事例紹介

京都電子計算 – オフィス移転事例

京都新聞グループのIT企業が設立以来、初の本社オフィス移転を決断。しかし、空室が枯渇していた京都オフィス市場において800坪ものまとまった床面積を確保するのは至難の業だった。そうした状況下、JLLは移転先のソーシング、オフィス仲介業務を担当。クライアントの多様なニーズを満たす移転先の確保に成功した。

場所

京都市下京区

スポットライト

移転先のソーシング、プロジェクトマネジメント事業者の選定支援

規模

約800坪(4フロア)

不動産タイプ

オフィス

京都新聞グループの老舗IT企業として、地方自治体や大学といった公共性の高い顧客を対象に、業務システムやパッケージソフト開発、ネットワークの構築、運用などの多彩なITソリューションを提供する京都電子計算株式会社。2022年5月に本社オフィスを移転し、テレワークとオフィスワークを組み合わせたハイブリッドな働き方を開始した。グループ企業所有の旧本社ビルから、2021年12月に竣工した新築テナントビル「NUPビルディング京都駅前」4-7階へ。受給がひっ迫し、賃借可能床が枯渇していた京都オフィス市場において、JLL日本 関西支社 オフィス リーシング アドバイザリー事業部は移転先のソーシング、オフィス仲介業務を担当した他、オフィスづくりを推進するプロジェクトマネジメント事業者の選定、入札要件の策定まで幅広くサポート。クライアントの要望に合致したオフィス戦略の実現に貢献した。

課題

京都電子計算が本社を構えていたオフィスビルは1979年12月末に竣工。京都新聞グループ関連企業の保有物件であり、当時同社が主業としていた電子計算センター事業に最適な執務環境を提供するべく建設され、いわば「自社オフィス」同様に使用していた。

一方、平成期に入り、同社の主業は業務システム・ソフトウェア開発、クラウドサービスなどに軸足を移すことになる。その結果、これまでの主業であった電子計算センター事業を円滑に推進するべく構築されたオフィス環境が現在のニーズに合わなくなっていた。加えて、従業員数が200名、300名へと増加する中、オフィス開業時に想定していた収容人数を超過することになった。そのため、グループ会社の別館や、旧本社オフィスから離れたテナントビルを賃借しなくてはならなくなっていた。オフィスが分散していたことで、すべての従業員に等しく一定以上の執務環境を提供することができず、従業員同士のコミュニケーションが阻害されるなど、多くの課題があった。

また、旧本社オフィスは築年の経過と共に建具や内装の老朽化が進み、いずれは大掛かりなリフォーム、さらには全面リノベーションを行うことが必要になった。京都ならではの事情として、もし将来ビルを建て直すことになった場合は、景観保護のために条例で高さが厳しく制限され、今より大幅な減築となることも悩みの種であった。リフォームを行っただけではオフィス自体の使い勝手は変わらないし、可能な限りのリノベーションを行っても床面積は増えないと判断。従業員の満足度向上、人材採用の安定化などを視野に新たな働き方の実践を目指し、本格的に本社移転を進めることになった。

アプローチ

旧本社オフィスと、これまで借り増していたオフィスを集約移転するため、当初1,000坪程度の移転先を確保する必要があった。しかし、建築物の高さ制限が厳しい京都市では大規模再開発を行う余地が少ないため、オフィス市場の需給がひっ迫。まとまった床面積を確保できる既存テナントビルは皆無だった。また、地方自治体や大学などの教育機関を主なクライアントとする同社では、移転先に「全国各地からアクセスしやすい立地」を希望しており、新幹線の発着駅である京都駅周辺か、中心市街地かつ私鉄のターミナルとして利便性の高い四条界隈のいずれかを志向したため、移転候補先がさらに限定され、条件に合致する既存物件はほぼ皆無であった。

そうした中、JLL日本 関西支社 オフィス リーシング アドバイザリー事業部は移転先のソーシングを担当。移転プロジェクト立ち上げ当時から2年近くにわたってクライアントとの定例会議を実施し、コロナ禍を受けてハイブリッドワークへ方向転換、移転先に求める床面積を約800坪へと当初計画から縮小するなど、移転先に対するニーズの変化に迅速に対応した。既存物件の紹介のみならず、オフィス市場で公になっていない開発中・開発予定物件など、潜在的な移転候補先となりえる多種多様な情報の収集に努めた。その結果、京都駅から徒歩圏内で開発中だったテナントビル「NUPビルディング京都駅前」の情報をキャッチ。オーナー側はリーシング活動を行っていなかったが、すぐさまクライアントに提案したことで好感触を得た。その後、建築途中にもかかわらず内見会を実施したことで、クライアントは京都駅からの至便性、採光に適した周辺環境と開口部の広さなどを確認することができ、竣工前に同ビル4-7階の計4フロア、約800坪を賃借することが決定した。

一方、クライアントが本社オフィスを移転するのは設立以来、初めてのこと。そして、これほど大規模な移転プロジェクトを経験したことがなかったため、オフィス移転に関する引っ越し作業や内装造作工事をどのように進めるべきか、どのような事業者に依頼するべきか経験・ノウハウが不足していた。そこでJLLはプロジェクトマネジメント事業者の応札先候補の選定や入札条件(RFP)の作成など、幅広く支援した。

