記事

空室率1%の大阪-テナント苦難「移転先がない」

空室が見つからず、企業は移転したくてもできない状況の大阪。オフィス戦略を再考するきっかけになりそうだ。

2018年 03月 30日
10037176 - office buildings

需給が逼迫し床争奪戦に

移転したくても空室が見つからない―大阪にオフィスを構える某企業は業績拡大に伴う人材確保を進めるべく、増床移転を検討していたが、いくら待っても条件に合う物件が見つからない。それもそのはず、JLL日本リサーチ事業部の調査では2017年第4四半期の大阪Aグレードオフィスの空室率は1.9%。空室が枯渇しており、企業側の移転ニーズに対応してきれていない状況が続いているためだ。JLL日本 関西支社 支社長 山口成樹は「現在に至り、空室率は更に低下傾向にあり、需給逼迫の状況が続いている」とし、まとまった賃貸床が出たオフィスビルには仲介業者が殺到していると指摘。特に新規供給されるオフィスは「争奪戦」が繰り広げられている模様だ。2017年に供給されたAグレードオフィスは103,000㎡。2017年3月に竣工した「中之島フェスティバルタワー・ウエスト」、同年9月竣工の「ケイ・オプティコムビル(新MID大阪京橋ビル)」はいずれも満床で開業を迎えた。そして2018年9月に竣工を控える「なんばスカイオ(新南海会館ビル)」のリーシング状況も好調だという。山口は「商業色が強い『難波』という立地でありながら、1年前にリーシングを開始した募集賃料は月額坪あたり25,000円(共益費込み)。当時は相場以上の『強気』と評されていたが、昨年末頃には違和感なくマーケットに受け入れられた。成約状況も順調に推移しており、開業までに満床に達する可能性は高い」との見解を示し、活況が窺える。その後の具体的な計画では2020年1月竣工予定の「オービック御堂筋ビル」、2022年春竣工予定の「(仮称)梅田1丁目1番地計画」が控えているのみで、山口は「オフィスの供給量はまったく足りていない」と断言する。

郊外のオフィスも埋め戻し進む

大阪中心市街地のオフィスマーケット全体を俯瞰すると、北に位置する梅田エリアが交通利便性やビルグレードの面で他を圧倒。トップレントとなり、2013年に竣工したランドマーク「グランフロント大阪」もほぼ満床に至った。Aグレードオフィスで移転先をみつけるのは非常に困難な状況だ。老舗オフィス街の淀屋橋・本町界隈でも空室が順調に消化され、賃料相場がじわじわと上振れ始めたという。こちらもまとまった床を確保するのは難しくなっている。一方、中心市街地の賃料負担に耐えられないテナント群はより郊外の大型オフィスへの移転を模索するようになり、実際に「アジア太平洋トレードセンター(ATC)」等では空室消化が進んでいるそうだ。業績好調な国内企業の増床だけでなく、大阪市外の自社ビルから中心市街地への移転ニーズも旺盛だ。山口によると「築年数が経過した自社ビルに入居していた企業がビルを売却し中心市街地へ移転してくるケースはまだまだ多い。自社ビルの耐震性に問題がある場合や、人材獲得を目的にした立地改善が主な理由」と指摘する。特に企業の人手不足は顕著で、通勤時間がかかる郊外では優秀な人材を確保するのが難しいと判断。一部のフロント機能だけでも中心市街地へ開設しようと考える企業も現れている。

オフィスの効率化を進めるテナントが増加

オフィスの移転ニーズは旺盛な一方、前述した通り、新規供給の絶対量が圧倒的に足りていない。移転したくてもできないテナントは水面下では相当数にのぼるとみられるが、どのように対応しているのか。山口は「現在募集されているAグレードオフィスは数えるほど。この中から希望を満たす物件を探すのは困難だ。その半面、簡単に移転ができないため、オフィス戦略をじっくり考える時間的余裕が生まれたともいえる。移転を希望するテナントへのヒアリングを通じて、潜在的な経営課題を導き出し、移転以外の選択肢を提案することで好評を得ている」と説明する。具体的には移転増床ではなく、既存オフィスのレイアウト等を見直し、オフィスの効率化を進めることで人員増に対応するコンサルティングサービスを提供する他、サテライトオフィスやコワーキングスペースといった外部のフレキシブルスペースを有効利用するなどの引き合いが強い。山口によると「特に、郊外から中心市街地へ移転を希望する企業は人材獲得も踏まえた立地改善を目的とするケースが多く、オフィスへのこだわりは強い。『働き方改革』を念頭に置いたワークプレイスづくりにも力を入れており、多角的なサービスメニューを取り揃えた我々の総合力を生かすことができる」と述べている。

空前の空室枯渇時代が到来した大阪オフィスマーケット。「働き方改革」や人材獲得を本気で考えるなら、テナントサイドはオフィスのあり方、またその戦略を再検討する絶好の機会と捉えるべきではないだろうか。