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オフィス改革とは?従業員が求めるオフィス作りの秘訣と事例

働き方改革の重要な一手として注目が集まるオフィス改革。コミュニケーション向上や業務効率化、健康経営の促進などメリットは数多い。オフィス改革の成功事例から、具体的な施策と成功へのステップを探る。

2024年 04月 08日
オフィス改革とは?
オフィス改革の定義
 

オフィス改革とは、オフィスのレイアウトやデザインを見直し、従業員が効率的かつ快適に働ける環境を整える取り組みのことである。

具体的な施策としては、作業スペースの再配置やコラボレーションを促進するための共有エリアの設計、個人の作業に集中できるブース配置、テクノロジー導入による業務プロセスの最適化などさまざまな要素が含まれる。

オフィス改革と働き方改革の関連性とは?


オフィス改革を語るときにしばしば登場する言葉が「働き方改革」である。働き方改革は2019年に施行された「働き方改革関連法」に基づき、個々の事情に応じて多様な働き方を選択できるようにするための取り組みといえる。

オフィス改革も働き方改革の一環であり、特にオフィス環境整備の領域での取り組みが該当する。

オフィス改革の目的と期待できる効果

働きやすいオフィス環境を実現すると、従業員は仕事に集中しやすくなり業務効率が向上する

オフィス改革は、どのような目的や効果を期待して行われるのだろうか。

社内コミュニケーションの活性化
 

オフィス改革によるフリーアドレス制や共有スペースの設置は、従業員間の偶発的な交流を促し、部署間の風通しを良くする。社内コミュニケーションが活性化することにより、部署内のチームワーク向上や、情報共有の活発化、部署を超えた連携が期待でき、全社的に業務がスムーズに進行できるだろう。

コスト削減
 

オフィス改革の施策のうち、無人受付システムによる人件費、テレビ会議システム導入による交通費や紙の資料作成費など、直接的な経費削減効果がある。事前申告制にすることで残業代が削減された事例もあり、業務効率化と生産性向上にも寄与する。なかには初期投資が必要なものもあるが、長期的なコスト削減を織り込めば一考の価値がある。

従業員のウェルネス向上


健康的に働けるオフィス環境の構築は、従業員が生産性を維持しながら働くことが期待できる。具体的には、休憩時間にしっかりと心身を休められるカフェやラウンジといったリフレッシュスペース体の負担を軽減するデスクとチェアの導入などが挙げられる。健康経営の実現にも寄与し、従業員と企業の双方にメリットがあるといえるだろう。

業務効率化


オフィス改革は業務効率化にも寄与する。適切な照明や空調、集中して作業ができるスペースやミーティングスペースを整備することで働きやすいオフィス環境を実現することで、従業員は仕事に集中しやすくなり業務効率が向上する。

モチベーション向上

オフィス改革は従業員のモチベーション向上にも寄与する。フリーアドレス制の導入により、執務場所の自由度が高まり、ストレス緩和と気分転換を促進する。円滑な人間関係の構築、明確な情報伝達が可能な環境を提供することで、相互理解を深め、組織の目標に対する貢献意識を高め、柔軟な業務スタイルと成長の機会を創出する。

オフィス改革を推進するためのアイデア

従業員の能力を最大限に発揮させるクリエイティブスペースの設置をオフィス改善の施策として取り入れる企業も増えている

つづいて具体的なオフィス改革の具体的な施策を紹介する。

フリーアドレス制の導入


フリーアドレス制とは、従業員が固定席を持たず、日々好きな席で作業を行えるオフィス環境のことである。この制度の導入により、組織の垣根を超えたコミュニケーションが促進されるようになり、新しいアイデアの創出や部署間の連携強化などに寄与する。また、スペース効率の向上と不要な座席を削減でき、コスト削減にもつながる。

