記事

新たな成長軌道へ突入したアジア太平洋地域の物流不動産

JLLは急成長を遂げる物流不動産市場を調査・分析したレポート「アジア太平洋地域の物流不動産、新たな成長への道筋」を発表。アジア太平洋地域の物流不動産の市場予測と今後の課題について調査・分析した。また、日本特別版として日本市場の分析を新たに加筆した。

2021年 09月 09日
コロナ禍でも急成長

電子商取引(EC)の普及拡大、人手不足解消に向けたテクノロジーの導入、さらにESG投資で求められるサステナビリティ、ウェルビーイングなど、コロナ禍で大きく変化した社会環境に適合した物流不動産市場が急成長を続けている。

コロナ禍を受けて、より高い収益が見込め、社会環境の変化に強いレジリエントな不動産ポートフォリオ戦略を志向する多くの不動産投資家が物流不動産市場に熱視線を送っている。JLLの調査によると、2020年にはアジア太平洋地域全体の不動産投資額が横ばいで推移したが、物流セクターへの投資額は前年比25-30%増となり、韓国、オーストラリア、中国市場へ投資資金が流入。過去6カ月で記録的な大型取引が見られた。今後3-5年間で投資額は倍増すると予測しており、更なる成長が見込まれている。

物流不動産が成長を続ける理由

物流不動産がアジア太平洋地域全体で成長を続ける理由は多岐にわたるが、IT等「ニューエコノミー」と呼ばれる技術革新企業の台頭が挙げられる。経済成長の促進と生産性向上を求めてニューエコノミー企業が台頭した結果、物流不動産を利用するEC事業者や3PL事業者による床需要が拡大した。

急速な都市化に伴い、アジア太平洋地域では毎月300万人が都市部に流入。1,200万人が中産階級入りし、EC利用に拍車をかけるものの、アジア太平洋地域のEC普及率は欧米などに比べて低水準。将来的な伸びしろはまだまだ大きい。

また、業務効率の向上、継続的なコスト削減、労働力の補填を目的とした自動化やロボット等のテクノロジーの導入はこれまで以上に進むことが予想され、こうしたテクノロジーの導入、ESG投資に配慮した環境対応や働きやすい施設環境が求められており、こうした傾向から先進物流施設への借り換え需要も増加傾向にある。

物流不動産を志向する投資家も変化

物流不動産を志向する投資家も変化しており、直近2年ほどの間で、コア型・コアプラス型の物流不動産ファンドが増加している。いまや物流専門ファンドの40-50%を占めるほどだ。また機関投資家の物流不動産投資も増えている。グローバル展開するEC事業者や3PL事業者が台頭しており、テナント企業の信用度が高く、長期賃貸借契約で安定した収益を確保できるハイグレードな物件が増加しているためだ。

購読

さらにインサイトをお探しですか?アップデートを見逃さない

グローバルな事業用不動産市場から最新のニュース、インサイト、投資機会を受け取る。

物流不動産市場へ投資家が多数参入したことで取得競争は激化。過去4年間でアジア太平洋地域の物流不動産の利回りは60bp-220bp低下している。とはいえ地域によって金利差が大きく、以前として魅力的なキャッシュオンキャッシュ利回りが期待できる。

海外投資家に評価される日本の物流不動産市場

アジア太平洋地域の主要市場である日本も物流不動産セクターの成長は著しい。2020年の投資額は1兆3,800億円と2019年比で1.5倍となり、セクター別でみてもオフィスと肩を並べる。新規開発による投資が増え、プレイヤーも拡大の一途をたどるも、諸外国に比べて相対的に利回りが高く、海外投資家に魅力的な市場として認知されている。

レポートの主な内容

  • 資産配分の構造的な変化が資金の流れと投資を促進

›資金の流れと投資が2020年から2021年上期に力強く成長

›大型案件とポートフォリオ取引が加速

›主に恩恵を受けているのは韓国、オーストラリア、中国

›2023年に投資額は倍増して500〜600億ドルへ

›コアアセットやリースバック取引への投資

›利回り圧縮が鮮明、今後さらに悪化も

  • 資本配分増加の裏付けとなる物流不動産の運用変化

›「ニューエコノミー」系テナント企業へのシフト

›急速に進むテクノロジーや自動化の導入

›ESGと人間中心デザインが重要ポイントに

  • 物流事業の未来
  • 日本の物流不動産市場

アジア太平洋地域の物流不動産市場の調査レポートを見る

お問い合わせ

何かお探しものやご興味のあるものがありましたら、お知らせ下さい。担当者より折り返しご連絡いたします。