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研究開発拠点の立地戦略:賃貸型R&D不動産の可能性

事業成長を実現するための基盤となる研究開発活動(R&D)に関する不動産戦略の重要性が高まっている。本レポートでは「研究開発拠点(R&Dセンター)」に焦点を当て、日本における研究開発拠点の変遷、近年の立地動向を紐解くと共に、研究開発拠点の賃貸市場確立の可能性や不動産としてのスペック等を考察した。

2024年 02月 19日

研究開発活動に特化した賃貸型不動産の供給が近年になって増加している

世界的に注目される不動産「研究開発拠点(R&Dセンター)」

企業にとって「イノベーション創発」は激化するグローバル競争における事業成長の源泉となる。研究開発をはじめとする無形資産への投資は現代経済を勝ち抜く上で特に重視され、研究開発を行う際のインフラとなる不動産の重要性が高まっているのが現状だ。

例えば、コロナ禍を経て創薬・製薬の必要性から、不動産セクターにおいても研究開発の舞台となるライフサイエンス不動産に対する注目度は世界的に高まっている。さらに、デジタル社会の本格的な到来、産業構造の変化等を受けて、製造業や卸売業・小売業、専門・技術サービス業、情報通信業、建設業、サービス業等、あらゆる業種が研究開発拠点の整備に乗り出している。

こうした研究開発拠点(R&Dセンター)の立地には不動産市況、既存拠点との関係性、研究者や大学などの関係機関といった“知識”へのアクセス性など、複数の要因が影響する。その立地分布には、過去から現在に至るまで製造業とそれを取り巻く政治・経済の変遷が影響を与えてきた。その製造業と、研究開発における新たな潮流は都市の集積や都市機能から得られる利益を重視しているため、今後も大都市都心部への立地が重要視されている。

研究開発機関の年代別立地件数。47都道府県のうち、全年代における立地件数の総数が30件を上回った地域のみを抽出した 出所:大阪産業経済リサーチセンター(2007)を基にJLL作成

日本における賃貸市場の可能性

研究開発活動の生産性を高めることは、企業にとって事業の成長を左右する重要な課題となる。これまで存在しなかった画期的な製品開発、生産工程に関する斬新な改良といった研究開発活動に取り組む場所として「研究所」や「R&Dセンター」などの拠点を個別に設ける企業も少なくない。

研究開発拠点にふさわしい不動産とは、どのような要件を満たすものなのだろうか。大阪産業経済リサーチセンター(2007)は既往研究などを整理したうえで、次の3つの要因を提示した。

  1. 必要な規模の用地の有無という「土地要因」
  2. 企業の既存拠点との近接性という「社内要因」
  3. 情報収集、関連産業の集積、人材の確保という「環境要因」

不動産市場では研究開発活動に特化した賃貸型不動産の供給が近年になって増加しており、特に東京都を中心とする関東圏(賃貸供給面積:318,000㎡)と、大阪府を中心とする近畿圏(同:約124,000㎡)で多く供給される傾向にある。

これらの賃貸型物件は、オフィスビルとは異なるスペック要件や実験器具などの什器を求める研究開発活動に対応できる設備を備えている。ただし、研究開発活動は企業の個別性が高いことから、拠点候補物件において、確認すべき事項や項目が多い。組織内の関係者や知識と経験が豊富な専門業者との、綿密なコミュニケーションの実践がプロジェクトの成功のために重要となる。

本レポートでは、R&Dセンターの立地戦略に関わる要因を踏まえたうえで、研究開発の用途に特化した不動産賃貸市場の可能性についても調査している。

市区町村別の賃貸可能面積の比較図。地域内の賃貸可能面積の総和が1,000㎡以上の地域のみ描画した。地域名に続くカッコ内の数字は市区町村内の集計対象となった物件数を示す 出所:JLL日本

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