休憩スペースの設置


従業員が息抜きできるラウンジやカフェスペースなどの休憩スペースを社内に設けることで、休憩時間に十分リラックスできたり、業務の行き詰まりを感じた時の気分転換やオン・オフの切り替えを促したり、仕事と休憩のメリハリをつけやすくなるなど、多様な効果が見込める。マッサージチェアやトレーニングジムのような福利厚生施設を設置することで従業員の健康増進にも寄与する。これらの取り組みは、従業員の満足度向上とモチベーション維持にもつながる。

クリエイティブスペースの設置


JLLが過去に行ったオフィスワーカーへのサーベイレポートによると「働く際に重視すること」の上位に「自身の仕事に生きがいを見出す」が挙げられており、従業員が働く上でいかに“自己最適化”が重要であるかが窺える。

そこで、従業員の能力を最大限に発揮させるクリエイティブスペースをオフィス改善の施策として取り入れる企業も増えている。

目的別ワークスペースの設置


さまざまな目的に合ったワークスペースの設置は、オフィス内でのコミュニケーション活性化業務の効率化に寄与する。たとえば簡単な会議ができるスタンティングデスクや、カジュアルな雰囲気のオープンミーティングスペースがあれば、会議室が埋まっていても簡単な打ち合わせやアイデア出しを行うことができる。予約不要であれば業務のみならず、休憩や雑談など様々な用途で従業員が気軽に活用できるだろう。最近ではアウトドアテイストなどの工夫を凝らしたデザインも注目されている。

ペーパーレス化


設備やレイアウトの改善だけでなく、ペーパーレス化もオフィス改革の重要な一環とされる。ペーパーレス化とは社内文書を紙から電子データへ切り替える取り組みで、申請から承認までのプロセスの時間短縮や印刷コストの削減などに寄与する。場所を選ばない柔軟な働き方の助けにもなり、テレワークやアクティビティ・ベースド・ワーキング(ABW)への移行がスムーズに行えるほか、クライアントへ迅速に資料を提示することができ、保管スペースの縮小も期待できる。

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オフィス改革とスマートオフィス

働きやすいオフィス環境を実現すると、従業員は仕事に集中しやすくなり業務効率が向上する

オフィス改革を成功させるには、新しいテクノロジーを積極的に取り入れていくことも有効だ。

近年話題を集めるスマートオフィスとは、IoTやAI、ロボットなどのスマートデバイスを用いて、従来よりも業務効率や生産性を向上させたオフィスを指す。

スマートオフィスへの転換により、生産性の向上・コミュニケーションの活性化・フレキシブルな働き方の実現・従業員のウェルビーイング向上など、さまざまなメリットが期待できる。

JLLが2022年に経営者層を対象に行った調査によると、2025年までに導入を計画しているテクノロジーの上位5位は以下のとおりだ。
 

  1. 環境性能改善のためのサステナビリティ・テクノロジー
     

  2. 建物の接続性またはデジタルインフラの改善
     

  3. オフィス/ワークプレイスのパフォーマンス監視用センサー
     

  4. 建物システムの予測管理・修繕を可能とする技術
     

  5. データサイエンスおよび統計モデル技術

出所: JLLレポート「2022年版Future of Work(働き方の未来)グローバル調査」(2022年7月)。回答者はアジア太平洋地域における日本を含めた13市場の1,095名の意思決定担当者

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オフィス改革を推進する上で注意すべきポイント

オフィス改革を推進する上で、期待していた効果を最大限に引き出すためには、いくつかの注意点がある。

フリーアドレス制の導入によるモチベーション低下

フリーアドレス制の導入は、部署の垣根を超えた交流を促す一方で、居場所の喪失感やストレスを引き起こし、従業員の集中力ややる気の低下につながる可能性もある。これを未然に防ぐには、事前に十分な説明を行って理解を得ることや、個別作業が可能なソロワークスペースの確保などが必要である。
 
管理職のマネジメントの難しさ
 

オフィス改革により、管理職にとっては部下の業務進捗が把握しづらくなる懸念もある。従来のやり方に頼らず、オフィス環境や仕事の進め方の変化に対応したマネジメントの見直しが求められる。

