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グローバル投資マーケットへ飛躍する大阪・ミナミ

グローバルの投資マーケットにおいて近年存在感を高めているのが大阪・ミナミだ。路線価と公示地価の動向から国内外の投資家が注目していることがわかる。

2018年8月1日

国税庁が7月2日に発表した2018年分の路線価では、大阪の最高価格はキタの「阪急百貨店うめだ本店」前(1㎡あたり1,256万円、前年比6.8%増)に譲ったものの、2位はミナミの「戎橋ビル」前(1㎡あたり1,184万円)。上昇率は全国5位となる前年比22.3%増で、1位との差を大きく縮める結果となった。

一方、路線価の発表に先立つ今年3月27日、国土交通省が発表した公示地価ではミナミがキタを初めて逆転するという「大異変」が起こった。路線価は相続税や贈与税の算出基準となる指標で発表年の1月1日時点で評価される。公示地価の1月1日時点の評価だが、こちらは土地取引等の取得価格の参考にされるものだ。

これまでJR・私鉄各線のターミナル駅が集中し、オフィスと商業施設の高度集積地・北区梅田を中心とする「キタ」が最高価格を独占していたが、初めて心斎橋・難波を中心とする商業施設主体の「ミナミ」が上回った。背景にあるのは国内外からの投資マネーがミナミの不動産に投下されているためだ。大阪不動産投資マーケットに詳しいJLL日本 関西支社 キャピタルマーケット事業部 秋山祐子は「大阪は海外投資家が投資対象とするグローバルマーケットの一部として認識されている」と指摘する。

ミナミが最高価格、逆転劇に3つの理由

国土交通省によると、2013年時点の公示地価はキタが1坪あたり2,800万円、ミナミが2,000万円と大きな差があったが、2015年頃からミナミの地価上昇率が加速し、2018年には坪4,959万円のキタに対してミナミは坪5,223万円となった。キタの調査地点はオフィスと商業の複合ビル「グランフロント大阪南館」、ミナミは商業ビル「クリサス心斎橋」である。

ミナミが台頭した背景について、秋山は「3つの要因が同時期に重なったことが大きい」と指摘する。1つは世界の不動産マーケットの中でも大阪はイールドスプレッドが高い、すなわち収益性が高い状況が継続している点が挙げられる。イールドスプレッドとは、不動産の利回りと長期金利の差だ。世界主要都市のオフィスのイールドスプレッドは東京285bps、ロンドンは227bps、香港に至っては93bpsにとどまる中、大阪は335bpsと他都市を凌駕する(bps=0.01%)。この収益性の高さこそ世界中の投資家が大阪に目を向ける理由だ。アベノミクスによって超低金利が継続。不動産の価格自体は上昇しているが長期金利との差はまだまだ大きい。秋山は「海外投資家は不動産の利回りのみで投資を判断せず、イールドスプレッドに注目するため、大阪にグローバルマネーが投じられている」と説明する。

2つ目の要因はインバウンドの急増だ。大阪府の調査によると2013年の来阪外客数は263万人だったが、2017年には1111万人まで拡大。秋山によると「訪日外国人観光客はこぞってミナミ界隈へ訪れており、心斎橋筋商店街や戎橋周辺は日本語よりも外国語が飛び交うような環境。海外からの観光客が大阪へ殺到している状況は、一般人の間でも大阪の認知度が高いことを示しており、海外投資家にとって出資者を説得しやすく、海外マネーが集まりやすくなっている」という。

そして3つ目の要因は流動性の高い投資物件がミナミに多数存在している点にある。秋山は「機関投資家にとって、ミナミには100億円-200億円規模でありながら、複雑な権利調整が不要な投資適格物件が多く、投資しやすい。長期保有のみならず流動性が高いので短期保有後に相当のキャピタルゲインを得ることも可能」とし、ファンドが描く様々な投資方針に適応しやすいと強調する。

「ミナミの顔」外資がオーナー

JLL日本 関西支社で「キタ・ミナミ・淀屋橋本町・その他」の4エリア別の投資割合を調査した。その結果、2017年は御堂筋沿いの大型物件の取引が相次ぎ、ミナミへの投資が急増していることが判明。2017年上半期ではミナミへの投資割合は64%、同年下半期でも35%を占める。ミナミでの具体的なリテールの取引事例として、「中座くいだおれビル」や「プライムスクエア心斎橋」、「心斎橋プラザビル」、「Gビル御堂筋02」等の名前が上がる。「Gビル御堂筋02」の取引価格は坪1億5000万円とされ、東京・銀座の相場に匹敵。キャップレートは3.0%まで低下した。また「クリサス心斎橋」は2009年に日系商社が開発し、その後シンガポールの上場リート「クリサス・リテール・トラスト」が取得。そして2017年には米運用会社のブラックストーンが当上場リートを買収した。秋山は「ミナミの『顔』が海外投資家の間で取引される状況こそ、大阪がグローバルマーケットとして投資家に認知されている証拠ともいえるのではないか」と述べる。

国内資本も参戦、利回り3%下回るか?

さて、大阪の不動産マーケットで今後注目すべきポイントは何か。秋山は「利回り3.0%の壁を越えられるかどうか。どんな投資家が現れるのか、に注目している」との見解だ。2015年には御堂筋で外資による大型取引が多かったが、2017年から出口を探る動きが本格化。2018年には15年当時に取引された投資物件がマーケットに出てくることが予想される。昨年の大型取引は最終的に日本資本が取得する案件が多かった。今年になって成約したミナミの大型案件も、外資から日本資本に移動した。この流れが継続するかどうか、大阪の投資マーケット動向を予測する上で興味深い。

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