワーキング・オペレーターであるWeWorkに新しい本社(席数約1,000)を開設した。同社は、フレキシブルかつ従業員同士のコラボレーションが生まれるスペースを必要とし、コミュニティ重視のコワーキング・オフィスに本社を新しく開設することを選んだのである。

また、国内大手の某メディア会社はサービス・オフィス事業者であるリージャスが運営するコワーキングブランドSpacesでオフィススペースを契約し、某社の地方チームを一箇所に集約した。この動きには、某社における社内コミュニケーションの向上が狙いとしてある。

そして、日本電信電話株式会社(NTT)の動向も注目を集めた。同社は、2021年3月に発出された3度目の緊急事態宣言の直後に30万人のグローバルの従業員のためにIWGとグローバル契約を決めた。導入の背景には、従業員が自宅に近いワークスペースで働くことにより、生産性が向上することへの期待がある。IWGとの契約は3年であり、コロナ収束以降も継続される予定である。

運営事業者のサービスも進化

このように多くの企業がフレキシブル・オフィスに着目し、活用するようになるにつれてサービス提供側であるフレキシブル・オフィス事業者のサービスもまた進化してきている。

例えば、1カ所のみならず、事業者が運営している拠点の全てを利用できる「All Access(オール・アクセス)」プランの提供や、WeWorkが提供する「Connect by WeWork」などにみられるように、企業と企業を従来にはなかった形で積極的につなげるオンラインビジネス・マッチングサービスなどが挙げられる。これら新しい機能やプランの提供によって、フレキシブル事業者はオフィスの付加価値をより一層高めてきている。

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需要拡大に伴い新規供給が増加、地方都市にも波及?

また、企業による「コア+フレックス」という、従来型のオフィスとフレキシブル・オフィスの両方が使用可能なハイブリッド型オフィス戦略の導入は、今後一段と増加することが期待されており、東京都心5区における同市場は拡大するとみられている。

足元の状況として、2021年第1四半期時点においては、フレキシブル・オフィスが東京5区のAグレードオフィスのストック(総貸床面積)に占める割合が約2%に留まる一方、 2021年第3四半期は、WeWork、Spaces、Business-Airport、Human First Time(H1T)が更に新規拠点を開設する予定であることを踏まえると、東京都心5区におけるフレキシブル・オフィス市場は拡大し続ける見込みである。

コア(Aグレード) オフィス対フレキシブル・オフィスの比較表
コア(Aグレードオフィス) フレキシブル・オフィス※1
特徴 普通借、もしくは定期借 共有オフィス、最短で1カ月から契約可
ロケーション 東京都心5区 東京都心5区
1席当たりの平均面積 8-12m2 3-4m2+共有ラウンジ+会議室
平均月額賃料 38,351円/坪 30,303円/坪※2
新型コロナウイルス感染による主な傾向 賃料と空室の影響は比較的限定 簡単に設立することが可能

※1:Aグレードオフィスに入居しているフレキシブル・オフィス拠点 ※2:1席当たり10万円 出所:JLL日本

今後数年間、東京都心部においては新規事業者と既存事業者の双方の活動が活発化することが見込まれ、このトレンドが全国的に広がり、フレキシブル・オフィス市場が地方都市にも一段と波及することが期待される。

執筆者:JLL日本 リサーチ事業部 アナリスト 中丸 友世

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