情報セキュリティ対策コストの増大


ペーパーレス化やリモートワークの導入に伴い、情報セキュリティ対策のレベルを上げることも欠かせない。紙の書類を電子化した場合にはアクセス権限やバックアップ方法の見直しと周知が必須だ。また、クラウドサービスなど新しい技術の導入は作業効率とコスト削減を促進するが、顧客情報や機密情報の漏洩リスクも増大するため、より厳重なセキュリティ対策が求められる。これらの対策のアップデートは、必ず運用開始と同時に行っておこう。

オフィス改革を成功させるための道順

オフィス改革を成功させるためには、明確な目的と戦略のもと順を追って取り組むことが重要である。以下にそのプロセスを解説する。
 

目的を明確にする
  • 課題の洗い出し: オフィスの現状に関する問題点を明らかにし、改善すべき課題を特定する。
     

  • 目的設定: 作業効率化、コミュニケーションの活性化など、オフィス改革を通じて達成したい具体的な目標を設定する。

従業員の声を聞く
  • アンケートやヒアリング: 従業員からの直接的なフィードバックを集め、改善すべきポイントを把握する。
     

  • ワークショップの実施: 従業員が参加するワークショップを通じて、より具体的なニーズやアイデアを引き出す。

施策の決定と実施
  • 施策の立案: 従業員の声を基に、具体的な改善策を計画する。フリーアドレスの導入やリフレッシュスペースの設置などが一例。
     

  • 優先順位の設定: 限られた予算の中で最大の効果を得るために、施策の優先順位をつける。
     

  • 実施と管理: 施策の責任者を決め、計画に沿って改革を実施する。従業員の理解と協力を得るためのコミュニケーションも重要だ。

効果測定と改善
  • 効果の測定: 定期的に施策の効果を測定し、目標達成度を評価する。
     

  • 改善策の実施: 効果測定を基に、施策の改善点を見つけ出し、必要に応じて計画を調整する。
     

オフィス改革は一度きりの取り組みではなく継続的なプロセスである。社会情勢やビジネス環境の変化に応じてオフィスの課題は変わるため、定期的に見直しを行い、常に働きやすい環境を目指すべきだろう。

成功の鍵は、従業員のニーズに耳を傾けて働きやすいオフィス環境を整えていくことだ。

オフィス改革の成功事例

すでにオフィス改革に取り組み成果を上げている企業の事例を紹介する。これからオフィス改革に取り組もうと考える企業はぜひ参考にしてほしい。

オフィス移転時にフリーアドレスを導入し、コミュニケーションを活性化


エイコーは、2022年に東京本社オフィスを「Fo-me」と名付けた新オフィスへ移転した。新オフィスでは、コミュニケーションを活性化させるフリーアドレス方式を導入、8つの理想的なワークスタイルを目指した。

新オフィスでは「コミュニケーション」にフォーカスして電子化や業務フローの効率化を推進しており、オンラインや対面でのコミュニケーション、仕事以外のつながりを深める会話、効率的な休憩を通じて社員間の距離を縮めている。これを支えるカフェスペースやコミュニケーションエリアを設け、集中作業とコミュニケーションのバランスを保つ工夫がなされている。

5つのコンセプトにもとづき移転した東京・大阪オフィスがW受賞

JLLは2022年に自社が提唱する「Future of Work(働き方の未来)」と多様な働き方の実現に向け、東京本社と関西支社の移転を実施。ワークプレイス5つの柱として以下を掲げた。

  1. ABW型オフィス

  2. テクノロジーとデータの活用

  3. コミュニケーションの促進

  4. 従業員のウェルビーイング意識の向上

  5. サステナブルなオフィス環境

「第36回日経ニューオフィス賞」にて「ニューオフィス推進賞・クリエイティブ・オフィス賞」(東京)、「近畿ニューオフィス奨励賞」(大阪)、「2023年度グッドデザイン賞」(東京)など多数の賞を受賞。不動産の未来を拓き、より良い世界をつくるため、各分野のソートリーダーシップ(各分野をけん引する革新的な活動)を発揮している。

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