横浜インターナショナルスクール - 校舎移転事例
日本で長い歴史を有するインターナショナルスクールが校舎の老朽化、生徒数増加に対応すべく校舎移転を決断。様々な課題が立ちはだかる中、隈 研吾氏の基本設計による「夢の学校」実現に向けてJLLは専任プロジェクトマネージャーとして支援した。
場所
神奈川県横浜
市中区
スポットライト
建築コンサルタント、プロジェクトマネジメント
規模
地上4階、敷地面積:14,685㎡
不動産タイプ
教育施設
YIS動画「Welcome to Our Honmoku Campus - Where Every Space is A Learning Space」をみる
日本におけるインターナショナルスクールとして長い歴史を有する横浜インターナショナルスクールは2022年1月、横浜市中区山手町から小港町へ校舎を移転した。世界的に有名な建築家の隈 研吾氏率いる隈研吾建築都市設計事務所が基本設計・デザイン監修、大成建設一級建築士事務所・大成建設株式会社が実施設計・施工を担当。木材を多用した暖かみのある新校舎には、3-18歳(アーリーラーニングセンター:幼稚部、小学部、中学部、高等部)まで、世界50カ国超の国籍を有する約750名の生徒が集い、お互いに刺激を受けながら成長できる多彩な教育プログラムを実践するために必要な数多くの機能を導入した。JLLは専任プロジェクトマネージャーとして要件整理、ゾーニング、機能配置などの基本計画や目標を設定する建築プログラミングのアドバイスをはじめ、基本設計者、実施設計者・本工事施工業者及び15社以上の専門工事事業者から提示される高度な要件や工期を柔軟に調整しながらプロジェクトを推進。予算・予定期間内でのプロジェクト完了に貢献した。
課題
横浜の観光地として人気の「港の見える丘公園」にほど近いランドマーク的な存在として長年多くの人々に親しまれてきた横浜インターナショナルスクール。しかし、築年が経過した校舎は複数の土地に分散。校舎や体育館、グラウンドなどが狭く、入学希望者が増加する中、同校が理想とする教育プログラムを効率よく実践するには制約が大きかった。こうした課題の解決に向けて、創立100周年を迎えるにあたり、2018年から校舎の移転プロジェクトを始動。緑あふれる「本牧いずみ公園」に隣接する国有地を取得。面積14,685㎡、従前比で1.5倍の敷地に新校舎を新設することを決定した。
一方、学校が希望する教育カリキュラムを実現するためには、校舎・体育館・グラウンドなど十分な広さを確保する必要があり、多種多様な機能を設ける必要があった。しかし、それらの機能をすべて建築可能面積内に盛り込むのは難しかった。そのため、各種機能を効果的に配置・整備するための要件整理、ゾーニング計画、工期・予算など多数のプロジェクト関係者と様々な調整が課題となっていた。
アプローチ
JLL日本 プロジェクト・開発マネジメント事業部は、建築コンサルタント・専任プロジェクトマネージャーとして新校舎の全般的な計画支援・マネジメント業務を担当。学校側では必要な機能をリスト化していたものの、どのような機能をどの程度設けるべきか、各種機能をどのように配置すれば効率的なのかなど、要求条件が具体化されていなかったため、まずは必要な施設機能を抽出するべく、教師へのインタビューやワークショップなどを実施し、学校・設計側、外部有識者と協力して必要な機能と要件を明確化(建築プログラミングによる要件整理)し、建築可能面積内に求める機能をすべて収めるための機能・面積調整やゾーニング計画などの仕組みづくりを構築。また、限られた予算内で学校側の多様なリクエストに応えるため、建築家、ゼネコンなど15社以上の専門工事業者が一体となって設計・施工を進める分離発注スキームを構築し、工期・予算・品質の実現を支援した。
成果
