見解

2022年版インデックスのハイライトと最も改善した市場

2022年版 グローバル不動産透明度インデックス

現在のような不透明な時代に、不動産のテナントや投資家、金融機関が自信をもって業務や意思決定を行うことを可能にする基盤としての透明度の重要性が未だかつてないほど高まっている。

不動産透明度インデックス

JLLとラサールが20年以上に渡り12版を発行してきた透明度インデックスは、市場の透明度評価について不動産業界で最も広く普及したベンチマークであり、海外投資家やデベロッパー、テナントだけではなく、国際的なベンチマークを求める政府や業界団体にとっても重要なガイドである。

JLL グローバル不動産透明度インデックスより抜粋

2022年版インデックスは、パフォーマンス測定のベンチマークや市場データから取引プロセス、サステナビリティの計測に至るまで、不動産市場の透明度を判断するための幅広いトピックが含まれる。最新版のインデックスは、94カ国156都市を対象に不動産透明度についての独自のグローバルな構図を提示している。

2022年版インデックスの調査結果

2022年版インデックスでは、最も透明度が高い国々とそれ以外の国々の格差が拡大していることが明らかとなった。透明度の高い市場は技術の導入、気候変動対策、資本市場の分散化や規制変更を活用して邁進している。一方、その他の多くの市場は停滞ないし後退しており、残念ながら一部には状況が不明となっている場合すらある。

引き続き英語圏諸国が上位を占めており、英国と米国が第1位と第2位を獲得した。欧州市場は2020年以降の平均的な透明度向上が最も大きく、今や透明度「高」の12カ国中、6カ国を構成している。日本も、気候変動リスクに関する報告の改善やサステナビリティ目標達成に向けた取り組みと、とりわけライフサイエンス、セルフストレージ、高齢者向け住宅等のオルタナティブセクターについての入手可能なデータの増加により、初めて透明度「高」の市場入りした。


透明度のランキングが最も高い「高」と「中高」のグループが世界の透明度向上を率先しており、フランス、米国、オランダ、ドイツ、スペイン、カナダ、及びベルギーが、透明度が最も改善した市場に含まれた。これらの市場は、サステナビリティに関する新たな取り組み、反マネーロンダリング(AML)規制や受益所有権の開示、オフィス回帰率からニッチセクターまであらゆる項目についてのより詳細なデータの提供等、テクノロジーの急速な導入に支えられて透明度についての新たな基準や期待感を定めて前進している。低位グループの市場がこうした新しい一層高度なベンチマークについて行くには、改善速度を増す必要がある。

他方、アラブ首長国連邦のドバイとアブダビは、政府による市場の透明度向上に向けた協調努力により、いずれも2022年に世界で最も透明度が向上した市場となった。こうした変化によりドバイは初めて透明度「中高」グループ入りした。インドも世界で最も透明度が向上した市場であり、投資市場とREIT数の増加が市場データの増加、セクターのプロフェッショナル化、モデルテナント法等の規制の取り組み、DharaniやMahaRERAといったプラットフォームによる土地登記のデジタル化につながっている。

不動産透明度はどこへ向かうのか?

調査結果から、不動産業界が混乱期の舵取りに取り組む中で透明度の構図を一変させる圧力が生じていることが明らかとなった。


  • 制度の統一と一貫性: サステナビリティの取り組み、規制環境、テクノロジー、及びデータの枠組みについて、不動産業界を通じた制度の統一と一貫性の向上が強く求められる。

  • 気候変動へのレジリエンス強化:過去に例のない気候変動の影響は既に明らかであり、都市や都市計画の枠組み、建物の将来的なリスクに対するレジリエンスを高める基準の確保へと注目が移っている。

  • 健康と社会についての成果の支援:多くの企業が事業における「社会」と「ガバナンス」要素に戦略的に注目し始めていることから、各産業の目標達成を促すガイドラインを示すために、今後はより多くの規制や計測方法が制定される可能性が高い。