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東京オリンピック・パラリンピック競技大会へ向けて日本のイノベーションは振興

2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会は、日本の科学技術力を世界に発信する千載一遇の機会でもある。日本のテクノロジー関連企業は最先端技術を開発し、大会での実用化を目指している。これらの技術は大会とその先のまちづくりに活用され、投資先としての日本のプレゼンスをさらに高めようとしている。

2019年 09月 05日
People crossing the famous Shibuya crossing in Tokyo at night.

科学技術イノベーションの発信に向けて加速する日本

東京オリンピック・パラリンピック競技大会を機に東京を訪れた外国人観光客はテクノロジーに彩られた最先端都市を目の当たりにするだろう。自動運転タクシーが空港から競技場を往復し、顔認証システムが多数の選手やスタッフの本人確認をスムーズに実施し、多言語音声翻訳システムが「言葉の壁」をなくす―そんな光景が実現しているのではないだろうか。

日本は長らく、科学技術イノベーションにおいて世界をリードする立場に君臨している。シリコンバレーや中国との競争が激化する中、これまで粛々と科学技術をけん引してきた日本であるが、オリンピック大会ではその成果を広く世界に向けて発信するだろう。JLL日本 リサーチ事業部 岩永 直子は「日本は予て科学技術イノベーションに戦略的に取り組んでおり、東京オリンピック・パラリンピック競技大会はその成果を提示する機会と捉えられている」と指摘する。

その取組は明確である。東京都は2017年から2020年の間に都内の再開発や特定の技術開発に5.61兆円(514億米ドル)が投じられると試算する。JLLが発表したレポート「Innovation Geographies(日本語版「世界のイノベーション都市」)」によれば、2015年から2017年の間に東京は世界で最も多数の特許申請が行われた都市となった。

イノベーションの取組

テクノロジー企業大手の動きも活発である。NECは0.3秒で照合可能な顔認証技術を開発した。東京オリンピック・パラリンピック競技大会では30万人を超える選手やスタッフのスムーズなセキュリティチェックに活用される。オリンピック競技大会にてこの技術が使用されるのは史上初となる。一方、パナソニックはリアルタイム通訳を行う端末を開発中である。このシステムにより、対面のコミュニケーションが可能となり、日本を訪れる観光客の多くが体験する言葉の壁に対応する。岩永は「日本政府はこうした技術をオリンピック・パラリンピック競技大会開催後もレガシーとして活用し、世界に開かれたスマートシティの構築、国際金融センターとしての機能強化に活かそうと考えている」と説明する。

自動運転システムの実現も視野に入る。日本政府は東京オリンピック・パラリンピック競技大会開催までに実用化させ、2022年までには商業化することを目指している。ロボット開発を手掛ける日本企業のZMPは、東京で自動運転タクシーの試運転を開始した。大会選手や観客の利用を見据え、試験運転は東京駅と六本木の間で実施されている。

日本の大手航空会社である全日本空輸も羽田空港内で自動運転バスを試験稼働しており、2020年までの営業開始を目指している。岩永は「政府や企業は、自動走行システムは東京オリンピック・パラリンピック競技大会のみならず、その先の東京の都市交通システムをより安全、効率的、便利にし、交通渋滞や交通事故も防止・低減すると捉えている」と語る。

国家戦略特区

東京オリンピック・パラリンピック競技大会の先へ向けたまちづくりの取組として、東京駅東側の八重洲地区が国家戦略特区として再開発の対象となっている。現在、同区域には小規模の雑居ビルが多数集積している。しかし、今後は、再開発計画により高層オフィスビルが建設され、八重洲の国際的競争力は東京駅の反対側に位置する丸の内に比肩するまでに高められるであろう。岩永は「八重洲地区の再開発計画は東京の競争力を強化しグローバル人材・企業を誘致するのみならず、東京駅のアクセスの改善も目指している」と述べている。

長期的投資の促進

イノベーションを巡る盛り上がりに加えて、投資も日本政府や国内外の投資家の話題に上っている。KDDI、トヨタ、ソフトバンクグループ等の大手日本人投資家がイノベーションを促進するべくテクノロジー系の起業やベンチャーキャピタルに多額の投資を行っている。更に、日本航空やみずほ銀行等がテクノロジー企業の成長を促すため、イノベーションセンターを設置している。

対内直接投資も増加している。2017年は28.6兆円(2,620億米ドル)となり、前年を3,000億円(27.5億米ドル)上回った。安倍晋三首相の掲げる「2020年までに対内直接投資残高を35兆円(3,200億米ドル)へ倍増」という目標の達成へ向けて順調な成長軌道を描いている。

岩永は「データドリブン型社会構築へ向けた改革が実施され、産学官連携が促されている。これによりイノベーションは促進し、都市の国際競争力は強化され、投資を呼び込むであろう。」と語る。東京オリンピック・パラリンピック競技大会によりこうした変化が一層加速することが期待されている。

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