記事

アフターコロナ時代のオフィスに必要不可欠なソロワークスペースとは?

コロナ禍で働き方が大きく変化する中、1人で集中して働く「ソロワーク」が注目されている。コミュニケーション活性化などの役割が期待されるアフターコロナ時代のオフィスにもソロワーク可能な執務環境を求める従業員の声は大きい。オフィスにソロワークスペースを開設するメリット・デメリット、導入ポイントを解説する。

2022年 11月 14日
オフィスにソロワークスペースを導入する企業

アフターコロナに向けて多くの企業がオフィス改革を進める中、集中して働くことができる「ソロワークスペース」を導入するケースが増えている。例えば、JLLが支援したアサヒグループホールディングスのオフィス統合集約プロジェクトでは、吾妻橋本社オフィスや地方拠点にソロワークに対応するフォンブースを導入している。

また、人材派遣会社のビースタイルホールディングスも2021年1月に拡張移転した新オフィスにオンライン営業に対応した個室ブースを多数設置した他、タレントマネジメントシステムを開発・提供するIT企業も社内外のステークホルダーの交流拠点を目指してオフィス移転したものの、営業活動やミーティングのオンライン化を視野にシェル型の個人ブースを多数設置している。

ソロワークとは

「ソロワーク」とは読んで字の如く「一人で仕事をする」ワークスタイル とされる。

従前のオフィス勤務では事業部やプロジェクト等に携わるメンバー同士が協働して業務を進めることが多かったが、コロナ禍を受けて多くの企業が在宅勤務を導入。1人で仕事をしても業務に支障がないケースがあり、ソロワークの有用性が認められつつある。そしてオンラインによるミーティングや営業活動が当たり前となり、オフィス出社時と遜色なく業務にあたることができるようになった。こうした背景から、アフターコロナ時代の働き方は業務内容や気分によって働く環境を柔軟に選択できる ハイブリッドワーク や ABW(Activity Based Working)に対応したオフィスが台頭。その中の1つの選択肢としてソロワークが可能な執務環境に注目が集まっている。

オフィスにもソロワーク可能なスペースが求められている

「1人で仕事ができる環境」ならば在宅勤務で事足りると思われるが、在宅勤務が業務を進める最適な環境とはいえない。そもそも日本の狭小な住宅環境では執務専用の個室を確保するのが難しく、家族と同居したままリビングなどで仕事をせざるを得ない残念なケースもありえる。そしてオンライン業務を円滑に進めることができない貧弱なITインフラなど、様々な課題がある。また、上司や同僚とのコミュニケーション低下、さらに1人で仕事を抱え込むことによる心理的負担増も在宅勤務の大きな欠点に挙げられる。在宅勤務だけでソロワークを長期的に継続するのはなかなか難しいといった事情がある。

在宅勤務に大きな課題の残る日本の住宅事情と、日本のワーカーのオフィス回帰ニーズを受けて、オフィスにおけるソロワークスペースのニーズも高まっている

JLLが日本を含むグローバルで活躍するオフィスワーカー3,300人超に対して行ったアンケート調査 によると、コロナ禍を受けて在宅勤務を実施した日本の回答者は64%にのぼり、アジア太平洋地域全体の68%とほぼ同等であったが「在宅勤務のほうがより生産性が高い働き方ができた」と回答した日本の回答者はわずか21% に留まり、アジア太平洋地域の46%と大きな隔たりがあった。さらに、日本の回答者の「1週間(週5日勤務)の理想の働き方」を調査したところ、オフィス勤務が週3.6日と最も高く、在宅勤務が週1日、オフィス・自宅以外での勤務が週0.4日となり、「オフィスでフルタイム勤務したい」との回答が52%にのぼるなど、世界的にみても日本のオフィスワーカーは在宅勤務よりもオフィス勤務を好むという独自の傾向が見受けられる。

オフィスと在宅勤務を組み合わせたハイブリッドワークを導入する企業が増えているのは事実だろう。ソロワークは在宅勤務で対応しつつ、コミュニケーションやイノベーションの創発を前提にした協業型の業務はオフィスで行うなど、働く場の役割を明確化し、コミュニケーション特化型のオフィス環境に再整備する企業も存在する。しかし、前述した通り、在宅勤務に大きな課題の残る日本の住宅事情と、日本のワーカーのオフィス回帰ニーズを受けて、オフィスにおけるソロワークスペースのニーズも高まっている ようだ。