成果

新本社オフィスは計4フロアで構成され、各フロアでコンセプトが異なるものの、基本仕様はコロナ発生初期に導入したテレワークを継続することを前提に全面フリーアドレス席を採用している。各会議室や間仕切りには二重ガラスを用い、フロアの一体感・開放感を醸成しながら、遮音性も確保。また、執務スペースはモノトーンベースの天井や壁の色彩に映えるように、一部木目調とした他、柱部分はタイル調のクロスで統一感のあるデザインとした。

部門ごとに使用可能フロアを分けており、業務内容によって各フロアのコンセプト・設えは大きく異なる。例えば、4階フロアのコンセプトは「コンセントレーション」とし、地方自治体向けのパッケージやシステムを開発・保守管理するSEの執務スペースとして、快適かつ集中して働ける執務環境を構築。座席の横幅は1400mm、奥行き700mm、大型モニターを常設しており、1人当たりの執務スペースにゆとりがある。

5階は事務机を一切排し、本格的なカフェを備えたオープンスペースと社内用ミーティングルームで構成。コンセプトは「コミュニケーション」となる。屋外キャンプをイメージした打ち合わせスペースなども備えており、仕事・休憩・打ち合わせなど、様々な用途に対応する。

6階のコンセプトは「コラボレーション」。大学をクライアントとするシステム開発部門と、企画・営業部門が同居するフロアとなる。静かで集中できる環境を好むSEと、白熱した議論を繰り広げる企画・営業職が同居しているため、防音性に優れた二重ガラスの間仕切りでゾーニングした他、部門間やチーム内での協力・協働を促進するためのオフィスを想定している。

7階は来客用と位置づけ、カフェスペースを設置したサロン、来客用の応接室・ミーティングルームを整備。社長室・会長室があるため、秘書機能を兼務するコーポレート部門の執務フロアでもある。多彩な機能を統合したことで、フロアコンセプトは「コーポレート」としている。

今回の本社オフィス移転プロジェクトにより、旧本社オフィスでの課題であった「労働環境の改善」、「コミュニケーションの低下」、「人材採用の安定化」を解決し、立地面も含めてウィズコロナ・アフターコロナを見据えた新たな働き方を実践できる執務環境の整備に成功した。これに加え、JLLがオーナーに働きかけ、共用部の一部を専有部に組み込んだオフィスレイアウトを可能にした他、区画内に喫煙スペースの整備など、同社の意向に沿ったオフィス戦略を実現すると共に、需給がひっ迫するオフィス市場下にありながらも、クライアントが満足する賃料条件での契約締結にも成功した。

クライアント&担当者の声

本社オフィス移転プロジェクトの最大の課題となった移転先のソーシングにおいて、JLLには非常に親身になってサポートいただきました

京都電子計算 常務取締役 北川 勝彦氏は次のように述べている。

「JLLには何度も移転候補先を提案してもらい大変苦労をかけましたが、素晴らしいオフィスを借りることができました。実際に本社オフィスの移転という、これまで経験がないプロジェクトを進めるにあたって、移転先を決めるための課題やニーズが社会情勢によって二転三転するため、簡単には決めることができません。そして、オフィスを移転してからも今まで通りの働き方を踏襲しているだけでは意味がありません。オフィス移転を機に新しい働き方を考え、そのコンセプトに見合ったフロア設計・デザインしていく必要があります。そうした中、今回の本社オフィス移転プロジェクトの最大の課題となった移転先のソーシングにおいて、JLLには非常に親身になってサポートいただきました。本社を移転するためには、それだけの手厚いご協力をいただいた上で、腹をくくってプロジェクトに注力しないと難しいのではないでしょうか」

JLL日本 関西支社 オフィス リーシング アドバイザリー事業部 マネージャー 上杉 聖広は次のように述べている。

「大阪や京都では自社オフィスを保有される企業様が多く、築年が経過し、旧耐震基準のまま保有し続けるというケースも少なくありません。自社保有であるため、進化が著しいテナントビルの設備・スペックなどのファシリティを比較することがなく、オフィス環境の改善の遅れが散見されます。一方、新たに供給されるテナントビルは設備・グレード共に著しく進化を遂げており、コロナ以降は屋外テラスや緑化スペース、社内外のコミュニケーション活性化に寄与するラウンジ、健康的な食事を提供する飲食機能など、『ウェルビーイング』を意識した各種機能を付帯するオフィスビルが増えています。コロナ禍によってこれまでの働き方を見直す機運が高まっており、専有部内のオフィス環境の改善のみならず、従業員の満足度を高め、ひいては人材採用や長期雇用の維持に寄与する新たな働き方、新たなオフィス環境を整備してはいかがでしょうか。今回の本社オフィス移転プロジェクトの立ち上げから参画し、2年近く定例会議を継続してきた結果、コロナ禍でクライアントの要望が変化する様を把握することができ、そのニーズの変化に合わせて柔軟かつ多角的な提案を行うことができました。また、初めての本社オフィスの移転であり、移転工事に関するプロジェクトマネジメント事業者の応札先候補の選定や、入札条件(RFP)の策定まで支援。JLLの幅広いサービス対応力を体感してもらえたのではないでしょうか」

クライアント事例紹介

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