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国内機関投資家が求める海外不動産投資の目利き力

公的資金が本格的に不動産投資マーケットへ参入するが、いかにリスクを回避するかが成功への鍵となる。

2018年 08月 01日

国内機関投資家がアウトバウンド投資に目を向ける

世界最大級の機関投資家と呼ばれるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は運用資産額約156兆円(2017年末時点)の5%を上限にインフラ事業、プライベートエクイティ(未上場株式)、不動産などの「オルタナティブ資産」へ投資する方針を打ち出した。国内機関投資家もこの動きに追随。これまで低リスクの債券を中心とした運用方針を採っていたが、現在の運用ペースでは将来的に年金が成立しないとの危機感が高まり、より収益性の高いリスク資産(オルタナティブ資産)への投資配分を増やす方向に舵を切った。特に注目を集めているのは高い収益が見込める海外不動産だ。GPIFの他、ゆうちょ銀行、大手生保などの国内機関投資家がアウトバウンド投資を開始している。

JLLの調査によると2017年度のアウトバウンド投資は34億米ドルとなり、前年比70%増を記録。年金・保険等の機関投資家が海外不動産への投資機会を求めた結果であり、この傾向は現在も続いている。しかし、ローカル色が強い不動産投資は債券や株式以上に「目利き力」が試される。特に日本資本に関してはバブル期に海外不動産を積極的に購入したものの、バブル崩壊によって撤退を余儀なくされた「苦い経験」がある。公共性の高い公的年金がこれまで低リスクの債券を中心に資産運用してきた理由の一端だ。

かつて経験した「海外不動産投資」の失敗……以前ほど国内における大型投資案件が取引されていない一方で、海外における不動産市場は好調を維持しながら大型投資案件も頻繁に取引されている。国内の機関投資家は一度に多くの金額を投資でき、かつ債券投資や株式投資よりも高いリターンが見込める海外不動産へ目を向けざるを得ない状況だ。こうした中、JLL日本 キャピタルマーケット事業部はアウトバウンド投資の拡大ニーズに応えるべく、「コーポレートファイナンス」サービスの強化を打ち出した。全世界の不動産市場にネットワークを持つJLLが海外不動産投資に関するサポートに注力する。指揮を執るのは2018年6月1日にキャピタルマーケット事業部 副部長に就任した根岸憲一だ。

国内投資家の海外不動産投資をサポート

「コーポレート ファイナンス」とは資金需要企業の信用力を担保とした資金調達を指すが、不動産事業体であるGKやTMK、ファンド等を直接的な資金需要者とし、JLL日本ではデットやエクイティのアレンジメントや、不動産ファンドが保有する不動産の資産価値を含めた「信用力」の調査などが主な業務になる。前述した国内機関投資家はファンドストラクチャーを通じた間接投資で不動産投資を行うことが多く、どのファンドが自身の投資要件に適しているのか評価しなくてはならない。ファンドの評価はポートフォリオに帰結するため、JLL日本ではポートフォリオに含まれる不動産の資産価値や収益性を確かめるデューデリジェンス業務も手掛けることになる。

根岸は「クライアントの投資方針は千差万別で、求めるリターンを含めて様々な事情を理解した上で投資に適した物件を紹介する必要がある。不動産はローカル色が強い投資商品であり、投資家の投資条件を把握した上で、現地の市況、対象不動産の優位性、現地エージェントの競争力等に精通しているパートナーが求められる」と指摘する。 

国内の機関投資家にとって国内の債券や株式、不動産への投資は頭打ち感があり、運用益を確保するためにはオルタナティブ投資が必須と言われている。特に海外不動産は多くの機関投資家が運用難に陥る中で一筋の光明となる「希望の星」と目されている。根岸は「ローカルビジネスの不動産は現地の情報に精通していることが必須。グローバルにネットワークを有し、投資家の状況と現地不動産に詳しいJLLの知見を活用してもらえれば」と述べている。

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