オフィス内にソロワークスペースを導入するメリット・デメリット

では、オフィス内にソロワークスペースを導入する際の具体的なメリット・デメリットとはどのようなものがあるのだろうか。

メリット1:視線や雑音を気にせず作業ができる

特に個室型ブースが顕著だが、周りの視線や騒音を気にせずに集中して作業を遂行できるため、業務効率や生産性が上がる可能性が高い。

メリット2:オンラインミーティング・営業の場に最適

周囲の雑音によって会話が聞き取りづらく、オンラインミーティング・営業の進行にも影響し、相手に悪印象を与えかねない。また、オフィスの自席で実施する場合は周囲に配慮が必要だが、ソロワークスペースではそのような必要がない。

メリット3:作業が中断しない

各席に電話が備え付けられている固定席型のオフィスでは自席で仕事をすると電話を受けたり、上司や同僚から声をかけられることも多く、作業を中断せざるを得ない場面がある。ソロワークスペースを設けることで、自分の作業以外の業務で進行が中断するのを防ぐことができる。

デメリット1:場所や行動の把握ができない

オープンスペースから隔離された個室やブースなどをソロワークスペースとするケースが多く、誰がどこで働いているかが把握できない。業務連絡や作業の引き継ぎなどを行う際に従業員同士で居場所を把握しておく工夫が必要となる。

デメリット2:環境を整えるのにコストがかかる

オフィス内にソロワークスペースを設置する際には専用の什器やパーティションなどを追設する必要があり、コストがかかる。

デメリット3:生産性が落ちてしまうことがある

「他者の目に触れにくい」ため、ONとOFFを区切ることができない従業員が現れる可能性がある。そうなるとソロワークスペースを導入したことにより逆に生産性が落ちてしまうことも考えられる。従業員に正しいスペースの使い方や、仕事への向き合い方を指導していくべきだろう。

ソロワークスペースの種類

より集中した環境を従業員に提供することで、パフォーマンスの向上が期待できるソロワークスペースは、アフターコロナ時代のオフィスには必要不可欠

オフィス機能の一部としてソロワークスペースを求めるワーカーの声が高まっており、生産性向上などの効果も期待されている。在宅勤務とは異なるソロワークスペースには大きく3種類が存在する。

  1.  個室型(オフィス内)
  2.  半個室型(オフィス内)
  3.  サテライトオフィス

個室型(オフィス内)

昨今のオフィスは従業員同士のコミュニケーションを促すよう什器の高さを低めに調整して周囲を見渡しやすくし、フリーアドレスなどの開放的なレイアウトとなっていることが多いが、オープンな執務空間の一部を壁やパーティションで間仕切りし、周囲の会話や雑音などをシャットアウトする個室タイプは最も集中しやすいソロワークスペースといえる。コロナ以降、フォンブース型のソロワークスペースも人気を博しており、視線や騒音はほぼ完全にシャットアウトできる。

半個室型(オフィス内)

個室型のように独立しておらず、間仕切りやパーティションを一部設置し、周囲の視線を遮断しながら周囲の状況把握や外部から話しかけることも容易に行えるソロワークスペースだ。デスクと一体化した什器タイプが多く、狭い場所に設置でき、執務空間全体との調和もとりやすい。

サテライトオフィス

東急不動産が運営する「NewWork」など、外部貸しのサテライトオフィスの整備が進み、自宅やオフィスとは異なるソロワークスペースとしてコロナ禍以降、存在感が際立ってきた。半個室型が主流ながら東京電力ホールディングスの「Solotime」や野村不動産の「H1T」など、情報漏洩のリスクを軽減した個室ブースを備えた施設も増えている。

サテライトオフィスに関する記事をみる

オフィスには集中できるソロワークスペースが必要不可欠

対面型のリアルオフィスではコロナ禍以降も「コミュニケーション活性化によるイノベーションの創発」といった役割を求める向きが強まっているが、JLLの記事「コワーキング型オフィスだけではイノベーションは生まれない」で言及している通り、場所別に集中力を測定したところ、オフィスの平均的な集中力は43%に過ぎず、新幹線(70%)や喫茶店(83%)といった不特定多数が集う場所よりもオフィスは集中できない環境とされる。そのため、オフィス内に集中できるソロワークスペースを設けることは生産性向上に寄与する。

より集中した環境を従業員に提供することで、パフォーマンスの向上が期待できるソロワークスペースはアフターコロナ時代のオフィスには必要不可欠となりそうだ。

働き方改革・ワークプレイス改革の最新動向をみる

お問い合わせ

何かお探しものやご興味のあるものがありましたら、お知らせ下さい。担当者より折り返しご連絡いたします。