見解

テクノロジーとデジタル化が透明度改善を牽引

2022年版 グローバル不動産透明度インデックス

生産性向上と新たな収益源の確保と、コロナ禍後の生活や働き方の変化への対応に向けた努力が、不動産テクノロジープラットフォームの活用を急増させている。技術の多くは依然として開発の初期段階にあるが、その導入は急増しており、2021年には不動産テクノロジー企業に対するベンチャーキャピタル投資額は182億米ドルの記録的な水準に達している。さらに、世界で建築環境を対象とした不動産テクノロジーを提供している企業数は8,000社近く、これは10年前と比較して300%超の増加である。

JLL グローバル不動産透明度インデックスより抜粋


新しく更新頻度の高い詳細なデータが入手可能となったことが、わずか10年前には想像もできなかった方法で不動産透明度を向上させている。一部の国々では、リアルタイムの稼働率追跡や通行量情報、ニッチセクターの情報集計、更には都市計画や予想における建物や都市のデジタルツインの使用など、建物や市場についての理解は未だかつてない領域に踏み込んでいる。
 

調査結果から、テクノロジーの導入が最も進んでいるのは透明度「高」の市場であることが明らかとなった。ランキング上位にはアジア太平洋地域の高所得市場も位置付けており、シンガポール、香港、韓国が含まれる。中国本土の有力都市は世界最大規模のテクノロジー産業の恩恵を受けている。奥行きのあるテクノロジー企業のエコシステム、先進的なデジタルインフラと、ベンチャーファンドによる投資を背景に、これらの国々では不動産各セクターの膨大な量の詳細かつ適時な情報が入手できるようになり、取引プロセスの迅速化が可能になっている。これにより、デジタル化が進んでいない市場との情報格差は拡大している。

デジタル化の影響はまだ初期段階 

テクノロジープラットフォームやデジタル化プロセス導入の拡大は、既に不動産業界全体の透明度を改善させているものの、これは今後テクノロジーが与える巨大な影響のほんの初期段階に過ぎない。創出されるデータのほとんどは、物件掲載サイトや業務用アプリからIoTセンサーやBIMモデルに至るまで、依然として個別のプラットフォームや企業を中心にサイロ化しており、また、データやテクノロジーに互換性がない場合が多く、ソリューションや業者は非常に分断化された情勢だ。

こうした障害を乗り越えるべく多数の取り組みが行われており、次回調査までに多種多様なプラットフォームや基準が統合されることで入手可能なデータが拡大し、テクノロジーが透明度向上に果たす可能性を最大限に発揮する上で重要な役割を果たすだろう。