木の温かみに包まれた新校舎では、生徒たちがお互いに刺激を受け、創造力を刺激され、さらに学校コミュニティの一員となれる居心地のよい教育環境を実現。すべてのスペースを学習スペースとみなし、教室だけで学習機会を完結するのではなく、図書館や廊下などでグループワークができる。教室と他のスペースを組み合わせ継続した学習機会を提供するための機能配置に気を配り、生徒たちが繋がる場(オープンハブ)も多数設置。オープンスタイルのカフェは保護者や卒業生が気軽に訪れ、学校コミュニティに参画できる場として機能させる。旧校舎時代には存在しなかった屋内温水プールを新設したほか、サッカーの公式試合に対応した広大なグラウンド、バスケットコート2面を確保した体育館、演劇教育やダンスパフォーマンスなどの舞台としても活用できる防音ブラックボックス型の講堂、統合舞台芸術センター、スタジオスタイルの美術室、グローバル企業でも導入されている本格的な実験機器を備えた理科室、日本文化を体現した多目的スペースとして和室「調和庵」など、教育プログラムを推進する上で欠かせない充実した機能を配置。国際バカロレア認定校であり、最高品質でバランスの取れた教育環境を提供することを使命とする同校のミッション実現にふさわしい新校舎となった。
クライアント&担当者の声
私たちの求める『夢の学校』は建設用地内に収まりきらなかったのです。あれもこれも欲しいが、どう実現するか。そして、この問題を解決できたのはすべてJLLのおかげです。
横浜インターナショナルスクール 校長 クレイグ・クーツ氏は次のように述べている。
「本校は創立以来、約100年にわたり学校のコミュニティを支え、横浜で国際教育を広めることを体現した学校づくりを目指しています。今回のプロジェクトは、本校のプログラム活性化と機会醸成をテーマとし、カリキュラムに沿った施設をつくりあげることで生徒に学びと成長、そして本校の一員となる機会を提供することが目的でした。専任プロジェクトマネージャーのJLLは、すべての関係者を繋ぐ役割を果たしてくれました。毎回打合せに同席し、YISという学校・組織について関係者全員が理解しているか確認してくれました。さらに、JLLは私たちの人となりを理解し、そのこだわりをプロジェクトの関係者の作業に落とし込んでいく役割を果たしてくれました。当初より隈 研吾氏から何度も伝えられていましたが、私たちの求める『夢の学校』は建設用地内に収まりきらなかったのです。あれもこれも欲しいが、どう実現するか。そして、この問題を解決できたのはすべてJLLのおかげです。今回のプロジェクトの一番の評価は、生徒たちがこの校舎を使う姿に表れています。私たちが意図した以上にそれぞれのスペースを有効活用してくれています。本プロジェクト全体の核は『すべてのスペースが学習スペースになる』ことでしたが、JLLがうまく調整してくれたおかげで実現できました。新キャンパスができたことでキャパシティが広がり、これからもさらに歴史を刻むことができるでしょう」
JLL日本 プロジェクト・開発マネジメント事業部 ジェネラルマネージャー 上村 和紀、副部長 武井 美緒、副部長 山野 絢子は次のように述べている。
「JLLは、クライアントが校舎の移転を決定し、設計者である隈研吾建築都市設計事務所と一緒にこのプロジェクトの建設プロジェクトマネジメントとして参画をしました。基本設計が完了した後に、実施設計及び施工業者の入札を行いました。実施設計時にはクライアントと学校運営に必要な各ベンダーを調整し、調達まで行いました。最終的には工事調整・モニタリングを行い、この新しい校舎を無事引渡しすることができました」(山野)
「クライアントが実現したい新校舎のビジョン、具体的には隈 研吾氏による建築デザイン、先進的な設備、教育ツールに対して予算が低かったことが課題でした。JLLとしてはコスト削減のため15社以上へ分離発注を行い、建築家、ゼネコンおよび15社以上の専門工事業者が一体となって設計・施工を進めるスキームを構築しました。各社間の調整がスムーズに進むよう一つ一つマネジメントを重ね、工期・予算・品質が実現するように貢献しました」(武井)
「JLLプロジェクト・開発マネジメント事業部では、様々なプロジェクトのお手伝いをしております。オフィス、物流施設、学校、ホテルなど多様なアセットにおける企画、設計そして工事のマネジメントを一貫して行っております。コストやスケジュール管理をはじめ、問題が起きた場合の対応までクライアントに寄り添ってマネジメントしています。今後も国内外のお客様のプロジェクトビジョン達成をするためのプロフェッショナルサービスを提供して参ります」(上村)
写真提供:大成建設 写真撮影:川澄・小林研二写真事務所(施設画像)