過熱する物流・産業用不動産の自動化競争
JLLはアジア太平洋地域の物流・産業用施設を賃借するテナント企業55社を対象に、自動化技術の活用状況について調査を実施。現状では自動化技術の浸透度は一部にとどまっているものの、回答者の半数以上が将来的に25%以上の導入拡大を計画している。本レポートでは、物流・産業用施設における自動化技術の活用状況について分析した。
物流・産業用施設の自動化競争が始まる
様々な業界がテクノロジーを取り入れ、業務の自動化・効率化に取り組んでいる。なかでも物流・産業用施設はテクノロジーを駆使して自動化が著しい代表的な業界といえるだろう。従前は人手作業に依存していたが、いまや物流・産業用施設のオーナー、テナント双方が人手不足を補おうと自動化技術の導入に動き始めている。「自動化競争」の火ぶたは切って落とされた。
JLLでは2022年に物流・産業用施設の機械化・自動化技術の最新動向に言及したレポート「進展する物流施設の機械化と自動化」を発表。その後継版と位置付けられる本レポートでは、アジア太平洋地域の物流・産業用施設を賃借するテナント企業55社を対象に施設の自動化に関する調査を実施した(調査期間は2022年11-12月)。自動化技術の導入状況や将来の導入計画を明らかにすることを目的にしている。
自動化技術とは?
本レポートでは「自動化技術」についてサプライチェーン戦略における物品の保管・移動工程を自動化するためのテクノロジー全般と定義した。配送センターや倉庫などの物流・産業用施設において物品の整理や輸送に用いられ、作業を自動化することによってテナント企業は業務時間・コストの削減、作業の正確性の向上、そして総合的な顧客体験の改善といった様々なメリットを享受できる。
本レポートで取り上げた自動化技術
自律走行型搬送ロボット(AMR) | パワーアシストスーツ(エクソスケルトン) |
無人搬送車(AGV) | 光誘導ピッキング |
自動倉庫システム(AS/RS) | レイヤーピッキング |
自動ストレッチ包装機 | 仕分けシステム |
オートストア(自動倉庫型ピッキングシステム) | 伸縮コンベヤー |
自動アンローディング | ビジョンピッキング |
回転棚 | 音声ピッキング |
主な調査結果
本調査では「倉庫・物流業務に自動化技術を活用していない」との回答が38%にのぼったものの、回答者の半数以上が「2030年までに自動化技術の利用を現行水準から25%以上拡大する計画を立てている」ことが分かった。
一方、自動倉庫システム(AS/RS)や無人搬送車(AGV)などの自動化ソリューションは、物流業務においてますます重要な役割を果たすことが期待されているが、多額の設備投資による投資回収期間の長さが懸念され、導入が遅れる可能性がある。
調査時点では、自動化技術の活用はまだまだ発展途上に過ぎないが、費用対効果が見込まれれば自動化技術が一気に普及拡大する可能性は高い。