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ドローンが不動産部門の新分野を開拓する

いまやドローンは珍しい存在ではなくなった。農家、ピザチェーン、測量技師、果てにはディズニーでさえ、生活を格段に便利なものにするためにドローンを積極的に活用するようになっているのだ。しかし、これはあくまで序章に過ぎない。

2019年 06月 30日

ドローン市場拡大

ゴールドマン・サックスは2016年-2020年に1,000億米ドル規模にドローン市場が成長すると予想し、企業および政府による大口需要の拡大を期待している。

国際的な投資銀行によれば、この大口需要は不動産および建設部門がかなりの割合を占め、両部門は今後数年でそれぞれ2億6,500万米ドルと112億米ドルをドローン技術に投資すると予想している。リアルタイム画像を収集し、ビル管理人に作業指示書提案し、潜在的な投資家やテナント向けのデジタル・ビルディング・ウォークスルーを実行し、エネルギー効率の改善を図るために熱画像調査を実施し、高所での建設の進捗を監視する。これらを実現する技術は単なる需要拡大のきっかけに過ぎない。JLLオーストラリア COO エイドリアン・レヴァイは「しかし、これらすべてに関わる真の意味でのゲームチェンジャーは、ドローンのデータ収集能力だ」と指摘する。ドローンは空における人間の「デジタルな目」であり、利便性の高いソフトウェアを搭載することで視覚データを利用して、いまだかつてないほど正確かつ効率的に建物管理ができるようなアイディアをもたらす。レヴァイは「機械学習をもってすればソリューションでさえ提供することができる」との認識を示している。

RICS(英国王立チャータード・サベイヤーズ協会)および企業のサステナビリティ啓蒙団体のMorphosisが作成した報告書「Crossing the Threshold」に概略が述べられているように、エレベーターシャフト内での目視検査など人間への危険性が高い状況においてドローンの利用は理に適っているが、広範囲に及ぶドローンの使用にはプライバシー、安全性、サイバーセキュリティおよび電子廃棄物に関連した懸念も拭えない。

レヴァイは「ドローンは、我々がたった今経験している不動産のデジタル化、つまり都市や建物を管理し、互いに影響を受け合うための変革のほんの一面に過ぎず、我々はこれを厭わず受け入れなければならない」と説く。

現時点で、ドローンの可能性を積極的に活用している不動産部門、企業および政府による活用例を以下に挙げる。

ロンドンのビル屋上にランディング・パッド(離着陸場)を設置

スタートアップ企業であるSkyport Dronesは、ドローン用離着陸場の設置に向け、ロンドンのビル屋上のネットワーク集積に取り組んでいる。航空機の垂直着陸から名付けられた「垂直離着陸飛行場」として知られるこの場所には、積みおろし設備に加え、充電用の設備も含まれる予定だ。既に垂直離着陸飛行場はスイスで実用化されており、ドローンに医療用品を積載して研究所と病院の間を往復している。Skyport Dronesはロンドン市内の約15カ所のビル屋上使用権を獲得するために家主との交渉に取りかかり、今後1年半かけて100カ所に展開することを目指している。同社は都心のドローン飛行に関する規制問題をすべて解決次第、数年以内に飛行場の稼働開始を予定だ。

ロンドンに本社を構えるBarr Gazetas建築事務所は、数ある建物の中から「上質で、堅牢かつ環境に配慮した施設」を付随できるような建築物として、多層式駐車場、オフィスビル、鉄道駅を厳選し、垂直離着陸飛行場の設計に着手している。Barr Gazetas建築事務所 所長 ジョン・イーグルシャム氏は「エアタクシーと聞くと未来の発明のように感じられるかもしれないが、タクシーが空を飛び回る光景が目の前に広がる時代がすぐそこまで来ている」と語った。

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