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新型コロナウイルス感染拡大の中でCREに希望の光

世界中を混乱に陥れた新型コロナウイルスの教訓から何を学ぶべきか。CRE(企業不動産)戦略にも多大な影響を及ぼすことが予想され、中でもワークプレイスの在り方が再定義されそうだ。

2020年 04月 21日
長期化を余儀なくされるテレワーク

新型コロナウイルス対策の直接的な結果として、従業員が生産性を維持して働けるように企業は長期的にテレワーク導入を進めざるを得なくなっている。新型コロナウイルスの世界的感染拡大が将来的にオフィスビルに与える影響を考えると、長期化するかもしれないトレンドや現在とられている医療措置の多くが未来のワークライフの常識となる可能性が高いことに気づくだろう。

どのような変化が考えられるか

フレキシブルスペースはポートフォリオに定着し、より大きな部分を構成する

テレワークの大規模導入は働き方が見直される変節点とみるべきだろう。テレワークが雇用主により受け入れられるようになるだけではなく、とりわけラップトップパソコンとインターネット接続、文書への安全なリモートアクセスがあれば大半の業務を遂行できる業界ではそれが主流化することも考えられる。

オフィスポートフォリオに占めるフレキシブルスペース(柔軟に使える共用スペース)の割合にも当然ながら影響する。今後、企業がフレキシブルワークやテレワークの方針を積極的に受け入れるようになれば、フレキシブルスペースに対する需要にプラスの影響が及ぶだろう。フレキシブルワーク以外にも、企業は互いに独立して営業する複数のより小さな拠点(サテライトオフィス)の広範なネットワークを検討すると思われる。

●ウェルネス設備の整ったビルの人気が高まる

ビルとテナントの健康には直接的な関係があることを示す調査結果が、ビル所有者とテナントの両方によるオフィスのウェルネス設備への認識を高めさせた。従業員の健康を促進する職場設計にも拍車がかかるだろう。

地球に優しいグリーンビルだけではなく、いずれ人にも優しい「ヘルシー」なワークプレイスの注目度はこれまで以上に高まるはずだ。従業員の福利を改善しつつ生産性も高める室内の空気品質や換気システム、その他の室内環境要因に関する要素が新たな標準となるだろう。アジア各地の都市計画担当者が、すでにテナントの身体的、精神的、および感情的な健康を促進する、より「グリーン」で「ヘルシー」なオフィススペースを建築環境認証に取り入れており、このトレンドはオフィススペース内においてもますます人気が高まる見通しだ。この結果、LEED認証やWELL認証を取得する新築ビルが増加すると思われる。

●ファシリティマネジメントの重要性が高まる

ファシリティマネジメントの専門家は自然に「全天候型」のチームとなるだろう。そして、従業員が一夜のうちにビルを閉鎖すると同時に事業の中断を最小限に抑え、可能な限り事業を継続させる態勢を整えることになる。衛生面での責任拡大により、とりわけトイレやカフェ、会議室などの共用施設について消毒がより定期的に実施されるようになるだろう。ウイルスの感染拡大を抑制するための施設の設計や管理が戦略レベルで重要な責務となる。明確で迅速な意思決定や徹底的かつ一貫性のあるコミュニケーションも鍵となる。

●事業継続計画が戦略的優先事項となる

事業継続を確保することに責任を負う機能横断的な対策チームがワークプレイス戦略の常設要素となるだろう。当然ながら、積極的に事業継続計画を策定し、緊急事態発生時のみならず、あらゆる事態に対応してこれを発動させられるタスクフォースが不可欠となる。その最優先事項は、最も重要な事業機能と従業員のバックアップを維持し、事業や顧客に対する影響を最低限、もしくはゼロに抑えることである。

「働き方の未来」に向けて進化

新型コロナウイルスが世界的に感染拡大する中で多くの人がテレワークを行っており、中には慣れ親しんだワークプレイスの快適さを懐かしむ向きもあるだろう。しかし、そうする間にも世界は変化しており、ワークプレイスについても同じことがいえる。ワークプレイスはその影響を受け、「働き方の未来」に向けて進化のスピードを加速させていくだろう。

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