サステナブル不動産への道:
オフィスビル編
不動産のサステナビリティに関する最新トレンド及び不動産の環境・健康性能を評価する制度を概観するレポート「サステナブル不動産への道」の第3弾です。東京・大阪・福岡の大規模オフィスビルにおけるグリーンビルディング認証およびエネルギー性能評価の取得状況を分析しています。
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キーポイント
CO2総排出量の3分の1を占める不動産、排出削減の加速を。日本は2030年までに温室効果ガス(GHG)排出量を2013年度比で46%削減するとしているが、不動産関連の排出削減量は目標の半分にも届いていない。CO2総排出量の約3分の1を占める不動産からの排出削減が急がれる。
グリーン認証取得ビルは増加するも、グローバルスタンダードは限定的。 東京・大阪・福岡の大規模オフィスビルにおけるグリーンビルディング認証の取得は増加しているものの、グローバルスタンダードであるLEEDや国内認証制度最上位のCASBEE-建築を取得しているビルは限定的である。
ZEBの取得は3都市とも5%以下、BELSやZEBの有効活用を。 エネルギー性能評価であるBELSの取得は3都市とも10%に届かず、省エネ率が40%以上で付与されるBELSの5つ星やZEBの取得は5%以下にとどまる。
グリーン認証とエネルギー性能評価の併用で、日本のオフィスをサステナブルに。 エネルギー性能評価は脱炭素化に有効なツールである一方、気候変動のほか水や生物多様性など多様な環境面からサステナブルな不動産であると客観的に評価されるためには、エネルギー性能評価と総合的な環境性能を評価するグリーンビルディング認証との双方を備えることが望ましい。
CO2総排出量の3分の1を占める不動産、
排出削減の加速を。
日本は2030年までに温室効果ガス(GHG)排出量を2013年度比で46%削減するとしている。不動産関連ではエネルギー起源のCO2排出量のうち、業務その他部門で2013年度比51%、家庭部門で同66%削減する計画となっているが、2022年度の排出実績をみると前者は24%減、後者は同25%減にとどまる。CO2総排出量の約3分の1を占める不動産からの排出削減が急がれる。
グリーン認証取得ビルは増加するも、
グローバルスタンダードは限定的。
2024年末時点で東京では大規模オフィスビルの65%がグリーンビルディング認証を有する。しかし、グローバルスタンダードであるLEEDおよび国内認証制度最上位ともいえるCASBEE-建築のSランクに限ると3%にとどまる。大阪、福岡でもそれぞれ42%、27%がグリーンビルディング認証を有するが、LEEDはいずれも0%、CASBEE-建築のSランクは福岡で3%となっている。オフィスのグリーン化をグローバルスタンダードに押し上げるためには、開発主体へのはたらきかけやインセンティブが必要なのかもしれない。
グリーンビルディング認証の取得割合(棟数ベース)
ZEBの取得は3都市とも5%以下、
BELSやZEBの有効活用を。
2024年末時点でエネルギー性能評価のBELSを取得している大規模オフィスビルは東京で7%、大阪で9%、福岡で9%にとどまり、ZEBを取得しているビルは東京で3%、大阪で5%、福岡で3%とさらに限定される。しかし、グリーンビル認証の中でも評価基準が比較的ゆるい制度で最高評価を取得しても、CO2の排出削減が不十分なため座礁資産となる恐れのあるオフィスビルが散見されることから、BELSやZEBなどのエネルギー性能評価を活用しエネルギー消費量・CO2排出量の削減を促進することが期待される。
エネルギー性能評価の取得割合(棟数ベース)
グリーン認証とエネルギー性能評価の併用で、
日本のオフィスをサステナブルに。
BELSやZEBは喫緊の課題である気候変動に対しては有効なツールである一方、エネルギー性能に特化した評価である。今後規制が厳格化されると予想される水や生物多様性など多様な環境面からサステナブルな不動産であると客観的に評価されるためには、総合的な環境性能を評価するグリーンビルディング認証とエネルギー性能評価の双方を備えることが望ましい。
(注1)グリーンビルディング認証やエネルギー性能評価を取得していないビルがグリーンではない、エネルギー性能が低いとは限らないかもしれない。しかし、テナントや投資家など第三者はラベルがなければ個別ビルの性能を判断することは難しいため、本レポートでもラベルの有無やランクに基づいて察している。
(注2)本レポートの大規模オフィスビルは、東京・大阪・福岡の中心業務地区にある1990年以降に竣工した延床面積30,000平方メートル以上(東京)または15,000㎡以上(大阪・福岡)の賃貸オフィスビルを参照している。