解説

よくあるワークプレイスの誤解:座席は人ではない

もはや座席が即従業員を意味しないオフィス・プランニングの世界では、比率が問題となる。ワークプレイスの高密度化とデスクシェアへのシフトが同時に発生していることは、計画作成において、「従業員」と「座席」は同義という数十年来の解釈を揺るがせている。

2017年 06月 27日

オフィス・プランニングや設計、建設に関与したことのある人は間違いなく、不動産業界で最も一般的な計測方法であるワークプレイス密度に遭遇したことがあるだろう。一見簡単そうに見える計測方法である密度は、典型的には一人当たりに割り当てられる平方フィート単位のスペースとして表現され(「平方フィート/人」)、一般的にオフィスの総面積に対するワークプレイス内の座席数(または予定座席数)を示すために使用される。

一人当たりに割り当てられた平方フィート数とは、通常、座席当たりの平方フィート数を意味すると述べた点に気が付いただろうか。これはおかしい、または分かりにくいと思うだろうか。

そう思わないならば、知るべきことがある。

オープン・ワークスペースやフリーアドレスが採用され、一日当たりの出勤者数が増加するにつれて、重大な比率の誤算が明らかとなっている。過大設備も過少設備も従業員の生産性とエクスペリエンスに影響を与える可能性があるため、こうした誤算は高くつくことがある。しかし、建築家やデザイナーは必ずしも正解を得ていないのである。

ワークプレイス・プランニングの計算に座席と人のどちらの変数を使うかという問題に加えて、こうした変数がプロジェクトに与える影響には新しい働き方も関与している。家具からテクノロジー、ビル・サービス、アメニティに至るまで、伝統的な比率はもはや当てはまらなくなっている。

私物はどこに?

フリーアドレス・プログラムの増加は、専用の鍵のかかる机の引出しを持たないモバイルワーカーが私物や機密ファイルをどこにどのように保管するのかについての考え方を変化させている。最も一般的な対応は、オフィス・ロッカーの設置である。しかし、実際にいくつのロッカーが必要なのか。プロジェクトに必要なロッカー数は企業のワークプレイス戦略や意図されるプロトコルによって異なる。以下に例を示そう。

将来フリーアドレスを導入するための第一歩として、現在は専用の座席を持つスタッフにロッカーを提供することを選択したとしよう。この場合、1座席当たり1つのロッカーが必要となる。

多くのフィットネスセンターが会員に提供するようにモバイルワーカーに「デイロッカー」を提供する場合、平均的営業日にオフィス内に勤務する人数に対応した数のロッカーだけが必要となる。

新しい座席シェア環境で、ワークプレイスの変化のショックを和らげるためスタッフに恒久的なロッカーを割り当てる場合は、毎日オフィス内に勤務する人数に関らず、座席シェア環境に配属される人数に対応したロッカー数が必要となる。

適テック適所

レガシー・ワークスペースでは、IT部門は各デスクに完全なデスクトップセットを提供することが前提となる。典型的なワークステーションには、デスクトップパソコン、モニター、電話、ヘッドセット、周辺機器が含まれるだろう。伝統的に各従業員は毎日同じ機器を使用する。

近代的なワークプレイスでは、特にデスクシェアが行われている場合、複合的なアプローチが要求される。

例えば、コンピューターのモニター、キーボード、及び周辺機器、電話、ラップトップ用のドッキングステーションと周辺機器(マウスとキーボード等)は、一般的に1つのデスクに所属していることが多いので、引き続き座席ごとに配分される。典型的なモバイルワーカーはこれらを自分専用のものとは捉えない。これとは対照的に、多くの組織は衛生上の懸念から、モバイルワーカーに専用の電話用ヘッドセットを提供する。シェアデスク制度において、これは当該オフィスに配属された全モバイルワーカーがヘッドセットを受取ることを意味する。

駐車場の比率微調整

今日のワークプレイスでは、平均座席密度に応じたスペース配分は機能しなくなっている。

伝統的な駐車場の比率―オフィススペース1,000平方フィート当たりの最少駐車場数として表示されることが多い(「1,000平方フィート当たり3台」等)―は、ワークスペースの高密度化とデスクシェア・プログラムの圧力にさらされている。二つの慣行の組み合わせは、一日当たりオフィスに勤務する人数とデスク数を増加させる。この結果、企業は何年も駐車場が余っていたのに、急に足りなくなっていることに気付くというケースがある。

状況によっては会社に割り当てられる駐車場スペースを変更できないこともあるが、需要の予想をより正確に行うことは可能だろう。毎日オフィス内に何人が勤務しているかを監視することで、ピーク時間を特定し、カープール、シャトルサービス、公共交通機関利用のインセンティブ提供といった対策を講じられる。もちろん、自社組織に適切なワークプレイス活用戦略の特定には独自の課題もある。

どのアプローチをとったとしても、今日のダイナミックなワークプレイスには、もはや平均座席密度に基づく駐車場の割り当てという単純な手法は当てはまらない。それよりも、人と占有パターンに注目するべきである。

そして、駐車場同様、これはトイレその他の設備にも当てはまる。

常に比率を把握する

恥ずかしく、そして高くつく可能性のあるミスを避けるためには、プロジェクト・チーム内に気づきや警戒と許可の文化を構築しなければならない。全般的な前提条件に疑問を呈する「比率検証担当」を任命し、潜在的なミスの早期発見事例(全員がヘッドセットを必要とすることを見落とした、等)を共有することを検討するべきだろう。

尻込みしてはならない。誰かに一人当たりの平方フィート数で表されたワークプレイスの密度計算を含むフロアプランを手渡されたら、この値は消すことだ。「座席数」と書き換えて指し戻す。ワークプレイス・プログラムに感謝されるはずである。

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