ニュースリリース

アジアのホテル投資家はデットファイナンスの注力拡大へ、オーナーは財務基盤を強化

2020年 05月 24日

(2020 年 5月 6 日にシンガポールから発表されたリリースの抄訳版です)

東京 2020年5月25日 – 新型コロナウイルスの世界的な大流行により、国境閉鎖や厳しい航空規制が行われ、ホテルの稼働率は過去に例がないほどの低水準で推移、アジアのホテルオーナーは、キャッシュフローを確保するため、デットファイナンスの活用拡大を求めています。新型コロナウイルスは依然としてアジア全体のホスピタリティ業界に多大な影響を及ぼし、ホテルや投資家の多くは、大幅な収入減小により、固定費の支払いが困難となり、資金繰りの悪化に直面しています。

JLLホテルズ&ホスピタリティグループ エグゼクティブ ヴァイス プレジデント アダム・バリー及びシニア ヴァイス プレジデント コーリー・ハマバタは、ホテルオーナーは、旅行規制により様々な短期的な資金調達を検討せざるを得なくなっている一方、市場には依然として潤沢な投資資金が存在するため、この一時的な混乱は新たなビジネス機会をもたらすと予測しています。

アジアでは、政府の緊急事態措置による感染者の隔離や療養施設としてのホテル需要は、一部の地域に限られています。現状、ホテルは損益分岐点を維持することは難しく、債務返済資金も確保できないため、オーナーがそのギャップを埋めることになります。通常、ホテル業界は需要ショックに対する反応が最も早い一方で、回復も最も早く、一部のオーナーは、旅行やホテル需要と収益が回復するまでの間、短期的な対策を講じてキャッシュフローを補おうとしています。

多くのホテルは、従業員の一時帰休や宿泊療養施設としての運用など、短期的な措置を講じても、既存の債務返済に十分なキャッシュフローを確保できていません。JLLの分析では、伝統的な融資チャネルが縮小する中で財務状況悪化の兆候が現れる可能性が高いと予測しています。

バリーは、「アジア太平洋地域のオーナーやレンダーから話を聞くと、債務不履行やさらに最悪の事態を回避するべく協調努力が行われていることが伺われます。オーナーの多くが、需要が回復するまで業績低迷を緩和し、事業を安定化させようと、即時の追加的なクレジットラインを求めています。一般的に、最も懸念されているのは、新型コロナウイルス後の回復が一番遅れるとみられている、海外宿泊客の占める割合が高いリゾート地のオーナーです」と述べています。

銀行業界は既に厳しい状況を一層悪化させないよう慎重な姿勢をとっているため、レンダーは短期的な猶予期間の提供など、ローンの返済緩和やリストラクチャリングの検討に前向きですが、現状では、伝統的なレンダーがこうした不良債権の長期的な返済能力不足を補う為に多額の資金を手当てする可能性は低いとみられます。ホテル業界が最終的にいつ頃回復するかの判断をするのは時期尚早ですが、多くのオーナーが現在の環境を乗り切るには短期的な返済猶予期間の提供に加え、ギャップを埋めるためには追加資金が必要となる可能性が高いと予測されます。

ホテルへの融資の需要増加は、運転資金不足に陥っている多数の業界からも同様の需要が高まっている中で生じており、伝統的なレンダーはボラティリティの高いセクターへの融資拡大に慎重な姿勢をとっています。

2019年のアジア太平洋地域では、過去最高となる127億米ドルのホテル取引が行われ、融資は減少すると見込まれていました。しかし、質の高いホテルアセットを保有、または、取得を目指す様々な資金が多く存在するため、中期的には、アセット価格は下支えされると考えられます。

JLLでは、こうした様々な要素が資本市場に亀裂を生じさせており、そのギャップを埋めるのは短期的なキャッシュフロー下落の先を見越し、確かな資産価値や他の担保を検討する柔軟性を有するデットファンドと非伝統的なレンダーであると見込んでいます。

ハマバタは、次のように述べています。「ホテルセクターにおける旺盛な資金需要を受けて、プライベートエクイティグループからファミリーオフィスに至る様々な投資家が、伝統的デットファンドに続いて融資市場における活動に注力しようとしています。こうした資金提供者は、通常調達コストは高いものの、長期融資への借り替えやより合理的な価格での資産売却が可能になるまでの間、短期的なソリューションを提供できます」

JLLでは、デットファイナンスによるソリューションを最も必要とするのはタイ、インドネシア、ベトナムなど東南アジアのリゾート市場と、モルディブなどの純粋な観光地としてのデスティネーションであると考えています。これらの国々は、既に銀行セクターの流動性欠如や相対的な高金利を経験しており、また新型コロナウイルスの感染拡大後の回復が最も遅れるとみられる海外からの旅行者への依存度が高くなっています。

バリーは次のように述べています。「財務基盤が強固なオーナーやスポンサーはリファイナンスが可能と思われますが、短期的な資金調達需要が複数の市場で発生する見通しです。短期的な措置が講じられない場合には、2020年後半にはディストレスト資産が市場に流入する可能性があるでしょう。コロナウイルスの感染拡大収束後は、限定的な新規供給と低迷期を乗り切ったプレイヤーの財務基盤の強化が見込まれ、最終的には業界のファンダメンタルズの強化に繋がっていくと見込まれます」


JLLについて

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フォーチュン500に選出されているJLLは、2020年3月31日現在、世界80ヵ国で展開、従業員約94,000名を擁し、売上高は180億米ドルです。JLLは、ジョーンズ ラング ラサール インコーポレイテッドの企業呼称及び登録商標です。jll.com