日本を未来へ導く東京
アジア各地の都市が最新の技術を取り入れて未来のスマートシティを目指すなかで、東京は強みである革新的な技術を活用して、粛々とイノベーションを牽引している。
最も革新的な都市・東京
日本の首都・東京は、データプロバイダーの2thinknowが発表した「Innovation Cities Index 2018」にて、ロンドンとニューヨークを抜いて「最も革新的な都市(Most Innovative City)」に選ばれた。同社取締役 クリストファー・ハイアー氏は「東京はスマートテクノロジーの変化を受け入れることによって、明確な方向性を示し、世界を変える長期的傾向であると当社が認識しているロボティクスと3D 製造という2つの分野でイノベーションをリードしている」と述べる。
2位はロンドン、続いてサンフランシスコ、ニューヨーク、ロサンゼルスでトップ5を占めた。
この受賞は、政府が未来の経済と文化を整備すべく何年にもわたって取り組んできた長期的な努力の賜物である。日本は2016年 に経済発展と社会的課題を解決するための国家規模の変革の一環として、Society5.0を導入した。
日本のSociety 5.0の創設
JLL日本 リサーチ事業部 岩永直子は「Society 5.0の実現にはAI、ロボット、IoTなどの第4次産業革命に向けたイノベーション、そしてこうした技術でリアルデータを活用して様々な経済分野へ応用することが不可欠だ。この分野における日本の優位性は、企業の保有する優れた技術力、大学等の研究開発力、高い教育水準の下でのポテンシャルの高い人材層、ものづくりや医療等の現場から得られる豊富なリアルデータにある」と述べている。
日本の独自性はロボットや自動化への魅了にもみられる。これは、1952年の鉄腕アトムから2000年代のガンダムに至るまでのアニメや漫画の中に描かれており、技術開発と適用を促進したであろう。
日本の製造業は「日本株式会社」の名を世界に知らしめた1980年代のバブル期以来、生産量増加と生産性向上のため、広範囲にわたる取り組みや多額の投資を自動化に対して行ってきた。そしてこの戦略は今日まで続いている。現在日本は少子高齢化による人口減少に直面し、失業問題といった社会的摩擦を引き起こすことなく、AIやロボットなどの革新的な技術の導入が可能な優位な立ち位置にある。
岩永は「今後は、自動化等が医療から農林水産業に至るまで様々な産業分野に普及し、自動運転移動も日常の一部になるなど、人々の生活のあらゆる面が変化する」と展望している。
東京の優位性
Society 5.0の実現に向けて障害も認められる。内閣府の総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)によると「質の高いIT人材が質・量の両面で不足しており、研究開発のスタートアップ企業の数が少なく、その規模も小さい。また、社会経済構造に柔軟性がなく、グローバリゼーションの著しい遅れがみられる」という。
とはいえ、近い将来大きな盛り上がりが期待される。産官学が連携してこれらの問題に取り組む一方、2020年の東京オリンピックは、ホスピタリティ、感染対策、交通アクセス、セキュリティ、エネルギーなどの分野における革新的な取り組みを加速させる一助となるであろう。
例えば、東京オリンピックでは、セキュリティの向上を目的として、オリンピック史上初めて顔認証システムが導入されるほか、自動運転タクシーが公道を走行して移動手段となることが期待されている。
一方、深圳やソウルなどアジアの他の都市も、東京を追い上げており、東京に負けない速さで革新を進めている。東京はこれらの都市から多くを学ぶことができるものの、岩永は「都民ファーストでつくる『新しい東京』~2020 年に向けた実行プラン~」と呼ばれる4カ年の実施計画の中で策定されているとおり、独自の視点に立ち、スマートシティを実現していく可能性が高いといえる」との見解だ。こうした動きが、東京の地位を引き続き確固たるものとし、優秀な人材や不動産投資資金を引きつけるであろう。
岩永は「JLLの調査によると、世界の不動産投資総額はグローバル市場が20%超を占めており、資家の関心は革新的な都市に向けられている。その理由はイノベーションが都市と物件のフューチャープルーフィングの実現可能性を高めるからだ」と総括する。