生産性向上のためにワークスペースを最適化する方法
今日の流動的な労働力と予測不能な市場では、企業が日常業務に理想的なオフィス規模を把握することはますます困難かつ重要になっている。
人件費と不動産が多くの組織の貸借対照表上の二大費用であることを勘案すれば、最適化されていないオフィススペースはスペースと賃料の無駄を生むだけではなく、生産性の水準にも影響して、最終的にはボトムラインにダメージを与える可能性がある。
では、余剰をカットして改善された数値をCFOに報告するには、何をすればよいのだろうか。
最適なスペース規模の特定
JLLアジア太平洋地域 テナント計画 リージョナル・マネージャー ジェレミー・ドハティーによれば「ポートフォリオ最適化は企業の変化する継続的ニーズに合わせた適切なスペースを適時供給することに役立つ」という。
JLLの試算では、オフィスのスペース利用を最適化することで、300万平方フィートのポートフォリオの年間営業費用を最大100万ドル節約することが可能だ。ドハティーは「テナント計画を適切に実行することで、一部のクライアントは当初の計画よりも最大20%少ないスペースのリース契約を締結した」と語る。
最適なスペース規模の定義は、業務のパターンや行動が異なるため、企業ごとに解答が存在する。近代的な労働力は、在宅勤務やコワーキング、フレキシブル勤務等のオルタナティブ・ワークプレイス戦略によって流動化している。合併や買収、売却、事業拡大等、より長期的なイベントもスペース要件に影響する。
従業員は、自由に選択可能な業務環境が提供された場合に最も生産性が高くなる。混雑したスペースは生産性に悪影響を及ぼすが、スペースがありすぎるても、活気がなくなり、アウトプットが減少する可能性がある。
テクノロジーが急速に変化する中、正規社員一人当たりのスペース比率は、もはや今日のワークプレイスにとって適切な計測方法ではなくなっている。ドハティーは「最適なスペースについて理解するには、一人当たりの面積や、1フロアに設置可能なワークステーション数を算出するだけではなく、スペースの利用方法やワークゾーンの区別方法を考慮して、オルタナティブ業務環境に対して正確な数のワークステーションを配備しなくてはならない」と説明する。同じ原則が会議室にも当てはまる。会議室はいずれの時点において誰にどのように使用されているのかという点を注視すべきだ。
ニーズとビジネス目標に対応する
適切なスペースの規模を判断することは、自社のビジネスのニーズと目標を理解することに他ならない。トップダウンの情報収集プロセスは、Cスイートから始まるべきである。最高レベルのリスクについてのインテリジェンスを含まないイニシアチブは、情報のギャップが足かせとなって失敗する。例えば、サイトの積み直しや、コラボレーションを強化するためのワークスペース再構築は、統合が計画されているならば賢明な措置とはいえないだろう。
Cスイートや企業不動産(CRE)担当役員以外に、ポートフォリオ最適化には事業部門や人事部、財務部の代表等のステークホルダー・グループを含む計画の中心組織が必要となる。ステークホルダーが関与すれば、策定された戦略が組織全体のニーズを反映することが確保される。
テナント計画のソリューションは、現在の要件のみに基づいて作成されるべきではない。企業は、事業目標や従業員の増減に応じてスタッフを支える方法についても評価するべきだ。こうした戦略的計画作成で、追加的な費用や諸経費を回避しつつ、従業員の混乱を最小化できる。
テナント計画の実施
テナント計画を実行する際には、関連する要素の需給関係に注意する。供給とは、自社が所有または賃借する不動産スペースであり、需要とは業務遂行のための人、ツール、プロセスを指す。
経験豊富なテナント計画業者を雇用すれば、シナリオ開発のために以下のデータセットの照合や認証を実施してより迅速で自信を持ったポートフォリオの意思決定が可能となり、このプロセスを容易にできる。
供給*データには、以下が含まれる。
容量、人口、及び空室情報
スペース稼働方法についての用途報告
現在の仕様に影響する進行中のプロジェクト
リースの満期と更新オプション
需要**ソースには、以下が含まれる。
Cスイートから集めた予定される事業イニシアチブに関する情報
現地事業部門からの日常業務に関する洞察
財務部門からの予算化された要員データ
人事部からの現在の採用情報
潜在的シナリオ
上記のデータから、スペースについて異なるシナリオを構築し、以下についての説明や対策を含めることができる。
スペースの容量についての限界点
費用節減・回避の演習
潜在的な最適化プロジェクト
予想の変更に対応した保守的・積極的な戦略
最善慣行の活用と最新の人口やスペースのデータの維持により、シナリオ計画を正確に実行し、統合や最適化の機会を特定することが可能となる。
ポートフォリオ最適化は、継続的なプロセスであるべきだ。「複数の形式のデータが入手可能となるにつれて、定性的・定量的な影響により知的に適用されるようになっている。ドハティーは「この努力は、企業が事業の目的を完全に支援するポートフォリオを、最低限の費用で形成することを可能にする」と述べている。
*供給とは、企業が所有・賃借する不動産スペースを意味する
**需要は、人、業務遂行のため使用されるツールとプロセスで計測される