記事

グリーンファイナンスは新型コロナを機に欧州で拡大?

新型コロナウイルスによる都市封鎖(ロックダウン)が解除されはじめたが、欧州ではグリーンファイナンス(環境金融)が投資家やデベロッパーにとって不動産融資の長期的な戦略となる可能性がある。

2020年 06月 18日
新型コロナが環境配慮型の未来をつくるきっかけに?

ビジネスを取り巻く環境が激変するであろうポスト・コロナの世界。欧州各国政府や投資家たちは「この混乱が環境配慮型の未来を築くきっかけとなる」と考えている。

欧州委員会は、欧州の復活を通じてより持続可能で回復力のある経済を構築し、気候と環境のリスクを金融システムに組み入れるグリーン投資を促進したいと考えている。欧州委員会の最新版サステナブルファイナンス戦略では、2030年までに欧州経済をグリーン化するために1兆ユーロの資金の一部を充てるという。

この取り組みは、不動産投資の意思決定において注目を集めているESG(環境・サステナビリティ・ガバナンス)を反映したものだ。JLL インターナショナル・キャピタルマーケットEMEA デット・ストラクチャードファイナンス リード マイケル・カバナウは「新型コロナウイルスによって勢いが削がれた可能性もあるが、機関投資家や上場不動産会社は、特にグリーンファイナンスを引き続き重視していることが報告されている」と述べ、デットによるインパクト投資ファンドなどのスキームが存在している。

新型コロナウイルスが蔓延する以前、欧州では商業用不動産ローン担保証券(CMBS)や債券の人気が高まっていた。欧州初のグリーンCMBSローンであるリバー・グリーンファイナンスは、ゴールドマンサックスによって今年すでに発行され、パリのオフィス物件を担保にした1億8,300万ユーロのローンを引き受けている。このローンは国際資本市場協会(ICMA)のグリーンローン原則に基づいて発行されたものだ。

カナバウは「グリーン認証はコアまたはプライムに分類される建物、または建設もしくは改修中のコア建物に適用されることが多い。重要な点はグリーンファイナンスの利用が広まると、貸し手は原資産が本当に適合していることを識別する際に一般に認められた基準による支援が必要になることだ」と指摘する。

ローカルレベルで起こる変化

シンガポールのキャピタランドなどの国際的な投資家がクロスボーダーポートフォリオにグリーンローンを組み入れているが、現地政府の取り組みによって変化が起きている。JLLドイツ リサーチヘッド ヘルゲ・シューネマンによると「ドイツでは、カーボンニュートラルな不動産を増やすことで2030年までに都市の環境改善を促す動きが活発化しており、貸し手がグリーン資産に融資する機会が増えることになるだろう。ドイツの都市ではグリーン認証を受けた建物の数が増える傾向にある」といい、過去5年間で5%から10%に増加したという。

JLL と ドイツの欧州経済研究センターが実施したドイツ不動産ファイナンスインデックス(DIFI)の四半期調査の回答者は、マージンとローン資産価値比率が建物のサステナビリティ水準に大きく影響されないにもかかわらず「ESG基準が不動産融資に関する意思決定において中程度から高度な影響を及ぼす」と答えた。

シューネマンは「調査対象者の約半数がグレードAのグリーン認証を受けた不動産に注目している。ドイツでは長期的なESGを考慮した不動産投資が借り手と貸し手の両方にとってますます重要になっている」と指摘する。

欧州全体を俯瞰するとグリーンローンを利用する借り手が増えている。ダーウェント・ロンドンは昨年、グリーンに分類されたHSBC UK、バークレイズおよびNatWestによる総額4億5,000万ボンドのローンにおける3億ボンドのトランシェによって、グリーン・リボルビング・ファシリティを得た英国で最初のREIT となった。

INGとロイズ銀行も、ウニベイル・ロダムコ(ウェストフィールドとの合併前)向けに2017年に6億ユーロのファシリティをリファイナンスしたロイズ銀行の商業銀行部門にてグリーンファイナンスを提供した。

カナダの投資家であるIvanhoé CambridgeとNatixis Assurancesは、気候債券イニシアチブを通じて欧州で初めてグリーン認証を共同で取得した。フランスとドイツの銀行のコンソーシアムによる、2018年のパリにおけるDUO タワープロジェクトの商業用不動産ローンである。 

大規模な投資を行う主要な不動産会社では、企業の信用格付けにプラスの影響をもたらすグリーン債券はさらに多く見られた。物流不動産専門のプロロジスが2018年に最初にグリーン債権を発行。続いて2019年に同社は10年物債券の発行によりプロロジス・ヨーロピアン・ロジスティクス・ファンド(PELF)向けにさらに4億5,000万ユーロを調達した。

有利なマージン

このトレンドは、例えば借り手や借り手のマージンに有利に働く基準を含めるなど、インセンティブによって勢いが増す場合もある。2018年に締結されたフランスの不動産会社であるジェシナの1億5,000万ユーロのグリーンローンに対するINGによるローンマージンは、ESG実績に基づいて決まり、グローバル不動産サステナビリティ・ベンチマーク(GRESB)における格付けによって測定される。ロイズ銀行も、ウニベイル・ロダムコ・ウェストフィールドに対する主要な実績指標としてグリーン認定に焦点を置いた。

とはいえ、欧州の融資業界は、いかに基準を決定するかについての課題に引き続き直面している。カナバウは「新型コロナウイルス感染拡大による低迷から脱するにあたり、グリーンファイナンスの成長と訴求を支えるために、さらなる構造と基準の出現が求められる。例えば、グリーンペーパーは有利な価格がつくと考える投資家が大きな改革をもたらす可能性がある」と述べている。

グリーン資産は、賃料が高かったり、キャップレートが低めであったり、または運営費が低めであったり、いずれにしても金融における「優位性」を維持するだろう。カナバウは「考慮すべき将来の保証であり、テナントやオーナー、そして貸し手にとってさらに魅力的となるだろう。何をおいても原資産が適合している必要があるが、我々はまだ十分そこに到達していない」と締めくくった。

お問い合わせ